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6 待ち侘びた再会
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「…………ファッ!?」
数秒固まってからアンジュが奇声をあげた。
そのアンジュの腕にしがみつくオリヴィアが、私を見つめて真っ青を越え真っ白になった。
「ま、まさか……っ」
現実逃避を計るアンジュを、逃がす私ではない。
「お久しぶり、オディロン公爵。いいえ、ここはあの頃のようにアンジュとお呼びしましょうか。ねえ、アンジュ」
「……ゾフィ……!?」
そ う よ
「きっ、君ッ、なにやってるんだ!? ここは誉れ高いミストラ王国の王宮の中庭だぞッ!?」
「我が国へようそこ」
「はあっ!?」
お バ カ
「親愛なるあなた方のために、余興を準備しました」
「……な、なに言ってるんだ、君……そんな……そんな格好をして! まるで王族じゃないか!!」
まあ女王陛下ですから?
真昼間のパーティーでもそれなりに着飾らせて頂きますけど?
「無礼者!」
「!?」
嗄れ声を張り上げたリュシルに、アンジュとオリヴィアが見開かれた目を向ける。
「この方をどなたと心得る! ミストラ王国の女王ゾフィ陛下であるぞ! 跪き礼を尽くせ!」
「……ああっ? 君こそ無礼だぞ!」
「アンジュ! アンジュ!!」
まだ状況を把握できていないアンジュを、把握し始めたオリヴィアが叩いた。
「君はゾフィの家にいた不細工なメイドだろ!? 覚えているぞ、その顔! 姿! 声!! 二人セットなら本人なんだろうよ! なんのイタズラだ!? 僕はれっきとした公爵で、このパーティーに招かれた国賓なんだぞッ!?」
ざわざわざわ……
アンジュの発言に、集った貴族たちが顔色を変えてどよめく。
リュシルは英雄の生まれ変わりという夢を国民に見せるアイドル。謂わば二大スターの私とリュシルを侮辱する様子を生で見て、それぞれ逆鱗に触れまくったみたい。
私は嫣然と微笑んで二人を見つめた。
「ええ。遠路はるばる、よく来てくださいました。私もリュシルも、あなたたち二人に再び会える日を心待ちにしておりました」
「……なっ」
「アンジュ、まずい……まずいわっ。なんか、ヤバい気がする……っ」
「違う、そんなはずない。ゾフィが女王なんて……えええっ!?」
目に映る情景から、さすがのアンジュも事実を認めざるを得なかった様子。もうちょっと抵抗してくれてもよかったのに。
でもいい。
お楽しみは、これからだから。
「じゃ、始めましょうか」
「はっ!? 始めるって、なにを……!?」
「もちろん、あなた方との再会を祝して、パーティーを。そして楽しい余興を」
私はリュシルの手を借りて、卓上に上がった。
分厚いドレスの襞を、リュシルのゴツイ指が整える。
私は右手を掲げた。
「皆様、本日はようこそお集まりくださいました。御存じではありましょうけれど、改めてプレイヤーの御紹介をいたします!」
「……は?」
せいぜい戸惑っていなさい、アンジュ。
オリヴィアもこれからよ、しっかりして。
「まずは前女王陛下、私の祖母トゥーヴァ!」
「どうも」
「「陛下ァァァァァッ!!」」
祖母の人気は、当然、根強い。
「続いて引退した執政官コルベル卿!」
「ども」
パチパチパチパチ!
礼儀正しい拍手喝采。
「そして新任の執政官ヒューゴ・ヴァイヤン!」
「(ぺこり)」
「えっ、ヴァイヤン!?」
「それって……」
懐かしいわねぇ。
私も懐かしいわぁ。
ゾフィ・ヴァイヤンを名乗っていた日々が!
「その妹リュシル・ヴァイヤン!」
「(スチャッ)」
「はっ!? ヴァイヤンッ!?」
「アンジュ、黙って!」
ここで私は掲げていた手を自らの胸に当てる。
「そしてこの私、新米女王ゾフィ!」
「「おおおおおお!」」
「「ゾフィ陛下ぁぁぁぁぁっ!!」」
拍手喝采。
私は両手を広げた。
「この5人でお送りいたしまっす! テーブルをご予約した方は席にお付き下さい♪ 立ち見の方々はどうぞお好きな位置でご覧ください♪」
声が弾むわぁ♪
貴族たちがワラワラと各々のポジションに向かって移り始めると同時に、料理と酒が供される。そして戸惑うアンジュとオリヴィアは、衛兵に囲まれてガクブル。
「駒を中へ!」
私が命令すると、衛兵が二人を持ち上げて、テーブル席に囲まれた溝へと、幼児を入浴させるような手つきで恭しく下ろした。
溝は、例えるなら牛が3~40頭ほど入れそうな広さで、中央に歯車で昇降する床があり、周囲がコマ分けされている。そして四隅に槍を持った衛兵。ちょうど槍が埋まる深さがある。
縁に、すでにお招きしていたアンジュの取り巻きABCが跪いて待機していたのに気付いたアンジュが、ついに無言で蒼褪めた。
そのアンジュに、呼びかける。
「アンジュ。留学中の私と遊んでくれて、どうもありがとう。お礼に、アナタが破滅する人生ゲームを始めましょう♪」
数秒固まってからアンジュが奇声をあげた。
そのアンジュの腕にしがみつくオリヴィアが、私を見つめて真っ青を越え真っ白になった。
「ま、まさか……っ」
現実逃避を計るアンジュを、逃がす私ではない。
「お久しぶり、オディロン公爵。いいえ、ここはあの頃のようにアンジュとお呼びしましょうか。ねえ、アンジュ」
「……ゾフィ……!?」
そ う よ
「きっ、君ッ、なにやってるんだ!? ここは誉れ高いミストラ王国の王宮の中庭だぞッ!?」
「我が国へようそこ」
「はあっ!?」
お バ カ
「親愛なるあなた方のために、余興を準備しました」
「……な、なに言ってるんだ、君……そんな……そんな格好をして! まるで王族じゃないか!!」
まあ女王陛下ですから?
