ヒロインの息子×悪役令嬢の息子(転生者)

ー結月ー

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この世界はあのゲームの世界

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真っ黒な姿の人が二人、俺の前にいた…両親なんだけどね。
黒いローブを頭の深くまで被り、怪しい言葉をブツブツ呟いている。

三歳の誕生日がこれとか、変な家族なんだろうな…今更だけど…

俺を生贄に捧げる気まんまんの儀式のようで、顔が引きつらせる。
両親がこうやって怪しい事をするのは今に始まった事ではないけど…

母親は俺を洗脳するように国への恨みを口にしている。
俺はそれを聞いているフリをしながら別の事を考えていた。

ずっと引きこもりはやっぱり体に悪いよな。
生前は学校行くために外に出てたけど、今はずっと家にいる。
友達を作るというより、街を見て回りたいという好奇心だ。

言葉ははっきりとは言えないが、感情を伝える事は出来る。
眠い、疲れた、お腹すいたくらいしか言わないけど…

父親は狩りをして街で売っていて、母親は刺繍で服に模様を付けて売っている。
もうそれでいいじゃん、それの後継ぎならなるよ。
狩りは出来ないけど、刺繍なら何とか出来る…手先は器用だからさ。

「私達は高貴な貴族だったのに、アイツらは…」

また始まった、こうなったらどうする事も出来ないんだよな。

母親は昔、伯爵家のご令嬢で父親は伯爵に仕えていた。
なのに壁に貼られた顔の人物に国から追放されてこんな小さな小屋で暮らす事になった。
その復讐のために、父親と子供を作って子供に恨みを継がせようとしていると誇らしげに語っていた。

俺は両親が国から追放された事よりも、愛の結晶として生まれたわけじゃない事を知ってショックを受けた。
そんな復讐のために俺が生まれたの?幸せの象徴じゃないの?

追放って、正直母親の家族や使用人達全員が追放されてるならそれ相応の事をしたんじゃないかと思う。
じゃないと普通国から追放なんてされない、いったい何をしたのか。

なんで追放されたのか言わないで、アイツらが悪い…国に復讐を…としか言わない。
俺はだんだん嫌になってきて、横になって目蓋を閉じた。

すると、いつもみたいに母親は「まだ子供か」と言う。
子供で悪かったな、別にこんな話を聞かないといけないならずっと子供でいい。

俺の誕生日なんだからさ、おめでとうの一つくらいあってもいいのにな。
俺が望まれて生まれてきたわけではないからなのかもしれない。

誕生日の日はこうして変な黒魔術をするから、その日が誕生日だって覚えてしまった。
この小屋にはカレンダーもないから今が西暦何年なのかも分からない。

そして、そろそろ両親以外の人に会いたいな…お店の人でいいから…、
ずっとこの小屋で情報遮断されて、恨み言を言われ続けたら確かに洗脳されるかもな。
俺も恨み言の一つや二つ、言いたくなってきた…母親に…

翌朝、俺は味がほとんどしないスープを飲んでいた…ほんのり塩味を感じるくらいか。
今が貧乏でも俺が大きくなって両親を養ってやりたいのに、両親はそれを全然望んでいない…俺に望んでるのは復讐だけなんだろうな。

俺は、両親がどうやって稼いでいるのか気になって母親に聞いてみた。
両親が国から追放されても、あの怪しい黒いローブを着てこっそり出かけているらしい。
旅人だと言うだけで国の門番は通行手形があれば簡単に通してくれると笑っていた。

その通行手形も追放される前に持っていたみたいで、そこは運がいいんだなと感心した。
でも、国に入っても売れるかどうかは別の話だ。
こうして薄めた料理を毎日食べるほどに、刺繍も狩りの戦利品も売れない。

あんな大きな国なら、プロの専門職がいても不思議じゃない…当然だよな。

「まずは、商売敵を国から追い出して…」とか心が狭い事を言っている。
俺は何も協力しないからな、と母親に背中を向けてスープを飲む。

あー、美味しいなー、贅沢しなくても幸せなのになー。

背を向けた事によって、壁に貼られた紙が見えた。
いつも怖くて見なかったが、新しい紙が追加されていた。
その紙は、またすぐに切り刻まれるのだろうが…初めて切り刻まれる前の紙を見た。

