「恋がしたい」と幼馴染から婚約破棄されました。その後を笑って眺める私です。

百谷シカ

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5 悩ましきティー

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「ほんとに、もうダメなのかしらぁ~って落ち込んじゃって、痩せちゃって?」

「ええ」

「お肌もガサガサになっちゃって、酷い有様よ」

「今は艶々してるわ」

「そう! なぜだかわかる!? ……わかるでしょぉ~ん???」

「ええ」

「デェェービッドよぉ~っ! キャァァァァアアッ!!」


 凄い雄叫び。
 一生分の興奮を詰め込んだ感じ。

 それでも行儀よく紅茶を飲むんだから、さすが伯爵令嬢よ。
 いえ、ほんとに。マナーを言ったらデビッドよりよっぽど洗練されている。


「……ひっ、く」


 そんなデビッドはレモンを齧りながら泣いてるわ。
 無様ね。


「……」


 そんな顔をしてじっと見てもダメよ。
 助けない。


「王子様なのっ!! 本当よ! 颯爽と現れて宝石と薔薇の花束を孔雀の羽みたいにバッと広げて求婚してくれたのぉ~っ!!」


 どんな手法よ。
 手伝うライルズ伯爵家の使用人も異常だわ。


「それでねっ、まずあなたの事を正直に説明してくれたのよ? 誠実でしょお?」

「ええ。そうね」


 力いっぱい頷いた。
 たぶん、彼女に罪はないし。


「愛と信頼で結ばれた両家の天使ちゃんたちが、こっ……んなちっちゃな頃から一緒に育って、絆を育んだのね。素敵っ! デビッドはあなたが如何に素晴らしい人物かを誠実に語って、それから、ふたりが兄妹のような愛情を互いに持っている事、その上での恋を応援してくれたって事を聞かせてくれたのぉっ!!」

「……そう」


 酷い求婚ね。
 前の女について語るって、なんなの?
 こっちで無礼なアホは、あっちでも同じだったと。

 それなのに、キャスリンは心底デビッドを王子様だと感じているみたい。
 ふしぎ……


「愛してるわっ、モリーっ!! 本当に思った通りの人だった! 愛らしくて優しくて、それでいて凛として、あなたこそ神様に愛された世界一の宝石、神様の最高傑作よぉんっ!!」

「そんな事ない」

「いいえっ!!」

 
 悪い人ではないのよ。
 ただ、非常に、困惑する。

 むず痒い感じ。

 だって、無邪気なだけに邪険にできないじゃない。
 それにデヴィッドなんかどうなってもいいけど、彼女にはアホなデヴィッドのせいで悲しんだりしてほしくない。


「……」


 え? 
 私、もしかして、キャスリンにデビッドが人格的に劣るという意味で、彼女には釣り合わないと思ってる???


「……」


 複雑。
 

「私、一生をかけてデヴィッドを幸せにする! 命をかけて愛するわっ!! 見ててぇ~っ!! もし私が悪い事をしてしまいそうになったら、どうかモリー、私を叱ってね? あなたたちにとって、相応しい私で在りたいのぉん」

「! ! !」


 ダメよ、デビッド。
 そんな目で縋ってもダメ。


「モリー……っ、本当にありがとうっ! 私、最高に幸せよぉっ!」

「よかったわ」


 待って。
 待って待って。

 すっごく複雑なんだけど!!
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