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5 サプライズ
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「そういうわけで、姉妹が結婚して離れる前に、家族だけの細やかなパーティーを開こうと考えているのですが」
「ふむふむ」
「そこでアルヴィン卿にはエヴェリーナのためのサプライズをして頂ければと思いまして」
「ほう! なにをすればいいだろうか。私はあまり、ユニークな性格とは言えないのだが……」
純真な令息が綺麗な教育を受けた見本のようなアルヴィン卿である。
これはもう本気で、妹を宛がうわけにはいかない。
そして多分、性格が悪いなんて口で説明しても善意で曲解される。
だからディーンの計画はすごく、理に適ってる。
「もう、登場して頂くだけで結構です」
「ほう?」
「私も当日は途中まで姿を隠し、本当に家族だけのパーティーを装います。私がアルヴィン卿の案内や、登場の合図をさせて頂きますのでご安心ください」
「おお。それは頼もしい。ありがとう」
「ご参加くださいますか?」
「もちろん! 素晴らしい計画だ!!」
いい人だわ……。
次は、顔だけで相手を選ばないよう願う。
「ところでレディ・カルロッテ」
「はい」
家族パーティーにわくわくした顔のまま、アルヴィン卿が私を呼んだ。
私的には話しかけられた事より、話題が変わりそうで相手が私であちらは男性なのに隣で伯爵然としているディーンの理性に驚いている。
ディーンって、ちゃんと外行のお行儀が完璧に身についているのだ。改めて実感。
私さえいなければ、精悍な顔立ちの逞しい素敵な伯爵なのよね。
私はいるけど。ずっと。
「私からあなたへ婚約のお祝いをしていなかった」
「え?」
「もちろんあなたが先で私が後だから当然なのだが。私がエヴェリーナに求婚したとき、あなたは既に婚約していた。だが義姉となるあなたがこんなに頼もしく愉快なシーヴ伯爵と結ばれるのは実に喜ばしい事だ。彼は私の大切な友人となる。もう好きになってきている。だから私からふたりに、結婚の前に、婚約のお祝いをしたい。ちょっと待っていて」
そう言って、わくわくしたままアルヴィン卿が走っていった。
「……」
「……嘘」
呆然と眺める私たち。
私はアルヴィン卿の背中を追った視線のまま、ディーンを叩いた。
彼は微動だにしない。岩のよう。
「どうするの。お祝いもらっちゃったら大変よ」
「大変って?」
「気まずい」
「気にする事はない。あの方は、わかってくれる。たぶん」
なに。動物の勘?
自分だって呆然としているくせに。
「見事な薔薇だ」
話を逸らしたわね。
「大事にとっておいて、関係が拗れたら即返却しましょう」
「大丈夫な気がする。たぶん」
しばらくするとアルヴィン卿が箱を抱えて戻って来た。
リボンまでついたちゃんとした箱。
満面の笑顔だった。
「いやぁ、お待たせしてしまったね」
「いえ。とんでもありません」
「誤解のないように言っておくと、私は人に贈り物をするのが大好きなんだ。友愛や感謝を示すのにこれほどわかり易い手はないだろう? だから体裁が整っているのは流用ではなく、贈り物を常に用意しているからなんだ。気を悪くしないでほしい」
「そんな。疑ってもおりませんでした。ただただ感激しております」
「ああ、待って。堅苦しい物言いはよしてくれ。あなたは義姉、私は義弟になるのだから」
「……はい」
声が裏返るわ。
こういう純粋な人だから、妹も操りやすいのかもしれない。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
授受。
「……」
嘘でしょ。
重いんだけど。
「開けて」
「……」
今?
