ヒロインの息子×悪役令嬢の息子(転生者)

ー結月ー

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鬼畜な修行中

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「さぁ、ルシア!次はこれを持って走るんだ!」

「えぇぇ…」

「弱音は聞かん!さっさと行け!落としたら夕飯は抜きだ!」

母親のスパルタのように俺に夕飯のどんぶりを持せて背中を走らせた。
俺のだけなら落としても残念だと思うが、このどんぶりは両親のぶんもあるからかなり思う。

俺が落とすと連帯責任になって、皆夕飯がなくなってしまう。
そこのところはちゃんと分かっているみたいで嫌だな。

両親の夕飯を守るようにどんぶりを持ちながら走る。
後ろから母親が付いて来るから走らないと尻を叩かれる。
右手にはごはんのどんぶりに、左手はおかずを持っている。
遠くから見たらかなりシュールな姿に見えるだろう。

腕が筋肉痛になりながらも、必死に走る…足も棒になりそうだ。

ちなみに木はまだ倒していない、まだ木の課題もあるが今日はこの修行だと言われて無我夢中で走る。

昨日の筋肉痛も完全に治っていないのに、さらに悪化しそうだ。

家の周りを一周する事が目標だが、今日は少し距離を遠くにされた。
どんやイジメなんだよ、料理持ってるんだからいつも通りの道でいいのに。

でも、俺は自由を手にするために今まで頑張ってきたんだ…諦められるか!
世界征服?復讐?そんなもん俺にとっては知った事か!!
貧弱なゲーマー舐めるなよ!!頭使う事以外苦手なんだぞ!
でも俺は鬼畜ゲーム実況者だ、どんな難易度でもこの世界がゲームなら全クリアしてやる!!

足が石につまづいて、転けそうになったが何とか踏ん張った。

「目指せ俺のスローライフ!!」

後ろから母親の冷めた視線が突き刺さるが、俺は気にせず気合いだけで走り抜いた。

夕飯を落とす事はなくて良かったが、俺は腕や手が限界で食事が出来なかった。
俺が守り抜いた美味しそうな料理があるのに、泣きそうだ。

何とかフォークでご飯を掬う事が出来たが床にポロッと落ちた。

声を出すと怒られるから静かに涙を流した。

母親の言われた事だけをやるんじゃなくて、その後の事も考えないとな。
あれだけ頑張っても、なんで体力が増えないのか…ゲームみたいにレベルアップとか現実にないのかな。

そんな事ないよな、大丈夫だよな、と自分に言い聞かせてご飯を口元に持っていこうとしたらまた床に落ちた。

「全く仕方ない、ほら…ルシア、口を開けろ」

「お母さん…」

ご飯が食べられない俺を見かねて母親が俺のフォークを使って食べさせてくれようとしていた。
今はお母さんが天使のように見える、さっきまでは悪魔に見えていたけど…

口にご飯を詰め込まれて、飲み込む前に次々と押し込まれるから逃げた。
今度はご飯で窒息するかと思ったと、口の中に残ったご飯をもごもごさせながらそう思った。

父親が帰ってきて、俺は早く寝ろと無理矢理寝かせられた。
寝ろと言われて素直に寝れるわけがないだろ。

寝たふりをすると、両親の会話が聞こえた…狭い小屋だから当然だけど…

「さっき街に来たら新しい守護精霊の力を持つ者達の話を聞いた」

「何?あの忌々しい力を持つ奴らがまた現れたのか!?私達を追放した奴らとは違うのか?」

「アイツらはもう全員力が残っていないだろう、新しい聖女も何処かにいるかもしれない」

「なるほどな、聖女の力さえなければ守護精霊の力なんて恐るに足らん」

気のせいかな、気のせいであってほしいが…もしかして俺の方を見てる?

いや、やらないよ?と心の中で思いながら本当に寝ようと思った。
そっか、新しい守護精霊や聖女が現れたんだふーん。

そういえばあの少年の背中の傷、なんか守護精霊の羽根みたいだったな。
傷がそう見えただけで羽根ではないんだけどね。

俺が何もしなきゃ向こうだって何もしないだろうし、悪役だからって全然絶望した気分ではない。

なるようになる、なるようにしかならないんだから気にしたって仕方ない。

そして俺は次の日、起きたら全身筋肉痛で起き上がる事も出来なかった。
魚のようにピチピチ動く俺に母親はため息を吐いた。

「軟弱者が」

「……うっうぅ」

「仕方ない、今日だけは休ませてやる…その代わり明日は今日のぶんまでやってもらうからな」

一瞬でも優しいと思ったが、お母さんが一番鬼畜だった。
あぁ、明日がこんなに来てほしくないなんて思った事は一度もない。
痛くて書く事は出来ないが教科書を眺めて勉強する。

母親は刺繍が完成して、新しい刺繍を始めていた。

今日だけは穏やかな時間が流れていった。

斧を振り下ろして、大きな音が響き渡る。

修行の成果で武器の扱いも慣れたものだ、このくらいいけば両親も国に行く許可がもらえる筈だ。
もう一度斧を振り下ろして、何度かそれを繰り返す。
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