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口は災いの元
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『ルシア視点』
あの指きりをしてから八年、俺は針千本飲まなきゃいけないのかな…と思い始めていた。
いや、いつ会うとかは約束していないから指きりは有効の筈だ。
国には学校があるみたいだけど、当然俺は国に入れないから学校に通えない。
両親が買ってくれた勉学の教科書で学んでいる。
一人で外に出たあの日から俺は母親の監視の元で暮らしている。
父親のためとはいえ勝手な行動をして、お尻が赤くなるほど叩かれて涙目になっていると父親が責任を感じて俺を庇ってくれた。
そして何故か父親も一緒に怒られてしまった…怪我をしたのは家族のためなのに可哀想になってきた。
父親は病み上がりなのに働かされて、俺は「暇だったらこれでも読んでろ」と勉学の教科書を渡された。
役に立つものだからいいけど、俺ももう十三歳だし仕事の手伝いをしたい。
国の復讐はしたくないが、家計を助けるくらい俺にだって出来る。
でも、母親の刺繍の仕事を手伝おうと思ったら手を叩かれた。
うっ…痛い…口で言っていないが、余計な事をするなという圧を感じる。
俺が外に出れる方法ってやっぱりアレしかないよな。
「お母さん、俺…国に復讐するよ!」
「どういう風の吹き回し?」
「えっと…お母さんとお父さんの恨みは充分分かったから…俺に任せてよ!必ず恨みを晴らすから!」
…というのは真っ赤な嘘だ、そもそも一度も復讐したいとか思った事がない。
悪役なんだし、悪いのは両親なのはゲームをしていて分かってる…クリアしてなくてもゲームの悪役はそういうものだ。
これは外に出るために言っているだけだ。
でも、ずっと嫌がっていた復讐をやる気になったと勘違いした母親は嬉しそうな顔をしていた。
俺はニヤニヤしそうな顔を引き締める、今ニヤニヤすると怪しまれる。
読んでいた本を閉じて、母親に近付くと母親の冷たい手が俺の頬に触れた。
初めて優しくされたような気がして、嬉しいというより驚きが勝っていた。
「やっとお前は自分の本来の役割に気付いたか」
「…う、ん」
「ならば今すぐにでもお前を鍛えなければな」
張り切る母親に悪い気がしながら、せっかく外に出れるかもしれないチャンスを逃さないように顔を引きつらせながら笑った。
でも、鍛えるって何をするのか全く分からない…俺、外に出たいだけなんだけどな。
結果的に、外に出る事は出来た…しかし母親に連れられたのは家の近くにある大きな木の前だった。
いつもなら焚き火を作るために父親がぼろぼろの斧で木を切り倒していた。
立派に育った木だなぁと、ペタペタ木に触っていたら母親はとんでもない事を言ってきた。
俺はそれを聞いて、自分の何も考えなしの言葉を撤回したくて堪らなくなる。
「この木を素手で倒せ、それが出来たらお前を立派な一人前にしてやろう」
「お母さん、俺…人間…」
「さぁやれ!」
母親は俺の言葉なんて聞く気がないのか、無理な事を言ってくる。
こんな大きな木を素手でなんて不可能すぎるだろ。
鍛え上げられた体を持つムキムキマッチョですら簡単じゃないだろう。
ゲーマー舐めるなよ、ろくに鍛えた事ないんだから転生してイージーモードに簡単になれるわけないだろ!
母親は俺を近くで見張っているのか、わざわざ刺繍を持ってきて切り株に座って作業をしていた。
逃げる事もサボる事も出来ない、軽く木をパンチしていた。
木は揺れる事なく、ダメージなんて一つも与えていなかった。
「もっとやる気を出せ!そんなんじゃ守護精霊の力に勝てるわけがないだろ!」
「うっ、痛い…」
「弱気になっていたら国を支配出来ないぞ!」
木が揺れるほど強く殴らないと、許してくれそうもない。
手が痛い、母親はスパルタでとても怖くて泣きながら木を殴り続けた。
一度逃げようとしたら、俺のすぐ近くの木に刺繍の針が刺さっていて…逃げる事は死を意味する事だと体が震えた。
木をへし折るなんて、何十年かかるのか…いやそれくらいで済むならいいが、下手すると一生木を倒す事は出来ないのかもしれない。
腕の感覚がなくなったところでやっと母親から「今日は終わりにしよう」という声が聞こえた。
手のひらからは血が滲んでいて、木にも赤い液体が付いていた。
傷口を湧き水で洗って、家に帰った…俺の家の手当てはそれだけだ。
あの少年がくれた薬は父親のぶんでもうなくなった。
相変わらず薬を買う余裕がないから仕方ないけど、痛いな。
父親が帰ってきたら、母親は俺がやる気になっている事を知らせていた。
そんな大騒ぎする事じゃないと、嘘をついた事に罪悪感を抱いて傷口を乾かすために息を吹く。
かさぶたになったらちょっと痛みがなくなるかなと思ったからだ。
怪しい顔で笑っている二人を俺はまだ気付いていなかった。
「ルシア、お前は強い男になる…なんて言っても私達の子供だからな」
