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16 ジェントルヘタレマン
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肩を叩いても髪を引っ張っても唇を押し付けてくるジェルマンをどうにかしなければという一心で、私はついにお皿を掴んだ。不幸中の幸いだったのは、私が人をお皿で叩く前に、執事のセシャンが引き剥がしてくれた事だ。
私は手の甲で唇を拭った。
「……」
もうひとつ、幸いはあった。
彼とは何度もキスをした。それに憎みあって別れたわけでもない。だから、嫌悪と呼べるほどの嫌悪感ではないような気がする。
そうよ。あの傲慢なラファラン伯爵と比べれば、ジェルマンがいかにましかよくわかるわ。……ああダメ。想像したら吐き気が……
「ジェルマン様!」
「離してくれセシャン! 僕は取り戻すんだ! バルバラを! 僕の人生を!」
私はジェルマンの頬を叩いた。
「!」
本人はもちろん、セシャンもギョッとしている。
「大丈夫よ、セシャン。彼を離して」
「バルバラ!」
「不作法が過ぎますよ、ルベーグ伯爵。私たちは終わったのです。12年前に」
「まだ遅くない。やり直せるよ」
「いいえ」
「あの頃のふたりに戻れるんだ!」
「戻りたくはないのよ、ジェルマン」
彼が愕然として腕を垂らすと、やっと執事が腕を離した。
「それじゃあ、始めよう。バルバラ。レディ・ドルイユと、ルベーグ伯爵として。改めて申し込むよ。君を愛してる。結婚してほしい。お願いだ」
「あなたとは始められない」
「バルバラ」
「過去にしがみついたままのあなたとは、この先、なにも始められないわ。来てくださって本当にありがとう、ルベーグ伯爵」
「愛しているんだ、バルバラ。ずっと愛してた」
「あなたが愛したバルバラは大人になった。あなたを愛する少女のままでは、生きて来られなかったのよ。あなたが愛しているバルバラは、昔の私なの」
「君は君だ! 変わらない!!」
「あなたは夢を見ているわ。目が覚めたら、またぜひいらっしゃって。お見送りはできないけれど、どうか好きなだけ滞在して、新しいドルイユをお楽しみ頂けたらと思いますわ。では、ごきげんよう。伯爵」
多忙な女伯爵の顔で颯爽と食堂を後にした。
呼びつけて追い返して逃げるなんて最低よね。
ハイラにひっぱたいてもらわないと。望むところよ。
「バルバラァァァッ!」
「!」
私は耳を塞いで走った。
反省した。なにかはわからないけれど、すべてを。
始めたのは私なのだから。
そしてジェルマンといわゆる甘い恋を今更始めるなんて事は、どうも気恥ずかしくてできそうにない。大切な思い出として胸の内で懐かしみながら愛していきたい。
「ああ、セシャン! 僕はどうしたらいいんだぁっ!」
あっちで絶叫しているわ。
「……」
私は足を止め、振り返って向こうのほうを睨んだ。
大人になりなさい、ジェルマン。
話はそれからよ。
私は手の甲で唇を拭った。
「……」
もうひとつ、幸いはあった。
彼とは何度もキスをした。それに憎みあって別れたわけでもない。だから、嫌悪と呼べるほどの嫌悪感ではないような気がする。
そうよ。あの傲慢なラファラン伯爵と比べれば、ジェルマンがいかにましかよくわかるわ。……ああダメ。想像したら吐き気が……
「ジェルマン様!」
「離してくれセシャン! 僕は取り戻すんだ! バルバラを! 僕の人生を!」
私はジェルマンの頬を叩いた。
「!」
本人はもちろん、セシャンもギョッとしている。
「大丈夫よ、セシャン。彼を離して」
「バルバラ!」
「不作法が過ぎますよ、ルベーグ伯爵。私たちは終わったのです。12年前に」
「まだ遅くない。やり直せるよ」
「いいえ」
「あの頃のふたりに戻れるんだ!」
「戻りたくはないのよ、ジェルマン」
彼が愕然として腕を垂らすと、やっと執事が腕を離した。
「それじゃあ、始めよう。バルバラ。レディ・ドルイユと、ルベーグ伯爵として。改めて申し込むよ。君を愛してる。結婚してほしい。お願いだ」
「あなたとは始められない」
「バルバラ」
「過去にしがみついたままのあなたとは、この先、なにも始められないわ。来てくださって本当にありがとう、ルベーグ伯爵」
「愛しているんだ、バルバラ。ずっと愛してた」
「あなたが愛したバルバラは大人になった。あなたを愛する少女のままでは、生きて来られなかったのよ。あなたが愛しているバルバラは、昔の私なの」
「君は君だ! 変わらない!!」
「あなたは夢を見ているわ。目が覚めたら、またぜひいらっしゃって。お見送りはできないけれど、どうか好きなだけ滞在して、新しいドルイユをお楽しみ頂けたらと思いますわ。では、ごきげんよう。伯爵」
多忙な女伯爵の顔で颯爽と食堂を後にした。
呼びつけて追い返して逃げるなんて最低よね。
ハイラにひっぱたいてもらわないと。望むところよ。
「バルバラァァァッ!」
「!」
私は耳を塞いで走った。
反省した。なにかはわからないけれど、すべてを。
始めたのは私なのだから。
そしてジェルマンといわゆる甘い恋を今更始めるなんて事は、どうも気恥ずかしくてできそうにない。大切な思い出として胸の内で懐かしみながら愛していきたい。
「ああ、セシャン! 僕はどうしたらいいんだぁっ!」
あっちで絶叫しているわ。
「……」
私は足を止め、振り返って向こうのほうを睨んだ。
大人になりなさい、ジェルマン。
話はそれからよ。
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