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2 家族会議

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「はあ?」


 うんざりして、斜めに睨んじゃったわよ。
 ほんと、火に油注いじゃった。


「〝はあ!?〟 それしか言えないわけ? 本当に救いようのない馬鹿ね!」

「はいはい、あんたの口癖だったわね。盗っちゃってごーめーん」

「なに言ってるの? え? 恐いんですけど。私、お姉様みたいに口が悪くないわよ? 頭おかしいんじゃないの?」

「語彙が貧弱ね」

「え? 意味不明な言葉使わないで?」

「頭悪いって言ったの。難しすぎた?」

「はっ!? お姉様より頭いいに決まってるでしょう!? ふんっ。そうやって人のせいにばっかりしていればいいんじゃない? ディーン様に棄てられたあとは、お父様とお母様にも見棄てられて寂しい修道女になるのよ!! カラッカラに乾いた陰気なクソ婆にね!」

「私になに言ってもいいけど、修道女への冒涜は訂正しなさい」

「え!? 修道女を冒涜してるのはお姉様よね? お姉様みたいな狂暴なクソ女が神と結婚なんて罰当たりもいいところだわ!」

「私に修道女になってほしいの? なってほしくないの?」

「いい加減にして! そんな事、自分で考えなさいよ! 私に聞かないで!? なんなの!? 本当に、もう……はぁ……」


 頭おかしいんじゃないの?
 というお決まりの顔で私を睨んで、妹は部屋から出て行った。

 今日も今日とて、凄いわね。
 

「ばかばかしい」


 呟いて、私は鏡台の椅子に座った。

 妹が随分あっさりと引き上げたのには理由がある。
 今日はアルヴィン卿とおデートの日なので、支度があるのだ。アルヴィン卿が妹の美貌に惑わされているのは置いといて、連れ出してくれて本当に感謝している。

 妹が出かけたら、家族会議をするのである。
 

「行ったか……」


 ご満悦なアルヴィン卿と妹が乗った馬車を見送り、父が呟いた。呟いた時には、それまでのお上品な笑顔が消滅していた。


「ええ。よって、そろそろディーンが来る」

「いくら相思相愛だからといって、令嬢であるお前がシーヴ伯爵のファーストネームを呼び捨てとは如何なものかと最初は思っていたが、私も嬉しい。ディーンを待とう。頼りになる男だ」


 これが、私が鏡台でオシャレをした訳。

 まるで姫を守る王宮騎士のような彼、シーヴ伯爵ディーン・エングフェルトは、私を愛している。そして父も愛している。母も愛している。私たちはもう家族同然なのである。
 わかってないのは、妹だけ。


「うわぁ、驚いた! 美人姉妹だなぁ!」


 と素直に感激してくれたディーンの様子を勝手に勘違いしている妹は、自分が姉の婚約者に愛されていると妄信した心を抱え、自分の婚約者とおデートだ。

 もういっそ、一生帰って来なくてもいい……とは、さすがに言えない。

 あの妹を本当にアルヴィン卿と結婚させて大丈夫なのかどうか、今一度、私たちは冷静に考えてみる必要がある。
 家族の問題は、ずばり問題児エヴェリーナ。それだけ。
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