私なんか要らないんでしょう? 離婚よ! サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ~♪

百谷シカ

文字の大きさ
6 / 19

6 ロマンスの始まり(※アニー視点)

しおりを挟む
「よしっ、獲ったァ~ッ!!」


 ピチピチピチピチィ……


「ヘヘヘェ~イ活きのいいお魚さんですねぇィッ♪」


 ロミルダ様に買ってもらった籠に魚がいっぱい。
 1、2、3、4、5、6、7……あ? 
 1、2、3、4、5……の子はこれだから6で、7で、はち……とにかくいっぱい!


「OK~♪」


 私は川からパシャンとあがって、籠を置いて、ちゃんとロミルダ様の傍にお仕えするのにふさわしい姿へと身嗜みを整えて、籠を持ってハイになって湖畔のほうへと歩き始めた。

 ああ……

 早く料理したいなぁ……


「……」


 ツムシュテーク伯爵家のクソマザコンとクソババアは死んじゃえって思うけど、あの広くて設備が整っていて最高だった厨房は超恋しい。
 
 ロミルダ様、そろそろ居を構えてくれないかなぁ……
 この辺の別荘地はとても素敵ねって毎日言ってる……

 私、厨房がなきゃ、お付きのメイドっていうより保護されたサルだし。

 別荘、買ってくれないかなぁ……
 それで、厨房を独占……


「……えへへ」


 今、ここに、私と活きのいい獲れたての魚がいる。


「ヘェェェ~ィおっさかなさぁ~ん♪ いい青光りですねぇ~♪ そのギランギランなお肌を守る鱗ちゃんをザリザリ削ってツルンとするまで剥ぎきって串刺しにしてほしい? それとも皮を剥いで開いて骨取ってバターで焼いて欲しい? ノン・ノン・ノン♪ そうはいかない。私には焚火しかない。バターがあっても、フライパンは忘れて来ちゃったし……っ」


 悲しい。

 私は木漏れ日の木漏れ日ってくる葉っぱの隙間を見つめ、高速瞬きで涙を散らした。
 

「……ゥゥッ」


 泣いちゃダメ。
 だって、私、大好きなロミルダ様と一緒に来れたんだもの。
 こんなに幸せなのに、あれもこれも望むなんて我儘だわ。それに、厨房は待っていればちゃんと降って来る。ロミルダ様はそういうお方だ。必要なものを、いつだって与えて下さる。

 ああ、ロミルダ様……

 大好き……


「そんなにいい方ならフライパン買ってくれるんじゃないか?」

「ひぇっ!?」


 声に出てたッ!?


「っていうか誰ッ!?」

「アハハ、俺はマルセル。君と同じ、高貴な方のお付きで旅をしている」

「へっ、へえっ!?」

「そう怯えるな。魚は盗らん」

「……」


 ま、血色いいし、飢えちゃあいないわね。
 
 ロミルダ様のお付きのメイドのアニーさんとした事が、これしきの事で取り乱すなんて、あってはならない!


「!」


 毅然と、お付きの者同士、友好的に接しようじゃないの。

 どうも二人とも湖畔に向かって歩いていきたいようだし?
 行き先が一緒なら、並んで歩くのもやぶさかではないけど?
 

「持とうか?」

「結構です」


 いい人そうだろうと誰が獲物をほいほい預けるもんですか!
 馬鹿言ってんじゃないわよ!!

 ……こ、恐がってなんか、いないんだから……


「君、最近あの高級宿に寝泊まりしてる御婦人のメイドだろ? 噂になってるよ」

「へっ、へえっ」

「獲物を狙う鷹みたいな目をして厨房を覗いてるって」

「……違います」

「いや、君だよ」

「違います」

「君だって。俺、席から見てたし」

「……」


 獲物を狙う鷹のような目つきの私を、野獣のような目つきで……?

 
「……」


 旅って、出会いが多いんだなぁ。
 またルイーゼが怒る。


「マーセンさん」

「マルセルだ」

「マルセルさん」


 当たり障りのない使用人らしい会話を引き延ばしながら湖畔まで行けばいいじゃーん。
 ルイーゼが追い払ってくれるじゃーん。


「私は鷹のような目つきですか?」

「いや、虫を見る目つきだ」


 しまった。
 顔が素直で、気分がバレた。


「まっ、安心してくれ。俺は危ない奴じゃないよ。主に命じられて、蝶々を追って小径に突っ込む仔猫みたいな君が一人で森を歩いていたら危ないから見守れって事で、見守っていただけ」

「どれくらい前から?」

「え?」

「どれくらい前から? どの時点から? どの角度で?」


 私、着替えたんだ・ゾ。


「着替える時は体ごと逆を向いたさ」

「!」


 この男……!


「人の心を読める特別な能力を神に与えられた系の人ッ!?」

「否、君が心を映す可愛い顔を神に与えられた系の人」

「口まで上手いッ!?」


 なんて奴!

 ルイーゼこいつです!
 バキュンとやっちゃってくださいッ!!


「ほら、見て見ろ。俺の主に君の主が笑ってる」

「?」


 森の小径を抜けて湖畔についたら、確かにロミルダ様がホホホホッって優雅な感じで洗練された素敵な殿方と談笑してた。


「──」


 ほんのり頬を染めて!!

 あの記念すべき離婚から5ヶ月、ついにロミルダ様にロマンスが……ッ!?


「アバンチュール……!」

「馬鹿言うな。コンラート様は誠実な方だ。君の主が如何に魅力的だろうと軽い気持ちで火遊びなんかしない。安心し──わっ、なんだ!? えっ!? えええっ!?」

「?」


 私の隣に見知らぬ男がいるのを見たルイーゼが、シンプル且つスマートに銃剣を構えて、撃った。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

王太子妃候補、のち……

ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。

いつから恋人?

ざっく
恋愛
告白して、オーケーをしてくれたはずの相手が、詩織と付き合ってないと言っているのを聞いてしまった。彼は、幼馴染の女の子を気遣って、断れなかっただけなのだ。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

勘違い

ざっく
恋愛
貴族の学校で働くノエル。時々授業も受けつつ楽しく過ごしていた。 ある日、男性が話しかけてきて……。

婚約破棄されて去ったら、私がいなくても世界は回り始めました

鷹 綾
恋愛
「君との婚約は破棄する。聖女フロンこそが、真に王国を導く存在だ」 王太子アントナン・ドームにそう告げられ、 公爵令嬢エミー・マイセンは、王都を去った。 彼女が担ってきたのは、判断、調整、責任―― 国が回るために必要なすべて。 だが、それは「有能」ではなく、「依存」だった。 隣国へ渡ったエミーは、 一人で背負わない仕組みを選び、 名前が残らない判断の在り方を築いていく。 一方、彼女を失った王都は混乱し、 やがて気づく―― 必要だったのは彼女ではなく、 彼女が手放そうとしていた“仕組み”だったのだと。 偽聖女フロンの化けの皮が剥がれ、 王太子アントナンは、 「決めた後に立ち続ける重さ」と向き合い始める。 だが、もうエミーは戻らない。 これは、 捨てられた令嬢が復讐する物語ではない。 溺愛で救われる物語でもない。 「いなくても回る世界」を完成させた女性と、  彼女を必要としなくなった国の、  静かで誇り高い別れの物語。 英雄が消えても、世界は続いていく―― アルファポリス女子読者向け 〈静かな婚約破棄ざまぁ〉×〈大人の再生譚〉。

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

処理中です...