3 / 16
3 謎だらけの伯爵令嬢
「数ヶ月前にパルムクランツ卿が亡くなって、気分転換になればと思ってご招待したのだけれど……あら、まあ、そう。そいういう方なの」
ソフィーアが私の腕にソフトタッチ。
「話してくれてありがとう、ヴェロニカ。こちらも気をつけます。どうか忘れて、晩餐会をお楽しみになって」
「ありがとうございます」
こうして、忙しい主催者への不審者の報告は終了。
パールと私は美味しいワインで気分を上げる事にした。
「パルムクランツ卿……思い出せそうで思い出せないわ」
亡くなった時、私、お葬式に参列していないのかしら。
「パルムクランツ卿と言えば……ほら。僕らがミューバリ侯爵が趣味で建てた巨大な博物館の開館式に招待された時、来るはずだったけど来なかった例のお爺さん」
「あ」
パールに言われて、思い出した。
世界旅行が趣味のミューバリ侯爵が、代々集めた逸品を公開するべくして2代に渡って建築した壮麗な博物館。この先も代々、収集品を展示する事も考慮された、とにかく広い博物館。
あの開館式、とても楽しかった。珍しい物や、超高級品なども多くて。
そして滞在している間の好待遇。
素敵な新婚旅行になった。
日を分けて平民まで招待したというから、それが印象的で、年相応の訃報についてはきれいサッパリ忘れていた。ミューバリ博物館の開館式に招待されていた貴族は、みんな葬儀に間に合わなかったはずだ。遠すぎて。
「思い出した?」
「ええ、思い出した。随分と御高齢だったって方よね」
「そうそう。一生独身かに思われたのに、晩年になってから、もう中年に差し掛かっていたアルメアン侯爵令嬢を娶って、その私生児まで引き取った」
奇特なお爺ちゃん……
「えっ!?」
「?」
私は重大な事実に気づいてしまい、大声をあげた。
「じゃあフレイヤって侯爵家の血筋なの!?」
どうしよう。
父親が不明だけど、少なくとも侯爵家の血筋が入っているとなると扱いに困る。もし秘密の父親まで超高貴な方だったりしたらもう太刀打ちできない。
邪険に跳ねのけて、こっちの首が刎ねられちゃったら大変だ。
「なにを考えてる?」
パールが、抓んだままになっていたマスカットを口に入れてくれた。
甘くて、爽やかな香りが鼻に抜けて……
我に返った。
「超高貴な血筋かもしれない令嬢が、あなたを狙ってる」
パールは笑った。
「あんなの狙ってるうちに入らない。君を『可愛いなぁ~』って目で眺めている独身貴族連中のほうがよっぽど脅威だよ」
「私はあなた一筋よ」
「僕も君一筋」
ふふふ、とふたりで笑って、チュッとキスしていたら、彼女が来た。
「パール?」
とても自然に、脇に立ってた。
浮気を咎める女の顔で。
「!?」
「!」
驚かないなんて無理な相談。
と、そんな恐ろしいフレイヤの腕をぎゅっと掴む人物がいた。
聡明そうな美しい令嬢だった。
「妹が御迷惑をおかけし申し訳ありません」
「?」
驚く私たち夫婦からサッと引き離し、その令嬢はフレイヤを連れ去った。
呆然と見送る。
「保護者がいた」
少しして、パールが呟いた。
「ええ」
安心した。
そしてまたしばらくして、事情を聴いたらしい保護者の令嬢が単身で戻って来た。押さえておける人物がほかにもいるか、部屋に閉じ込めるかしたのだろう。
あ、いた!
という感じで私を発見して、ドレスの裾を掴む勢いで向かってくる。
そして深いお辞儀で陳謝された。
「本当に申し訳ありませんでした。妹が、とんでもない御無礼を……!」
真っ青で冷や汗までかいていても尚、聡明な美が損なわれていない彼女の低くなった頭を、夫婦でじっと見つめちゃう。
「私はパルムクランツ伯爵令嬢オリガ・ハリアンと申します。母に代わり、心からお詫び申し上げます。妹フレイヤは養父が他界してから少し不安定で、ときどきあのように取り乱してしまうのです。今は母が見ておりますので、もう御迷惑はおかけせずに済むと思います。本当に申し訳ございませんでした」
「……養父」
パルムクランツ卿の引き取った私生児は、ふたり……?
「はい。妹は、養父が晩年になって教会から引き取った孤児なのです」
「……ぇえ!?」
ちょっと待って。
それじゃあ、いろいろ謎すぎる令嬢が私の夫を狙ってるって事?
恐すぎる!!