「…これであの時の屈辱を…」
「ふーふー……いてて」
あの指きりをしてから八年、俺は針千本飲まなきゃいけないのかな…と思い始めていた。
いや、いつ会うとかは約束していないから指きりは有効の筈だ。
国には学校があるみたいだけど、当然俺は国に入れないから学校に通えない。
両親が買ってくれた勉学の教科書で学んでいる。
一人で外に出たあの日から俺は母親の監視の元で暮らしている。
父親のためとはいえ勝手な行動をして、お尻が赤くなるほど叩かれて涙目になっていると父親が責任を感じて俺を庇ってくれた。
そして何故か父親も一緒に怒られてしまった…怪我をしたのは家族のためなのに可哀想になってきた。
父親は病み上がりなのに働かされて、俺は「暇だったらこれでも読んでろ」と勉学の教科書を渡された。
役に立つものだからいいけど、俺ももう十三歳だし仕事の手伝いをしたい。
国の復讐はしたくないが、家計を助けるくらい俺にだって出来る。
でも、母親の刺繍の仕事を手伝おうと思ったら手を叩かれた。
うっ…痛い…口で言っていないが、余計な事をするなという圧を感じる。
俺が外に出れる方法ってやっぱりアレしかないよな。
「お母さん、俺…国に復讐するよ!」
「どういう風の吹き回し?」
「えっと…お母さんとお父さんの恨みは充分分かったから…俺に任せてよ!必ず恨みを晴らすから!」
…というのは真っ赤な嘘だ、そもそも一度も復讐したいとか思った事がない。
悪役なんだし、悪いのは両親なのはゲームをしていて分かってる…クリアしてなくてもゲームの悪役はそういうものだ。
これは外に出るために言っているだけだ。
でも、ずっと嫌がっていた復讐をやる気になったと勘違いした母親は嬉しそうな顔をしていた。
俺はニヤニヤしそうな顔を引き締める、今ニヤニヤすると怪しまれる。
読んでいた本を閉じて、母親に近付くと母親の冷たい手が俺の頬に触れた。
初めて優しくされたような気がして、嬉しいというより驚きが勝っていた。
「やっとお前は自分の本来の役割に気付いたか」
「…う、ん」
「ならば今すぐにでもお前を鍛えなければな」
張り切る母親に悪い気がしながら、せっかく外に出れるかもしれないチャンスを逃さないように顔を引きつらせながら笑った。
でも、鍛えるって何をするのか全く分からない…俺、外に出たいだけなんだけどな。
結果的に、外に出る事は出来た…しかし母親に連れられたのは家の近くにある大きな木の前だった。
いつもなら焚き火を作るために父親がぼろぼろの斧で木を切り倒していた。
立派に育った木だなぁと、ペタペタ木に触っていたら母親はとんでもない事を言ってきた。
俺はそれを聞いて、自分の何も考えなしの言葉を撤回したくて堪らなくなる。
「この木を素手で倒せ、それが出来たらお前を立派な一人前にしてやろう」
「お母さん、俺…人間…」
「さぁやれ!」
母親は俺の言葉なんて聞く気がないのか、無理な事を言ってくる。
こんな大きな木を素手でなんて不可能すぎるだろ。
鍛え上げられた体を持つムキムキマッチョですら簡単じゃないだろう。
ゲーマー舐めるなよ、ろくに鍛えた事ないんだから転生してイージーモードに簡単になれるわけないだろ!
母親は俺を近くで見張っているのか、わざわざ刺繍を持ってきて切り株に座って作業をしていた。
逃げる事もサボる事も出来ない、軽く木をパンチしていた。
木は揺れる事なく、ダメージなんて一つも与えていなかった。
「もっとやる気を出せ!そんなんじゃ守護精霊の力に勝てるわけがないだろ!」
「うっ、痛い…」
「弱気になっていたら国を支配出来ないぞ!」
木が揺れるほど強く殴らないと、許してくれそうもない。
手が痛い、母親はスパルタでとても怖くて泣きながら木を殴り続けた。
一度逃げようとしたら、俺のすぐ近くの木に刺繍の針が刺さっていて…逃げる事は死を意味する事だと体が震えた。
木をへし折るなんて、何十年かかるのか…いやそれくらいで済むならいいが、下手すると一生木を倒す事は出来ないのかもしれない。
腕の感覚がなくなったところでやっと母親から「今日は終わりにしよう」という声が聞こえた。
手のひらからは血が滲んでいて、木にも赤い液体が付いていた。
傷口を湧き水で洗って、家に帰った…俺の家の手当てはそれだけだ。
あの少年がくれた薬は父親のぶんでもうなくなった。
相変わらず薬を買う余裕がないから仕方ないけど、痛いな。
父親が帰ってきたら、母親は俺がやる気になっている事を知らせていた。
そんな大騒ぎする事じゃないと、嘘をついた事に罪悪感を抱いて傷口を乾かすために息を吹く。
かさぶたになったらちょっと痛みがなくなるかなと思ったからだ。
怪しい顔で笑っている二人を俺はまだ気付いていなかった。
「ルシア、お前は強い男になる…なんて言っても私達の子供だからな」
「…これであの時の屈辱を…」
「ふーふー……いてて」
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