神を知る者

依存症🦃

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神と人(前編)

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「えっと.......これは?」

 私の目の前にはゴミ屋敷と化した住居があった。
 私が消える前は綺麗だったはずなのに.......

「全部貢物よ」

「このガラクタもですか?」

 そう言って私は鉄の塊を持ち上げます。

「それは冷蔵庫って言うんだって。食料を冷やして長持ちさせるらしいよ」

「天界では全く必要無いじゃないですか!」

 そもそも天界で作った食べ物は腐らない。下界の物は持ち込みが許されないので必要が無い。

「そもそもに行き過ぎです。この家がこんなになるまでいったい何回下界に降りたのですか?」

「.......3桁」

「えっ!?そんなに?」

「しょうがないじゃない。ここにいても面白く無いもの」

 確かに天界には娯楽というものが、ほとんど無い。それに下界に行くだけでも気分転換になる。

「お忘れですか?それで世界が滅んだことを」

「分かってるわよ」

 はるか昔に神様たちは普通に下界に降りていた。
 下界で家庭を持っている方もいた。農業をしたり、服を作ったりなど天界には無い貴重な体験をして親睦を深めていった。

 しかしその関係が崩れるのは簡単だった────

「○○様!畑の様子が.......」

 その者は下界に降りた内の1柱の神様と親友と言える程仲が良い者だった。

「見せて!」

 畑は猪という生き物に荒らされていた後だった。

「これはダメだね」

 育てていた野菜は齧られたりしてボロボロになっていた。

「そんな、これから冬なのに.......」

 この頃の村は不作で収穫量が足りない。このままでは良くて奴隷、悪ければ餓死する。

「.........」

 青年は静かに涙を流した

「.......黙っててね」

「へ?」

神様はそう言うと畑に手を向けた。

『我○○が行う、下界での奇跡の使用を赦したまえ。』

「何を言って.......」

天界の言語は下界の者たちには理解出来ない。神様が『奇跡』という力を使うためには天界へ連絡を取らねばならない。

「出来たよ」

そこには先程荒れていた畑が、元気な作物で埋まっていた。

「あ.......、ありがとうございます」

彼は安堵したのか涙を流しながら礼を述べていた。

ああ、良かったなぁと、その時神様は心の底からの笑みを浮かべていた。
しかし、本当の問題はこれでは無かった────
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