ソフィーアが私の腕にソフトタッチ。
「話してくれてありがとう、ヴェロニカ。こちらも気をつけます。どうか忘れて、晩餐会をお楽しみになって」
「ありがとうございます」
こうして、忙しい主催者への不審者の報告は終了。
パールと私は美味しいワインで気分を上げる事にした。
「パルムクランツ卿……思い出せそうで思い出せないわ」
亡くなった時、私、お葬式に参列していないのかしら。
「パルムクランツ卿と言えば……ほら。僕らがミューバリ侯爵が趣味で建てた巨大な博物館の開館式に招待された時、来るはずだったけど来なかった例のお爺さん」
「あ」
パールに言われて、思い出した。
世界旅行が趣味のミューバリ侯爵が、代々集めた逸品を公開するべくして2代に渡って建築した壮麗な博物館。この先も代々、収集品を展示する事も考慮された、とにかく広い博物館。
あの開館式、とても楽しかった。珍しい物や、超高級品なども多くて。
そして滞在している間の好待遇。
素敵な新婚旅行になった。
日を分けて平民まで招待したというから、それが印象的で、年相応の訃報についてはきれいサッパリ忘れていた。ミューバリ博物館の開館式に招待されていた貴族は、みんな葬儀に間に合わなかったはずだ。遠すぎて。
「思い出した?」
「ええ、思い出した。随分と御高齢だったって方よね」
「そうそう。一生独身かに思われたのに、晩年になってから、もう中年に差し掛かっていたアルメアン侯爵令嬢を娶って、その私生児まで引き取った」
奇特なお爺ちゃん……
「えっ!?」
「?」
私は重大な事実に気づいてしまい、大声をあげた。
「じゃあフレイヤって侯爵家の血筋なの!?」
どうしよう。
父親が不明だけど、少なくとも侯爵家の血筋が入っているとなると扱いに困る。もし秘密の父親まで超高貴な方だったりしたらもう太刀打ちできない。
邪険に跳ねのけて、こっちの首が刎ねられちゃったら大変だ。
「なにを考えてる?」
パールが、抓んだままになっていたマスカットを口に入れてくれた。
甘くて、爽やかな香りが鼻に抜けて……
我に返った。
「超高貴な血筋かもしれない令嬢が、あなたを狙ってる」
パールは笑った。
「あんなの狙ってるうちに入らない。君を『可愛いなぁ~』って目で眺めている独身貴族連中のほうがよっぽど脅威だよ」
「私はあなた一筋よ」
「僕も君一筋」
ふふふ、とふたりで笑って、チュッとキスしていたら、彼女が来た。
「パール?」
とても自然に、脇に立ってた。
浮気を咎める女の顔で。
「!?」
「!」
驚かないなんて無理な相談。
と、そんな恐ろしいフレイヤの腕をぎゅっと掴む人物がいた。
聡明そうな美しい令嬢だった。
「妹が御迷惑をおかけし申し訳ありません」
「?」
驚く私たち夫婦からサッと引き離し、その令嬢はフレイヤを連れ去った。
呆然と見送る。
「保護者がいた」
少しして、パールが呟いた。
「ええ」
安心した。
そしてまたしばらくして、事情を聴いたらしい保護者の令嬢が単身で戻って来た。押さえておける人物がほかにもいるか、部屋に閉じ込めるかしたのだろう。
あ、いた!
という感じで私を発見して、ドレスの裾を掴む勢いで向かってくる。
そして深いお辞儀で陳謝された。
「本当に申し訳ありませんでした。妹が、とんでもない御無礼を……!」
真っ青で冷や汗までかいていても尚、聡明な美が損なわれていない彼女の低くなった頭を、夫婦でじっと見つめちゃう。
「私はパルムクランツ伯爵令嬢オリガ・ハリアンと申します。母に代わり、心からお詫び申し上げます。妹フレイヤは養父が他界してから少し不安定で、ときどきあのように取り乱してしまうのです。今は母が見ておりますので、もう御迷惑はおかけせずに済むと思います。本当に申し訳ございませんでした」
「……養父」
パルムクランツ卿の引き取った私生児は、ふたり……?
「はい。妹は、養父が晩年になって教会から引き取った孤児なのです」
「……ぇえ!?」
ちょっと待って。
それじゃあ、いろいろ謎すぎる令嬢が私の夫を狙ってるって事?
恐すぎる!!
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と呼ばれた彼女の本音は、婚約者だけが知っている
当麻月菜
恋愛
『昔のことは許してあげる。だから、どうぞ気軽に参加してね』
そんなことが書かれたお茶会の招待状を受け取ってしまった男爵令嬢のルシータのテンションは地の底に落ちていた。
実はルシータは、不本意ながら学園生活中に悪役令嬢というレッテルを貼られてしまい、卒業後も社交界に馴染むことができず、引きこもりの生活を送っている。
ちなみに率先してルシータを悪役令嬢呼ばわりしていたのは、招待状の送り主───アスティリアだったりもする。
もちろん不参加一択と心に決めるルシータだったけれど、婚約者のレオナードは今回に限ってやたらと参加を強く勧めてきて……。
※他のサイトにも重複投稿しています。でも、こちらが先行投稿です。
※たくさんのコメントありがとうございます!でも返信が遅くなって申し訳ありません(><)全て目を通しております。ゆっくり返信していきますので、気長に待ってもらえたら嬉しかったりします。
婚約解消したはずなのに、元婚約者が嫉妬心剥き出しで怖いのですが……
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のフローラと侯爵令息のカルロス。二人は恋愛感情から婚約をしたのだったが……。
カルロスは隣国の侯爵令嬢と婚約をするとのことで、フローラに別れて欲しいと告げる。
国益を考えれば確かに頷ける行為だ。フローラはカルロスとの婚約解消を受け入れることにした。
さて、悲しみのフローラは幼馴染のグラン伯爵令息と婚約を考える仲になっていくのだが……。
なぜかカルロスの妨害が入るのだった……えっ、どういうこと?
フローラとグランは全く意味が分からず対処する羽目になってしまう。
「お願いだから、邪魔しないでもらえませんか?」
この婚約に、恋の続きを込めて
もちもちほっぺ
恋愛
没落しかけた名門・ヴェルス子爵家の令嬢アナスタシアは、
家を救うために――幼い頃に一度だけ出会ったという、
冷たい印象の若き子爵ルカ・ヴェルディとの婚約を受け入れ、すこしずつ交流を深めていこうとする。
そんな中、アナの侍女であり親友でもあるミレイユが失踪。
探すうちに現れたのは、交流のなかった高飛車な侯爵令嬢、
そしてなぜか一緒にいた成金の商人。
【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】
アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。
愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。
何年間も耐えてきたのに__
「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」
アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。
愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。
誤字訂正ありがとうございました。4話の助詞を修正しました。
婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」
佐藤 美奈
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」
アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。
「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」
アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。
気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。
隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。