猫のもの語り 〜宇宙編〜

猫田 薫

文字の大きさ
8 / 11

第8章 伝説の青い星

しおりを挟む
宇宙船の中は深い闇につつまれていた。
乗組員は全員、冷凍睡眠カプセルの中で静かに眠り続けている。
呼吸も心音も極限にまで抑えられた状態の眠り、時間すら意味を失ったかのような長い長い眠り、それは永遠にも似ていた。

真っ暗な船内でだた一人作業を行っていたのは、人工知能コンピュータ、サイファだった。
宇宙船の航行記録を取り、自動航行を行い、クルーたちの生命維持管理を怠る事なく管理し続けていた。

何億光年もの距離を、異空間を通って船は進む。

途中、いくつかの恒星系をかすめ、流星の群れをすり抜け、大きなトラブルもなく、航行は順調に目的の座標を目指していた。
もし、冷凍睡眠装置が無ければ、乗組員たちはこの旅の半ばで寿命を迎えていただろう。
外の世界では何億光年という月日が過ぎたかもしれないが、彼らにとってはほんの一晩の夢のようなものだった。

やがて、船内の照明がふっと点灯した。青白い光が静かに走り、長い眠りが終わる合図だった。
サイファは乗組員が目覚めた時の船内活動に向けて準備を進めていた。
「目覚めの準備を開始します。」
サイファの声が誰もいない無音の空間に響くと、冷凍睡眠装置の解凍プロセスが動き始める。各カプセルの温度が上昇し、生体リズムが再起動してゆく。サイファの内部プロトコルは、最初にエルを目覚めさせるように設定されていた。

シューッ。
圧縮されたガスの音と主に、ひとつのカプセルが開いた。
薄い水蒸気のような白い霧が立ち上り、その中からエルがゆっくりと体を起こす。

「・・・ん、さむっ・・・、あー、よく寝た。サイファ、ついたのか?」

「はい、エル、目的の惑星に到着しました、窓の外をみてください。」

ふらつく足取りでエルは立ち上がって窓辺へと歩み寄った。
宇宙の闇の中に、青く美しく輝くひとつの星が浮かんでいた。

「あれが・・・伝説の青い星・・・?」

それは、静かに自転する宝石のようだった。
濃紺の海と白い雲が渦を巻き、光を反射して輝いている。
大気圏を縁取るように、淡く輝く青の輪が浮かんでいた。

「本当にあったんだな・・・」

エルは息を呑み、しばらく呆然と言葉を忘れて、その美しい星を眺めていた。

シューッ。

続いてミケのカプセルが開く。彼女は目をこすりながらぼんやりと起き上がり、欠伸をした。

「ふわあ……ついたの? もう体がムズムズするわ。あれ、窓の外に……ほんとうに青い星。きれい……」

やがてノアとレオのカプセルも順に開き、ふたりもまた、ゆっくりと目を覚ました。

「……すごい……まるで神様がくれたプレゼントみたいだ」
ノアは信じられないといった様子で呟いた。

「……夢じゃないのか? 本当にあったんだ……青い星……」
レオの瞳には、純粋な感動があふれていた。

4人は無言で、しばらくその青い星を見つめ続けた。
冷たい宇宙の闇の中で、唯一、生命の気配を放つようなあたたかな光。その星は、彼らの長い旅路の終着点であり、希望そのものだった。

「総員、準備をお願いします。これより着陸態勢に入ります」
サイファの声に促され、乗組員たちは静かに頷いた。
宇宙船は徐々に高度を下げ、青い星の大気圏へと進入していく。船体がわずかに震え、まるで星に迎えられるように、ゆっくりとその懐へと吸い込まれていった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

 【最新版】  日月神示

蔵屋
歴史・時代
 最近日月神示の予言本に不安を抱いている方もあると思うがまったく心配いらない。  何故なら日月神示では「取り越し苦労や過ぎ越し苦労はするな!」 「今に生きよ!」  「善一筋で生きよ!」  「身魂磨きをせよ!」  「人間の正しい生き方」  「人間の正しい食生活」  「人間の正しい夫婦のあり方」  「身も心も神さまからお借りしているのじゃから夜になって寝る前に神さまに一旦お返しするのじゃ。そうしたら身と心をどのようにしたらよいか、分かるじゃろ!」  たったのこれだけを守れば良いということだ。  根拠のない書籍や情報源等に惑わされてはダメだ。  日月神示も出口王仁三郎もそのようなことは一切言っていない。  これらの書籍や情報源は「日月神示」が警告する「臣民を惑わすものが出てくるから気をつけよ!」 という言葉に注目して欲しい。  今回、私は読者の皆さんに間違った解釈をされている日月神示を分かりやすく解説していくことにしました。  どうか、最後までお読み下さい。  日月神示の予言については、私が執筆中の「神典日月神示の真実」をお読み下さい。    

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

処理中です...