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2、第6打合せ室
しおりを挟む打合せ室の並ぶ廊下の最奥に「○○○しないと出られない部屋」こと「第6打合せ室」はある。
他の打合せ室のドアにはガラスが嵌めこまれ、中が見えるようになっているのにその部屋だけはスチール製で中が窺えない。大久が重量のある扉をやすやすと開くと同時に視界に飛び込む大きなベッドに優士屋は息を飲んだ。
マジかよっ。がむしゃらに暴れ部屋を出ようとするが閉じられたドアが魔力によって施錠されたことを悟る。
マジかよマジかよマジかよっ。
「こんなの、許されるワケねぇだろうがっ」
社内で性行為が推奨されるなど、しかもそれが会社からの指示などと信じられない。
おかしなマネしてみろ。訴えてやる。優士屋が神経を尖らせるなか、大久は優士屋を解放すると部屋の奥へと進んだ。
その隙にドアを開けようとノブを派手に鳴らしたがびくともしない。驚くほど強力な施錠魔法だ。優士屋は舌打ちとともに諦め、状況確認のため辺りを見渡す。
右手には給湯室のような簡易のキッチン設備と小さな2枚ドアの冷蔵庫、その手前には小さなカウンターがありスツールが二つ並んでいる。
安い一人暮らしの賃貸アパートのようにも見えるが、その反対には不釣り合いなほどに巨大なベッドが部屋の面積の大半を占めている。
ベッドと簡易キッチンの間から伸びる短い通路の奥に扉が見えたが、それはどう見てもバスルームのドアだ。
ラブホかよ。会社だろうが。
大久は首の後ろを大きな掌で擦りながら簡易キッチン内を漁り、電気ケトルにお湯を沸かし始めた。
大久の白いワイシャツはぴんと張っており逞しいその後姿に警戒する中、ふと目についたキッチンカウンターの上に乗せられた藤のカゴを見て優士屋の怒りがぶり返す。コードをぐるぐると巻きつけられた電気マッサージ器と何か液体の入ったボトル。
マジかよ、くそが。
湯が沸くのを待つ間に大久は袖を捲りマグカップを二つ並べるとドリップコーヒーをセットする。なぜか悠長にコーヒーの香りをさせ始める愚鈍な大久にイラつく。
こんな時に何をしているのか。
相手はオークだ。先に制圧したもん勝ちだと優士屋は思った。
「で? 分かってるんだろうな?」
両手に持ったマグカップの一つを優士屋に近いスツールの前に置いた大久は尋ねる。
これから話し合いで役割を決めようとしているのだろうがそうはいかない。
恵まれた体格に整い過ぎたといっても過言ではない顔の造作。昼も夜も百戦錬磨が自慢の優士屋は己の性技に絶対の自信を持っていた。男は範疇外だったが監禁されていてはタイムリミットの迫った仕事も進まないのだ。
電マとローションで責めて射精させればワンチャン開錠されるかもしれない。
優士屋は嫌で嫌で仕方がないが手っ取り早く行くことにした。
勇者筋だからこその判断力と実行力を以てこの状況を打開する。
腹の立つことに自分よりも10センチほど背の高い多くの太い首の後ろを掴むと同時に大久の持っているマグカップをカウンターに置く。
咄嗟の事に反応の遅れた大久の後ろ首を掴んだままベッドへ押し付け、流れるように大久の両腕を片手で一まとめに拘束する。大久も反射的に抵抗したが勇者筋で魔物を制圧する術が脈々と受け継がれ拘束術に長けている優士屋が一枚上手だった。
今は全く無用の長物となっていたはずが、まさかこんなところで役に立つとは人生分からないものだと優士屋は内心ほくそ笑む。
これなら楽勝だ。
なにが悲しくて男の陰茎を扱かねばならないのかとも思うが背に腹は代えられない。優士屋は腹をくくった。
今日中に得意先に送らないといけない見積もりが二件あるのだ。
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