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12 止まぬ夫婦喧嘩
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それからしばらく忙しくて、うっかりしていたけど、ミレナは期待以上に静かになってしまった。まるで塞ぎ込んでしまったみたいに。
「こんな事になるなんて思わなかったの。私は彼女の助けになりたかったのよ。たとえそれが、彼女にとって我慢できないほど嫌な事だったとしてもね」
「わかっているよ、シュテファーニア。まだ気持ちが昂っているだけだ。感謝してる。落ち着けば以前のように元気なミレナに戻るさ」
「そこまでは望んでない」
「なにが不満なんだい? ミレナは今、心の傷を自分のペースで癒しているんだ。そっとしておけばいいじゃないか」
「気になるのよ!」
「おい。僕の可愛い奥さん? いったい僕と妹とどっちが大切なんだい?」
「それはあなたよ! そんな事もわからないのっ!?」
「でも君は以前に増してミレナの話ばかりじゃないか! 僕の顔を見ればミレナミレナミレナミレナ」
「やめて! 連呼しないで!!」
「君の半分以下だ!!」
「だってあなたの何倍も長い時間ミレナが私の傍にいたんだもの!!」
「僕だって君を膝に乗せて仕事ができればいいけど、大人になっちゃったんだから無理なんだ! 充分小さくて可愛いけどね!!」
「ありがとう! でもひとつだけ言わせてもらうけど、小さい小さいって毎回言われるとむかつくのよ! 舐められてるみたいでね!」
「えっ?」
「私は大人だし最近はめっきりエリカの母親みたいになってきたわ!」
「エリカは君の背丈を抜いた!」
「ええ! 気にしてるからやめてって言ってんの!! 馬鹿なのッ!? ほんっとに女心のわからない人ね!!」
「自分の妻を愛してなにが悪いんだ!!」
「小さいって言わないでって言ってるのが聞こえないのッ!? その耳はなんのためについてんのよ! あなたの愛情なら毎日朝晩四六時中ちゃんと感じてる!!」
「ああそうだろうね! 君に夢中だ!! 君はミレナに夢中だけどね!!」
「またその話!? じゃあもうひとつだけ言わせてもらうわ! あなたが蒸し返したんだからね!?」
「望むところだ!」
「ミレナは私に『小さい』って言わない」
「ぬっ……!」
「ほぅら。わかったでしょう? ミレナは鬱陶しいけど癪に障るような事は言わないの。女の子同士だから」
「ずるいぞ! 女心がわからないのは僕が兄だからでそればかりは不可抗力だ!! 姉だったら満足なのかッ!? そうしたら君と結婚できないぞ!!」
「姉は8人、もうお腹いっぱい」
「くそっ!」
「なにが悔しいのよ! あなた私の夫でしょうッ!? 世界にひとりきりよ!?」
「女心がわからないって言って僕を責めるじゃないか!!」
「責めてないわ! 事実を言っただけ!」
「じゃあ君が小さくて可愛いのも事実だ!!」
「事実を全部口に出さなきゃ満足できないわけ!? ミレナみたいに『可愛い』ってただそれだけ私に言えばいいじゃないッ!!」
「まぁ~たミレナか!」
「ミレナは『善い人』とも言ってくれた」
「ああそうかい! わかったぞ?」
「なによ」
「君は末っ子だけど威張りんぼだ。妹が欲しいんだな?」
「はあっ!?」
「残念だけどミレナは僕の妹だ」
「私だってミレナの義姉よ? あなたと結婚したからミレナは正真正銘、私の義妹だわ」
「僕はミレナと血の繋がった兄だ」
「私は血の繋がらない義姉だけど、血が繋がっていないのに姉妹なのよ? 私とミレナの関係って神秘的で素晴らしくない?」
「14人きょうだいの君の口から出た言葉とは信じられないな! 実の兄妹だって神秘的で素晴らしいだろう!!」
「ええそうね! 結婚して愛が増えて溢れて幸せよ!! 話を逸らさないで! 私はミレナの話をしてるの!!」
「僕がミレナの名前を出したときは不機嫌になったくせに! ひとつ言わせてもらうけど、ミレナを愛しているのは君だけじゃあないんだぞ!!」
「わかってるわよ! 私だってミレナを愛してるんだからっ!!」
そのとき。
「やぁだ。ふたりで私を取り合ってる」
「「!?」」
戸口でミレナがにんまんりと笑っている事に、気づいた。
「シュテファーニア!!」
夫が叫ぶ。
「君を愛してる!!」
「だからなにッ!?」
私も叫んだ。
「やっと部屋から出て来た妹が見えないわけ!?」
「嘘だろ!? ここは『私もあなたを愛してるわヴィンツェンツ』って言うところなはずだッ!!」
「今朝も昨夜も言ったわ! 昨日の昼も昨日の朝もね!!」
直後、ついにミレナまで叫んだ。
「私のために争うのはやめてッ!!」
「「!!」」
薔薇色に頬を染めて、ニマニマしてる年上の義妹。
「ふたりとも愛してるわ!!」
「……」
「……」
ああ、帰って来た。
「おはよう。シュテファーニアお義姉様。と、お兄様」
