「恋がしたい」と幼馴染から婚約破棄されました。その後を笑って眺める私です。

百谷シカ

文字の大きさ
1 / 11

1 愚かなデビッド

しおりを挟む
「君を愛する気持ちは変わらないよ、モリー。でも、君はまるで、空気だ。あまりにも一緒にいすぎて、いるのが当たり前すぎて、とても大切だしなくてはならない存在である事には違いない。そして世界の誰よりも君の幸せを祈っている。本当だ」

「要点を言って」

「わかった。あまり深刻に受け取らないでほしいんだけど……」


 彼が私を見つめる。
 私も彼を見つめる。

 っていうか睨む。


「なによ」

「あ……」


 彼、幼馴染で許婚のライルズ伯爵令息デビッド・イングは口をパクパクさせている。


「言いたい事があるんでしょ。はっきり言いなさいよ」

「恋がしたい!!」

「はぁ?」


 夏にどちらかの別荘で過ごすのは毎年の事。
 今年は私側、タウンズ伯爵家の別荘で両家揃って楽しくやっていた。

 の、だが。


「というか、僕は恋をしてしまった! こんなの初めてだ!!」

「なに言ってるの……?」


 バカなの?


「肖像画を見たんだ。あああ! キャシー!!」

「え? キャシー?」


 誰よ。


「知ってるかい?」

「いいえ?」

「ブロドリック伯爵令嬢キャスリン・グウィルトだよ!!」

「……えっ!?」


 度肝を抜かれた。
 思わず、グラスを落としそうになった。

 デビッドがブロドリック伯爵令嬢キャスリン・グウィルトに、恋……?
 

「……えええッ!?」


 2回驚いちゃったわ。
 なんならもう数回、驚ける。


「え、なんでッ!?」

「違うんだ、モリー。君に落ち度があったわけじゃない。君は素敵だ。幼馴染として愛してる。妹のように愛してる。だけど君には感じる事のできなかった胸の高鳴りが麗しのキャシーには感じるんだよ! 超感じる!! あああっ! 彼女の事を考えると、僕は……僕はっ、水を求め陸で跳ねる魚のように飢えそして焦がれるんだ……ッ!!」

「……」


 悶えるデビッドを、唖然と見つめる事しかできない。
 そうしていたらグラスが傾いて、ドレスが濡れた。


「あ」

 
 冷たい。


「熱いッ!!」


 私は冷たいけどデビッドは熱い。
 デビッドは真っ赤になって拳を震わせている。


「僕は人生に満足していた……彼女と出会う前は……!」

「肖像画でしょ?」

「彼女の肖像画と出会う前は!!」


 言い直せばいいってもんじゃないのよ、デビッド。


「でも僕は出会ってしまったんだよ、モリー! 僕は! この人生で! キャシーと! 燃えるような恋がしたいッ!!」

「…………は?」

 
 ぽかぁーん、よ。
 
 なんというか、言葉もない。


「というわけで僕は彼女に求婚する!」

「アホね」


 訂正。
 言葉はあったわ。ツルンと出た。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

姉の婚約者に愛人になれと言われたので、母に助けてと相談したら衝撃を受ける。

佐藤 美奈
恋愛
男爵令嬢のイリスは貧乏な家庭。学園に通いながら働いて学費を稼ぐ決意をするほど。 そんな時に姉のミシェルと婚約している伯爵令息のキースが来訪する。 キースは母に頼まれて学費の資金を援助すると申し出てくれました。 でもそれには条件があると言いイリスに愛人になれと迫るのです。 最近母の様子もおかしい?父以外の男性の影を匂わせる。何かと理由をつけて出かける母。 誰かと会う約束があったかもしれない……しかし現実は残酷で母がある男性から溺愛されている事実を知る。 「お母様!そんな最低な男に騙されないで!正気に戻ってください!」娘の悲痛な叫びも母の耳に入らない。 男性に恋をして心を奪われ、穏やかでいつも優しい性格の母が変わってしまった。 今まで大切に積み上げてきた家族の絆が崩れる。母は可愛い二人の娘から嫌われてでも父と離婚して彼と結婚すると言う。

心から信頼していた婚約者と幼馴染の親友に裏切られて失望する〜令嬢はあの世に旅立ち王太子殿下は罪の意識に悩まされる

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アイラ・ミローレンス・ファンタナルは虚弱な体質で幼い頃から体調を崩しやすく常に病室のベットの上にいる生活だった。 学園に入学してもアイラ令嬢の体は病気がちで異性とも深く付き合うことはなく寂しい思いで日々を過ごす。 そんな時、王太子ガブリエル・アレクフィナール・ワークス殿下と運命的な出会いをして一目惚れして恋に落ちる。 しかし自分の体のことを気にして後ろめたさを感じているアイラ令嬢は告白できずにいた。 出会ってから数ヶ月後、二人は付き合うことになったが、信頼していたガブリエル殿下と親友の裏切りを知って絶望する―― その後アイラ令嬢は命の炎が燃え尽きる。

まさか、今更婚約破棄……ですか?

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。 エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。 なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!? 色々こじらせた男の結末。 数話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

元婚約者が修道院送りになった令嬢を呼び戻すとき

岡暁舟
恋愛
「もう一度やり直そう」 そんなに上手くいくのでしょうか???

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

侯爵様と婚約したと自慢する幼馴染にうんざりしていたら、幸せが舞い込んできた。

和泉鷹央
恋愛
「私、ロアン侯爵様と婚約したのよ。貴方のような無能で下賤な女にはこんな良縁来ないわよね、残念ー!」  同じ十七歳。もう、結婚をしていい年齢だった。  幼馴染のユーリアはそう言ってアグネスのことを蔑み、憐れみを込めた目で見下して自分の婚約を報告してきた。  外見の良さにプロポーションの対比も、それぞれの実家の爵位も天と地ほどの差があってユーリアには、いくつもの高得点が挙げられる。  しかし、中身の汚さ、性格の悪さときたらそれは正反対になるかもしれない。  人間、似た物同士が夫婦になるという。   その通り、ユーリアとオランは似た物同士だった。その家族や親せきも。  ただ一つ違うところといえば、彼の従兄弟になるレスターは外見よりも中身を愛する人だったということだ。  そして、外見にばかりこだわるユーリアたちは転落人生を迎えることになる。  一方、アグネスにはレスターとの婚約という幸せが舞い込んでくるのだった。  他の投稿サイトにも掲載しています。

「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。

佐藤 美奈
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」 弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。 結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。 それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。 非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……

処理中です...