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9 ディスティニー
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「それはそうと、やはり、これはよくない。あなたがた兄妹は美しい心の持ち主のようだが、あれは単なる薄情者。今一度、考え直しては頂けないだろうか。純真無垢なレディ・キャスリンのために」
父がまともな事を言った。
「いいえ!!」
「!?」
兄のほうが急に叫んで、父と私はビクッと跳ねた。
「御心配には及びません、タウンズ伯爵。恐れながら我が妹は、一度捉まえた魚は逃がしません」
「…………」
イケてる真顔で、なんてことを言うのよ……
目技といいその肝の据わり方といい、恐ろしい男……
「(ギロリン)」
母が応戦。
それがいいのか悪いのか、私はいまいち、額を押えて混乱中。
父はグッと耐えている。
「ええと、私、その……伺いたいのだけれど」
状況を整理しなくては。
私は全員に向けて、重要かに思われる質問を投げた。
「私に求婚してくださる、あなたのお名前を、できたら……知りたいわ」
「(ギョギョっ)!」
「(ギョっ)」
ええ、そうよね。
母程の人であっても、驚きよね。
「これはこれは大変な無礼を。どうか許してください、レディ・モリー。マダム・タウンズ」
「(すっ……)」
「いい加減喋ったら? その口はなんのために鼻の下についてるのかしら、お母様」
誰しもが思うであろう事を言ってやったわ。
すると母は手をひらっとさせて、言った。
「若い人にお任せします」
思わず睨んだわよ。
「(ギンっ)」
「モリー……! お前……っ!!」
父が驚愕しているけれど、今更よ。
私を誰だと思ってるの。娘だっつの。
「レディ・モリー」
目技イケメンが視界に割り込んで来た。
そうだった。そうそう、それよ。
「私はキャスリンの兄にしてブロドリック伯爵令息、エドワーズ・グウィルトという者です」
「エドワーズ……」
それらしい名前ね。
実に、すっきりした。
「急な申し出ですが、よく見て頂きたい。あれを」
「……」
目技KYイケメンもといエドワーズが手で指し示す先を見ると、そこにはもちろん、恋に落ちたふたり……私の幼馴染兼許婚且つ裏切り者のデビッドと、心優しいダイナミックなミラクルキャスリンが、未だにふたりの世界に浸っていた。
「どうです? 感じませんか? 私たちの運命を」
「…………」
私はふと、父の顔を見た。
「(じっ……)」
「……」
なるほど。
「そうね」
「モリー!」
エドワーズが歓喜し、母はグッと拳を握り愉悦に目を閉じている。
そう。
母を理解してもらえるような相手であるほうが、安心だ。
それに彼の求婚を受け入れれば、私の身が片付くし、キャスリンを見守る事ができる。デビッドがなにかしたら、二度とそんな気が起きないようにきつく締めあげてやればいいのだし……それに、気になる事があった。
「あの、もうひとつ伺いたいのだけど」
「なんでも聞いてください」
「その、キャスリンのお母様がいないというのはどういう意味なの?」
「ああ」
エドワーズは悲しそうに目を伏せた。
やはり、亡くなったという意味なのかしら。
だとしたら無法地帯キャシーが誕生してもおかしくはな────
「母は生まれた娘が父親似だと気づいた年の冬、運命を嘆いて修道院に入りました」
「──」
そっちか。
私は決意した。
「引き受けるわ。あなたと、そしてキャシーを」
「ああっ! モリー!」
感極まった抱擁を受けながら、私はさっそく計画を練り始めていた。
まずはあの馬鹿みたいなピンクのフリルをどうにかして、鼻の下の産毛を剃るわ。そして例の肖像画を見せてもらって、できる限りその麗しのブロドリック伯爵令嬢に近づけるのよ。
デビッドは、一度今の彼女を見ている。