真昼間のパーティーでもそれなりに着飾らせて頂きますけど?
「無礼者!」
「!?」
嗄れ声を張り上げたリュシルに、アンジュとオリヴィアが見開かれた目を向ける。
「この方をどなたと心得る! ミストラ王国の女王ゾフィ陛下であるぞ! 跪き礼を尽くせ!」
「……ああっ? 君こそ無礼だぞ!」
「アンジュ! アンジュ!!」
まだ状況を把握できていないアンジュを、把握し始めたオリヴィアが叩いた。
「君はゾフィの家にいた不細工なメイドだろ!? 覚えているぞ、その顔! 姿! 声!! 二人セットなら本人なんだろうよ! なんのイタズラだ!? 僕はれっきとした公爵で、このパーティーに招かれた国賓なんだぞッ!?」
ざわざわざわ……
アンジュの発言に、集った貴族たちが顔色を変えてどよめく。
リュシルは英雄の生まれ変わりという夢を国民に見せるアイドル。謂わば二大スターの私とリュシルを侮辱する様子を生で見て、それぞれ逆鱗に触れまくったみたい。
私は嫣然と微笑んで二人を見つめた。
「ええ。遠路はるばる、よく来てくださいました。私もリュシルも、あなたたち二人に再び会える日を心待ちにしておりました」
「……なっ」
「アンジュ、まずい……まずいわっ。なんか、ヤバい気がする……っ」
「違う、そんなはずない。ゾフィが女王なんて……えええっ!?」
目に映る情景から、さすがのアンジュも事実を認めざるを得なかった様子。もうちょっと抵抗してくれてもよかったのに。
でもいい。
お楽しみは、これからだから。
「じゃ、始めましょうか」
「はっ!? 始めるって、なにを……!?」
「もちろん、あなた方との再会を祝して、パーティーを。そして楽しい余興を」
私はリュシルの手を借りて、卓上に上がった。
分厚いドレスの襞を、リュシルのゴツイ指が整える。
私は右手を掲げた。
「皆様、本日はようこそお集まりくださいました。御存じではありましょうけれど、改めてプレイヤーの御紹介をいたします!」
「……は?」
せいぜい戸惑っていなさい、アンジュ。
オリヴィアもこれからよ、しっかりして。
「まずは前女王陛下、私の祖母トゥーヴァ!」
「どうも」
「「陛下ァァァァァッ!!」」
祖母の人気は、当然、根強い。
「続いて引退した執政官コルベル卿!」
「ども」
パチパチパチパチ!
礼儀正しい拍手喝采。
「そして新任の執政官ヒューゴ・ヴァイヤン!」
「(ぺこり)」
「えっ、ヴァイヤン!?」
「それって……」
懐かしいわねぇ。
私も懐かしいわぁ。
ゾフィ・ヴァイヤンを名乗っていた日々が!
「その妹リュシル・ヴァイヤン!」
「(スチャッ)」
「はっ!? ヴァイヤンッ!?」
「アンジュ、黙って!」
ここで私は掲げていた手を自らの胸に当てる。
「そしてこの私、新米女王ゾフィ!」
「「おおおおおお!」」
「「ゾフィ陛下ぁぁぁぁぁっ!!」」
拍手喝采。
私は両手を広げた。
「この5人でお送りいたしまっす! テーブルをご予約した方は席にお付き下さい♪ 立ち見の方々はどうぞお好きな位置でご覧ください♪」
声が弾むわぁ♪
貴族たちがワラワラと各々のポジションに向かって移り始めると同時に、料理と酒が供される。そして戸惑うアンジュとオリヴィアは、衛兵に囲まれてガクブル。
「駒を中へ!」
私が命令すると、衛兵が二人を持ち上げて、テーブル席に囲まれた溝へと、幼児を入浴させるような手つきで恭しく下ろした。
溝は、例えるなら牛が3~40頭ほど入れそうな広さで、中央に歯車で昇降する床があり、周囲がコマ分けされている。そして四隅に槍を持った衛兵。ちょうど槍が埋まる深さがある。
縁に、すでにお招きしていたアンジュの取り巻きABCが跪いて待機していたのに気付いたアンジュが、ついに無言で蒼褪めた。
そのアンジュに、呼びかける。
「アンジュ。留学中の私と遊んでくれて、どうもありがとう。お礼に、アナタが破滅する人生ゲームを始めましょう♪」
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