私を罵った皆様、お元気かしら。今、辺境伯が私への愛を叫んでいます。

百谷シカ

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12 時を越えた最終決戦(後)

 でも今そんな事はどうでもいいのよ!


「ノリノリじゃない、やってやるのよ! ハザル!!」

〈タアァァァァァッ!〉

「ヒィッ!」


 甲冑ハザルがヘタレフリード卿に突っ込んだ。
 よし!


「これで終わりよ! ムンヅ・メンヅ・バルゥ……」


 言いづらッ!


〈このヘタレ! なにモタついてんのよ! さっさと着なさい! 男の子でしょッ!!〉

「クリスタルよ、私に力を!」


 多少砕けてようとね、それくらい、できるってもんよ!


「ウグアァッ!」

「ムンヅむっ、ムンヅ・メンヅ・バルゥ! おじぃの体から出て来なさい!!」


 キラァーンッ!


「〈ウグァァァァァッ!!〉……おっと」


 逞しい老体から逞しい暗殺者の悪霊が出て来た。

 よっしゃ! 
 分離成功!!


「おじぃ!」

「レディ・スティナ……これは……私は、いったい……?」


 はあ?


「見てわからないの!? それくらい自分で考えて!!」

「え? あ、ええ……そうですね。マイ・ロードが、泣きながら甲冑を……」

〈ウッグアァァァ……ギエヤアアァァァァッ!!〉


 ムンバルはキレてるし。
 さぁて、終わらせてあげてヘタレフリード・マイステル!


「あ……あっ、あぁ……ッ!」


 ヘタレフリード卿が甲冑を身に着けてガクブルしながらホーリーオーラに包まれている横で、ビアンカがヒュッと剣に入った。


〈ビャアアアァァァァァアアアァァッ!!〉


 よくわからないけど、ムンバルは取り乱したのかも。


「動くな! (キラァーン!)」

〈ガフッ!!〉

「!」


 自分が言われたと思ったのか、おじぃまでビクッとしてるし。
 と、私が悪しき暗殺者の悪霊をホーリーパワーで羽交い絞めにしたところで、ハザルメイル姿でビアンカソードを構えたヘタレフリード卿が猛然と戦い始めた。


〈ヒギイィィィィイッッ!! グアアァァァァッ!!〉

「ぎゃああぁぁぁっ!! いやあぁッ!! 見える!! 見えるぅぅぅぅぅッ!!」


 ハザルとビアンカのホーリーパワーが、ついにヘタレをこちら側に招待したみたいね。


「マイ・ロードは、あれが見えている……?」

「ええ、そう。(以下、簡潔な説明)」

「なるほど……」


 おじぃの顔色が戻って、私もホッとした。


「ダメっ! あ! よくない! それはよくないよ!! ハザルっ!! 真っ二つはダメッ!! 頭から股間までの真っ二つはダメだってッ!! ひんっ!! お願いッ!! ハザルハザルハザル嫌ああァァァァァッ!!」

〈えーい♪〉

「あっあっあっあっあっあっ」

〈ほいさっ♪〉

「あああああああああっ!!」

〈フギュッ、ギエアアアアァァァァァァァッ!!〉


 凄い!

 とても口に出せない状態を目の当たりにして興奮した私の横で、おじぃがシュタッとその老体で立ち、ガッと腰を落として拳を構えた。


「こうしてはいられない! 私も、いざお助けいたします!! マイ・ローーーーーーードッ!!」

「おじぃッ!?」


 突進よ。
 牛かっつの。


「ファアアァァァッ!! フックスベルガー!? フックスベルガーっ、おまっ、もう〇〇〇〇〇なのにそんな素手で何やってんだぁッ!! いやんっ! もういいッ! もう終わりにしてッ! ダメえぇぇぇぇっ!!」

「まだまだ! これしきっ! フンッ!!」

「……」


 牛っていうより、ゴリラ?
 もしくはクマ。


〈いいぞっ♪〉

〈えっさ♪ ほいさっ♪〉

〈エブシッ! グフッ! グガッ……ガッ……アッ……ァ……〉

「間もなく消滅しまぁーす」


 一応アナウンスしてあげた。
 なんとなく私、外野っぽいんで。


「いったい何が起きているんだ……?」

「やはりフックスベルガーさん、呆けて……っ」

「いやでも、おかしいのはフックスベルガーさんだけってわけでも……………あの、これは、なんですか?」


 簡潔に説明したわよ。
 この場合、頭がおかしいって思われたってヘタレの権力でどうにでもなるもの。


〈やったわ!〉

「おわ……おわり……っ!?」


 こうしてフロールマン城の幽霊騒ぎは幕を閉じた。
 悲しい女奴隷ハザルの辛い物語も、これで終わり。


〈ありがてぇでぃやっす♪ どうもでぃやっす♪〉

「……ええ」


 陽気な守護霊ハザルの愛の物語は、続くわ。
感想 6

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