あつまれ相続から洩れたイケメンぞろいの令息たちよ! ~公爵令嬢は浮気者の元婚約者と妹を追放して幸せになる~

百谷シカ

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4 どういう夫が好ましいか?

「君は本当にそれで満足なのか!? こんな非道な真似をして心が痛まないのかッ!?」

「お姉様!!」


 まだ食いついてくるわ。
 でも非道という言葉の意味について話し合う必要はないと、心から確信している。


「ええ、婚約破棄で結構よ。ふたりとも、出て行きなさい」


 こうして忌々しいイーサンとミシェルを追い出した私は、即、次の行動に移った。


「ポチョムキン!」


 名前を呼ぶだけですぐ現れる、ふくよかな隠れマッチョの老齢執事ポチョムキン。
 今日もこの丸眼鏡と丸いフォルムを見るだけで、ちょっとだけ心が和む気がする。


「はい、お嬢様」

「お父様への手紙よ。お願い」

「畏まりました」


 父は国王陛下の側近を長く務め、現在は謁見の間の管理を担っている。そのため私は幼少時代から宮廷で数年、ある程度大きくなってからは家庭教師を連れ帰る形で当主名代の教育を受けた。

 父、私、そして国王陛下の絆は固い。
 国王陛下は私が成長するにつれ、陛下にとっての優しい伯母であるキャロライン姫の面影を見出した。この人物こそ、80年前デュシャン公爵に嫁いだ私の曾祖母なのだ。故に、王家とデュシャン公爵家の絆は深まり、故に、国王陛下は私に甘い。


「法律家を呼んでちょうだい」

「お嬢様。破談の手続きでしたら既に……」

「いいえ、そっちじゃない」

「と、言いますと?」


 私はくるりとふり返り、眼鏡を直して宣言した。
 声高らかに、誇りを以て。


「お 婿 さ ん を 募 集 し ま す !!」


 ポチョムキンも眼鏡を直す。


「ほう! 名案です、お嬢様!」

「私が結婚する相手は私が餞別します。お父様の承諾もじき得られるでしょう。なんといっても妹の結婚について一任されるくらいですから当然です。男を見る目は宮廷で養われ、それはこの一件で完成されたのです。ほのかな恋など一切不要。純粋で誠実かなどという曖昧な資質ではなく、忠実な家臣であるかどうかが重要なのです」

「素晴らしい!」


 ポチョムキンの拍手を受け、私は更に続けた。


「ひとつ、私に忠誠を誓う事。ふたつ、バレるような浮気をしない事。みっつ、生まれた男児を次期公爵とする事。この条件を守れる諸侯の相続からあぶれた令息たちを募集します。期日は来月末日。夕方4時から面接。遠方からのお婿さん候補には7日間の滞在を許可します。以上!」

「持参金については?」

「お金は問題ではありません!」


 せん!

   せん!

      せん……!


 私の声が木霊する。
 ひとつ、咳ばらいをして眼鏡を直し、私は改めてポチョムキンを見つめた。


「当然、愛も。大切なのは、血筋と忠誠。デュシャン公爵家に栄光あれ!」
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