「私も中身を知りたい。贈り物によさそうな物を買い揃えて専用の部屋で保管しているのだが、中身がなんなのかは忘れるに任せているんだ。贈った相手と一緒に喜べるからね」
「……」
全体的に申し分ないけど、ちょっと変わった人だわ。
ただ妹はなんでも買ってもらえるって絶対に思ってる。自分から手放したりはしないはずだ。私たちが頑張らなければ。これはすべてアルヴィン卿のためなのだ。そういう事にしておこう。
私はディーンに箱を支えてもらいながらリボンを解き、箱をあけた。
「ああ、共同作業だね。感動する」
アルヴィン卿が感動している。
なぜかは、わからない。
中身はとても美しい超最高級の茶器だった。
「まぁ、素敵……素晴らしい……ッ」
声が裏返っちゃったけど、それも感動のためだと曲解してくれたみたいだし、まあ、もういいわ。大丈夫なんでしょう。ディーンがそう言ってるから、そうなのよ。たぶんね。
「サプラァ~イズ♪」
アルヴィン卿は上機嫌。
あ、なるほど。
自分がサプライズ好きだから、ディーンの計画に超乗り気なのか。
「素晴らしいサプライズです……ッ!」
「?」
顔を上げると、ディーンが涙目で感激していた。
アルヴィン卿に相応しいのは、こういう性格の人だわ。私は理性を取り戻した。最高のサプライズだった。
「ふむふむ」
「そこでアルヴィン卿にはエヴェリーナのためのサプライズをして頂ければと思いまして」
「ほう! なにをすればいいだろうか。私はあまり、ユニークな性格とは言えないのだが……」
純真な令息が綺麗な教育を受けた見本のようなアルヴィン卿である。
これはもう本気で、妹を宛がうわけにはいかない。
そして多分、性格が悪いなんて口で説明しても善意で曲解される。
だからディーンの計画はすごく、理に適ってる。
「もう、登場して頂くだけで結構です」
「ほう?」
「私も当日は途中まで姿を隠し、本当に家族だけのパーティーを装います。私がアルヴィン卿の案内や、登場の合図をさせて頂きますのでご安心ください」
「おお。それは頼もしい。ありがとう」
「ご参加くださいますか?」
「もちろん! 素晴らしい計画だ!!」
いい人だわ……。
次は、顔だけで相手を選ばないよう願う。
「ところでレディ・カルロッテ」
「はい」
家族パーティーにわくわくした顔のまま、アルヴィン卿が私を呼んだ。
私的には話しかけられた事より、話題が変わりそうで相手が私であちらは男性なのに隣で伯爵然としているディーンの理性に驚いている。
ディーンって、ちゃんと外行のお行儀が完璧に身についているのだ。改めて実感。
私さえいなければ、精悍な顔立ちの逞しい素敵な伯爵なのよね。
私はいるけど。ずっと。
「私からあなたへ婚約のお祝いをしていなかった」
「え?」
「もちろんあなたが先で私が後だから当然なのだが。私がエヴェリーナに求婚したとき、あなたは既に婚約していた。だが義姉となるあなたがこんなに頼もしく愉快なシーヴ伯爵と結ばれるのは実に喜ばしい事だ。彼は私の大切な友人となる。もう好きになってきている。だから私からふたりに、結婚の前に、婚約のお祝いをしたい。ちょっと待っていて」
そう言って、わくわくしたままアルヴィン卿が走っていった。
「……」
「……嘘」
呆然と眺める私たち。
私はアルヴィン卿の背中を追った視線のまま、ディーンを叩いた。
彼は微動だにしない。岩のよう。
「どうするの。お祝いもらっちゃったら大変よ」
「大変って?」
「気まずい」
「気にする事はない。あの方は、わかってくれる。たぶん」
なに。動物の勘?
自分だって呆然としているくせに。
「見事な薔薇だ」
話を逸らしたわね。
「大事にとっておいて、関係が拗れたら即返却しましょう」
「大丈夫な気がする。たぶん」
しばらくするとアルヴィン卿が箱を抱えて戻って来た。
リボンまでついたちゃんとした箱。
満面の笑顔だった。
「いやぁ、お待たせしてしまったね」
「いえ。とんでもありません」
「誤解のないように言っておくと、私は人に贈り物をするのが大好きなんだ。友愛や感謝を示すのにこれほどわかり易い手はないだろう? だから体裁が整っているのは流用ではなく、贈り物を常に用意しているからなんだ。気を悪くしないでほしい」
「そんな。疑ってもおりませんでした。ただただ感激しております」
「ああ、待って。堅苦しい物言いはよしてくれ。あなたは義姉、私は義弟になるのだから」
「……はい」
声が裏返るわ。
こういう純粋な人だから、妹も操りやすいのかもしれない。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
授受。
「……」
嘘でしょ。
重いんだけど。
「開けて」
「……」
今?
「私も中身を知りたい。贈り物によさそうな物を買い揃えて専用の部屋で保管しているのだが、中身がなんなのかは忘れるに任せているんだ。贈った相手と一緒に喜べるからね」
「……」
全体的に申し分ないけど、ちょっと変わった人だわ。
ただ妹はなんでも買ってもらえるって絶対に思ってる。自分から手放したりはしないはずだ。私たちが頑張らなければ。これはすべてアルヴィン卿のためなのだ。そういう事にしておこう。
私はディーンに箱を支えてもらいながらリボンを解き、箱をあけた。
「ああ、共同作業だね。感動する」
アルヴィン卿が感動している。
なぜかは、わからない。
中身はとても美しい超最高級の茶器だった。
「まぁ、素敵……素晴らしい……ッ」
声が裏返っちゃったけど、それも感動のためだと曲解してくれたみたいだし、まあ、もういいわ。大丈夫なんでしょう。ディーンがそう言ってるから、そうなのよ。たぶんね。
「サプラァ~イズ♪」
アルヴィン卿は上機嫌。
あ、なるほど。
自分がサプライズ好きだから、ディーンの計画に超乗り気なのか。
「素晴らしいサプライズです……ッ!」
「?」
顔を上げると、ディーンが涙目で感激していた。
アルヴィン卿に相応しいのは、こういう性格の人だわ。私は理性を取り戻した。最高のサプライズだった。
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