そこにいたのは茶髪のロングヘアーの女性と黒髪の男性の姿だった。
写真だと思っていたら、どうやら写真ではなく絵だった。

その二人に見覚えがあり、ついジッと見つめてしまい母親は俺の横から手を伸ばしてその絵を小型ナイフで引き裂いた。

「アンタもあの性悪女の毒牙に掛かったわけではないよな」

母親は俺を睨んでいて、慌てて首を振るといつの間にか絵が他の絵のようにズタズタに切り刻まれていた。

母親の絵に描かれている女性に対しての恨みは相当なものなんだろう。

どうやらあの女性は不思議な力でいろんな男を虜にした魔女だと言っていた。
男性の方も追放した張本人で、恨みが酷かった。

この二人をどうにかして殺そうと言っていて、俺は母親の方が怖かった。

ズタズタにされた絵を見ると、女性の方の首に掛けているペンダントが見えた。
ひし形の綺麗な青いペンダント、そのペンダントに見覚えがあった。
それに、彼らの姿…俺の後ろにいる母親の容姿を合わせる。

母親は俺を見て、首を傾げていた……転生してからずっと心残りで…夢にも見ていたからよく覚えている。

この人達って、俺がやっていた高難易度の乙女ゲームのキャラクターに似ている。

いやいや、ただ似てるだけだよな…漫画とかではよく異世界に転生したらゲームキャラになっていたとか見た事あるが、俺がそうだとは言えない。

でも、もしそうなら俺の母親は大悪党という事になる。

ズタズタにされた絵の人物はヒロインのリリアとリリアを守る最強の守護精霊の力を持つ攻略キャラクターのクリストファーだ。
そして後ろにいる人は、国を手に入れようと国王を誑かしたり恐怖で支配しようとしていたゲルダ一族。

「し、シノ?」

「母の名前を呼び捨てにするな、シノ様と呼べ」

俺の頭をぐりぐりと撫でて、脳が揺さぶられて気持ち悪い。

母親がシノという名前なら、国に復讐しようとする理由が分かる。

あのゲームはクリアまでしていない、でも悪者は最後に裁かれるのは当然だ。
だから最後追放されたと言われても納得してしまう。

村人Aだと思ってたのに、悪者になんてなりたくないよ。
最後はどうなって終わったか分からないが、俺は子供として生まれている。
もしかしたらゲームに瓜二つの世界だけど、子供世代はゲームにないのかもしれない。
だったら俺は誰に何の役か決められる事なく自由に生きていける。

一瞬悪党家族に生まれた事に絶望していたが、目が輝いた。
俺の人生だ、俺が決める…だから両親に悪いけど一ミリも期待しないでくれ。

ここがゲームの世界だとしたら、テレビがないのも頷ける。
テレビもゲームもない、娯楽と言ったら外で遊んだり本を読んだり…後は実際に街に出てないから分からない。
クリアしていないゲームの浅い知識ではこれが限界だった。

ゲームが出来ないと分かると禁断症状が出てくる。
何もないけど、コントローラーを握る手のポーズをして虚しく動かす。

母親が「何をしている」と不審そうな顔を向けてきたから、苦笑いして誤魔化して手を離す。
心残りをなくすためにゲームをクリアしたいが、多分この世界はクリアしている世界なんだよな。

自分でクリアしたかったが、そうなると俺がメインキャラクターになるしかなくなるし…それは嫌だな。
それに現実とゲームは違う、ゲームで戦えた事でも現実で戦えるわけがない。
ゲーム欲を抑えて、現実を生きていこう…俺にはそれが合っている。

まだなにか言っている母親を無視して、食べたら眠くなりそのまま横になった。
食べて寝ての繰り返しで、太りそうだな…小屋の中を走り回ると母親が怒るからどうしようかと考える。

外には母親に連れられてじゃないと出してももらえない。
俺は大事な後継ぎだから怪我をしないようにという理由らしいが、俺からしたらずっと家にいるだけで病気になりそうだ。

母親が家にいない時にこっそり外に出ようかな…と企んでいた。
下に降りるだけでなにかがあるわけでもないしと軽く考えていたんだ。
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