「私の勝ち♪」
「くそっ!」
と、そこで私も我に返る。
「……」
なんて不毛な喧嘩なの。
信じられない。
「こんな事になるなんて思わなかったの。私は彼女の助けになりたかったのよ。たとえそれが、彼女にとって我慢できないほど嫌な事だったとしてもね」
「わかっているよ、シュテファーニア。まだ気持ちが昂っているだけだ。感謝してる。落ち着けば以前のように元気なミレナに戻るさ」
「そこまでは望んでない」
「なにが不満なんだい? ミレナは今、心の傷を自分のペースで癒しているんだ。そっとしておけばいいじゃないか」
「気になるのよ!」
「おい。僕の可愛い奥さん? いったい僕と妹とどっちが大切なんだい?」
「それはあなたよ! そんな事もわからないのっ!?」
「でも君は以前に増してミレナの話ばかりじゃないか! 僕の顔を見ればミレナミレナミレナミレナ」
「やめて! 連呼しないで!!」
「君の半分以下だ!!」
「だってあなたの何倍も長い時間ミレナが私の傍にいたんだもの!!」
「僕だって君を膝に乗せて仕事ができればいいけど、大人になっちゃったんだから無理なんだ! 充分小さくて可愛いけどね!!」
「ありがとう! でもひとつだけ言わせてもらうけど、小さい小さいって毎回言われるとむかつくのよ! 舐められてるみたいでね!」
「えっ?」
「私は大人だし最近はめっきりエリカの母親みたいになってきたわ!」
「エリカは君の背丈を抜いた!」
「ええ! 気にしてるからやめてって言ってんの!! 馬鹿なのッ!? ほんっとに女心のわからない人ね!!」
「自分の妻を愛してなにが悪いんだ!!」
「小さいって言わないでって言ってるのが聞こえないのッ!? その耳はなんのためについてんのよ! あなたの愛情なら毎日朝晩四六時中ちゃんと感じてる!!」
「ああそうだろうね! 君に夢中だ!! 君はミレナに夢中だけどね!!」
「またその話!? じゃあもうひとつだけ言わせてもらうわ! あなたが蒸し返したんだからね!?」
「望むところだ!」
「ミレナは私に『小さい』って言わない」
「ぬっ……!」
「ほぅら。わかったでしょう? ミレナは鬱陶しいけど癪に障るような事は言わないの。女の子同士だから」
「ずるいぞ! 女心がわからないのは僕が兄だからでそればかりは不可抗力だ!! 姉だったら満足なのかッ!? そうしたら君と結婚できないぞ!!」
「姉は8人、もうお腹いっぱい」
「くそっ!」
「なにが悔しいのよ! あなた私の夫でしょうッ!? 世界にひとりきりよ!?」
「女心がわからないって言って僕を責めるじゃないか!!」
「責めてないわ! 事実を言っただけ!」
「じゃあ君が小さくて可愛いのも事実だ!!」
「事実を全部口に出さなきゃ満足できないわけ!? ミレナみたいに『可愛い』ってただそれだけ私に言えばいいじゃないッ!!」
「まぁ~たミレナか!」
「ミレナは『善い人』とも言ってくれた」
「ああそうかい! わかったぞ?」
「なによ」
「君は末っ子だけど威張りんぼだ。妹が欲しいんだな?」
「はあっ!?」
「残念だけどミレナは僕の妹だ」
「私だってミレナの義姉よ? あなたと結婚したからミレナは正真正銘、私の義妹だわ」
「僕はミレナと血の繋がった兄だ」
「私は血の繋がらない義姉だけど、血が繋がっていないのに姉妹なのよ? 私とミレナの関係って神秘的で素晴らしくない?」
「14人きょうだいの君の口から出た言葉とは信じられないな! 実の兄妹だって神秘的で素晴らしいだろう!!」
「ええそうね! 結婚して愛が増えて溢れて幸せよ!! 話を逸らさないで! 私はミレナの話をしてるの!!」
「僕がミレナの名前を出したときは不機嫌になったくせに! ひとつ言わせてもらうけど、ミレナを愛しているのは君だけじゃあないんだぞ!!」
「わかってるわよ! 私だってミレナを愛してるんだからっ!!」
そのとき。
「やぁだ。ふたりで私を取り合ってる」
「「!?」」
戸口でミレナがにんまんりと笑っている事に、気づいた。
「シュテファーニア!!」
夫が叫ぶ。
「君を愛してる!!」
「だからなにッ!?」
私も叫んだ。
「やっと部屋から出て来た妹が見えないわけ!?」
「嘘だろ!? ここは『私もあなたを愛してるわヴィンツェンツ』って言うところなはずだッ!!」
「今朝も昨夜も言ったわ! 昨日の昼も昨日の朝もね!!」
直後、ついにミレナまで叫んだ。
「私のために争うのはやめてッ!!」
「「!!」」
薔薇色に頬を染めて、ニマニマしてる年上の義妹。
「ふたりとも愛してるわ!!」
「……」
「……」
ああ、帰って来た。
「おはよう。シュテファーニアお義姉様。と、お兄様」
「私の勝ち♪」
「くそっ!」
と、そこで私も我に返る。
「……」
なんて不毛な喧嘩なの。
信じられない。
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