四天王最弱の闇の貴公子に転生した俺は器用貧乏を返上し、無限の手札と敵専用チート級最強最悪スキルで高笑いと共に全てを蹂躙し屈服させ覇道を征く!

ミオニチ

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第1部 〈そして俺は、勇者と魔王を手に入れる〉編

14、少女魔王の『声』。もう一つの最大の障害への道。

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「さて。先ほどの戦闘メイドたちの見ようによっては怒り気味にも見えるやたらと妙な態度は少々気にかかるが、俺が下した勇者パーティーについてはひとまずこれでいいだろう。それよりも、いくら基本全てに無関心、かつ滅多に自分からは動かない相手とはいえ、いくらなんでも、そろそろあちらから接触があってもおかしくはない。ならば、俺も急がねばなるまい」

 倒した勇者パーティーの後始末を戦闘メイドたちに任せ、別れた俺は広間を出て思考の整理をしながら、足早に歩を進めていた。

「ゲームのときのアクティブターン制バトルと現実ゆえの完全なリアルタイムバトルという違いはあるものの、俺が先ほど使った二つのスキル。裏ボスたちの使用するチート級最強最悪スキル、その一つアビスフレイム。それに加え、そのあとのスリープオール。スキルの基本的な仕様はゲームと同じと考えて、概ね間違いなさそうだ。相手が弱れば弱るほどに状態異常が通りやすくなる仕様も同じだったからな。まあそこまで弱った相手など、本来命を奪うことも容易いものだ。変わっていなくても、うなずける」

 カツン。

 靴音を立て目的地に到着した俺は、魔族と魔物の間で禁忌とされる聖なる女神像セーブポイントに再び手を伸ばした。

「ならば、これでまた一歩! 俺の野望に近づけるはずだ……! ん…………? これは…………!? ふはっ! ふははははははっ! はははははははっ!」

 思わず俺は、こらえきれず再び高笑いを上げていた。

 ゲームとは異なる、ただし俺にとってあまりにも都合の良いこの世界ならではの仕様を目にして。
 
「くく。なるほど……! 確かに、確かにそうだ……! ゲームという絶対のルールに縛られない本物の実戦においては、必ずしも相手の命を奪う必要はあるまい! 時にはその戦いを制し、相手を屈服させれば十分勝利と見なされ、経験やスキルポイントを得られることもあるということか! そして……ならばっ!」

 タタタタッ! とすばやく指を滑らせ、俺は当初予定していたものとは少し違う、いくつかのスキルを選択する。

「ふははは! これだ! 勇者アリューシャたちを倒し、屈服させて新たに得たスキルポイントを加え! いまスキルリセットし振り直したこの新たなチート級最強最悪スキルの一つと、そしてこの三つのスキルで、俺はこれより立ち塞がる野望へのもう一つの最大の障害を排除し! ふははは! そして、さらなる高みへと至ってみせよう!」

『――ほう? ずいぶんと愉しそうではないか? ジュド。手前勝手に禁忌に触れておいて』

「っ…………!?」

 ――予想は、していた。そろそろ接触があってもおかしくはない、と。

 それを見越して、こうして準備を急いだのだから。

 だが、階層マスターであるこの俺を凌ぐダンジョンマスターとしての権能により、その直接脳内に響く『声』に。

 そこから滲み出す俺という存在を塗り潰すような圧倒的威圧感に。

 何よりもその隠す気すら欠片もない、際限なく溢れ出る悪意に。

 ――やはり俺は戦慄し、緊張せざるをえない。

『どうした? さっさと返事をせぬか。まさか、この我の声が聞こえておらぬわけでもあるまい?』

 俺は、深呼吸を一つして恭しくその場で跪いてから、ようやくその『声』に応える。

「いえ。これは大変失礼を。脳内に直接響く陛下の玉音。涼やかにして流麗なるお声に、少々心奪われていたところです。御自らのお声がけ、この闇の貴公子ジュド、誠に光栄の至り。偉大なる我ら魔族と魔物の頂点、現魔王デスニア陛下」

『ふん。これはまた、随分と無駄によくまわる舌と随分と調子の良すぎる返事じゃ。とても信じられぬ。で? 手前勝手かつ好き放題にあの忌々しい像に触れて、貴様はいったい何をしておる? それも、あの弱いくせにこの我に手向かう小生意気な人間どものその象徴。勇者アリューシャを討ち果たしたというのに、この我に報告もせず』

「これは現魔王デスニア陛下におきましては、お待たせして大変なる失礼を。偶然にも、ちょうどたったいまデスニア陛下との謁見の準備が整ったところです。この闇の貴公子ジュド、これよりすぐに御身の下に馳せ参じさせていただきますので」

 そこで俺は、間違いなくその権能で観ているだろう魔王デスニアへ向けて見上げ、挑発するように凶悪に口の端をつり上げる。

「現魔王デスニア陛下。この俺があなたとの謁見のために入念にした準備、必ずやお気に召していただけるものだと、この闇の貴公子ジュド、確信しております」

『……ほう? その威勢のよさ、口だけでなければよ
いのだがな。ならば、さっさと来い。……ああ、そうだ。貴様には、まがりなりにも勇者たちを倒した褒美をとらせねばならぬ。この我に何を望むか、いまのうちに考えておくがよい』

 魔王デスニアのその言葉を最後に、脳内に直接響く『声』と威圧感が消え、俺はゆっくりと立ち上がるとひざについた埃を払う。

「……褒美だと? ふはははは! 何を望むかなど決まっている! ならば、まずは遠慮なくいただくとしよう! 我が野望のために! ふははは! 精々この俺のためにその玉座、小さな尻で磨いて待っているがいい! 現魔王デスニア!」

 そして、高笑いを上げながら、俺は野望達成へのもう一つの最大の障害へと続く覇道みちを悠然と歩き始めた。
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