だから肖像画に近づけば、その拘束力は増すはずなの。私にはわかる。
やり遂げてみせるわ。
薄情な母親みたいに、デビッドをみすみす逃がしたりしない。
幸せになるのよ。
キャスリン。
父がまともな事を言った。
「いいえ!!」
「!?」
兄のほうが急に叫んで、父と私はビクッと跳ねた。
「御心配には及びません、タウンズ伯爵。恐れながら我が妹は、一度捉まえた魚は逃がしません」
「…………」
イケてる真顔で、なんてことを言うのよ……
目技といいその肝の据わり方といい、恐ろしい男……
「(ギロリン)」
母が応戦。
それがいいのか悪いのか、私はいまいち、額を押えて混乱中。
父はグッと耐えている。
「ええと、私、その……伺いたいのだけれど」
状況を整理しなくては。
私は全員に向けて、重要かに思われる質問を投げた。
「私に求婚してくださる、あなたのお名前を、できたら……知りたいわ」
「(ギョギョっ)!」
「(ギョっ)」
ええ、そうよね。
母程の人であっても、驚きよね。
「これはこれは大変な無礼を。どうか許してください、レディ・モリー。マダム・タウンズ」
「(すっ……)」
「いい加減喋ったら? その口はなんのために鼻の下についてるのかしら、お母様」
誰しもが思うであろう事を言ってやったわ。
すると母は手をひらっとさせて、言った。
「若い人にお任せします」
思わず睨んだわよ。
「(ギンっ)」
「モリー……! お前……っ!!」
父が驚愕しているけれど、今更よ。
私を誰だと思ってるの。娘だっつの。
「レディ・モリー」
目技イケメンが視界に割り込んで来た。
そうだった。そうそう、それよ。
「私はキャスリンの兄にしてブロドリック伯爵令息、エドワーズ・グウィルトという者です」
「エドワーズ……」
それらしい名前ね。
実に、すっきりした。
「急な申し出ですが、よく見て頂きたい。あれを」
「……」
目技KYイケメンもといエドワーズが手で指し示す先を見ると、そこにはもちろん、恋に落ちたふたり……私の幼馴染兼許婚且つ裏切り者のデビッドと、心優しいダイナミックなミラクルキャスリンが、未だにふたりの世界に浸っていた。
「どうです? 感じませんか? 私たちの運命を」
「…………」
私はふと、父の顔を見た。
「(じっ……)」
「……」
なるほど。
「そうね」
「モリー!」
エドワーズが歓喜し、母はグッと拳を握り愉悦に目を閉じている。
そう。
母を理解してもらえるような相手であるほうが、安心だ。
それに彼の求婚を受け入れれば、私の身が片付くし、キャスリンを見守る事ができる。デビッドがなにかしたら、二度とそんな気が起きないようにきつく締めあげてやればいいのだし……それに、気になる事があった。
「あの、もうひとつ伺いたいのだけど」
「なんでも聞いてください」
「その、キャスリンのお母様がいないというのはどういう意味なの?」
「ああ」
エドワーズは悲しそうに目を伏せた。
やはり、亡くなったという意味なのかしら。
だとしたら無法地帯キャシーが誕生してもおかしくはな────
「母は生まれた娘が父親似だと気づいた年の冬、運命を嘆いて修道院に入りました」
「──」
そっちか。
私は決意した。
「引き受けるわ。あなたと、そしてキャシーを」
「ああっ! モリー!」
感極まった抱擁を受けながら、私はさっそく計画を練り始めていた。
まずはあの馬鹿みたいなピンクのフリルをどうにかして、鼻の下の産毛を剃るわ。そして例の肖像画を見せてもらって、できる限りその麗しのブロドリック伯爵令嬢に近づけるのよ。
デビッドは、一度今の彼女を見ている。
だから肖像画に近づけば、その拘束力は増すはずなの。私にはわかる。
やり遂げてみせるわ。
薄情な母親みたいに、デビッドをみすみす逃がしたりしない。
幸せになるのよ。
キャスリン。
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