四天王最弱の闇の貴公子に転生した俺は器用貧乏を返上し、無限の手札と敵専用チート級最強最悪スキルで高笑いと共に全てを蹂躙し屈服させ覇道を征く!

ミオニチ

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第1部 〈そして俺は、勇者と魔王を手に入れる〉編

25、新魔王戴冠。陶酔と熱狂と喝采と――それを切り裂く怒号。

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 カッコッカッコッカッ。

 静寂の謁見の間に、一つの足音だけが響き渡る。

「ひっ……!?」

 そして俺は、いまだ床の上にほぼ裸で縮こまるようにして這いつくばったままビクリと身を震わせる、いまや憐れを誘う怯えた元少女魔王デスニアの横を素通りし、いまや俺のものとなった玉座へとその身を沈めた。

「……ほう? なかなかの座り心地だ。俺の野望達成のための繋ぎとしては悪くない」

 ――そしてその瞬間。静寂が破れ、辺りが堰を切ったようにざわめき出す。

「ウ、動ケル……。威圧ガ……解ケタ……? ナ、ナラバ……ホ、本当ニ……アノ魔王……デスニア陛下ガ……敗レタ……ノカ……?」

「で、では……あの魔王直属四天王……いや元四天王のジュドさまが……我々魔族の新たな頂点……?」

「クふ……! そんナの決まっテいるヨ。ボクたち魔族や魔物ノ世界は弱肉強食コそが摂理ダよ? ねエ? イクチノ?」

「…………………………………………

「そ、そうだ……! 四天王のお二方のおっしゃるとおり……!」

「ば、万歳っ! 新魔王ジュドさまっ! 万歳っ!」

「我ら魔族と魔物の新たな頂点っ! 新魔王ジュド陛下っ! 万歳っ!」

「そうだっ! 何を躊躇する必要があるっ! 我らが大敵たる勇者を討ち果たせし英雄ジュドさまこそ、むしろ我らが魔王に相応しいっ! いや、他にいるものかっ! 万歳っ!」

「おお! そうだ! 勇者を倒したいま、もはや我ら魔族と魔物の前に敵はない! いまこそ我らがこの世界に覇を唱え、愚かな人間どもを踏みにじり君臨するときっ! 万歳っ!」

「新魔王ジュドさまっ! 我ら魔族と魔物をどうかその偉大なる知恵と御力でお導きくださいっ! 万歳っ!」

「「「万歳っ! 万歳っ! 万歳っ! ばんざぁいっ!」」」

「だぁぁぁまぁぁぁっっ!! れぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」

 ――ガッシャアンンンッッ……!

 その列席者の中から離れた最も遠い壁際で上がった憤怒に満ちた絶叫と轟音に、ある種陶酔したような熱狂の渦にあった謁見の間に再び静寂が満ちる。

 フーッ! フーッ! フーッ!

 頬に深い切り傷をつけた強面の偉丈夫――たったいまその被っていた兜を謁見の間の床に叩きつけた四天王元筆頭の黒鎧の男、暴魔将軍バーオネラルが鼻息も荒く血走った目で、頬杖をつき悠々と玉座に座す俺を睨みつける。

「貴様がっ……! 魔王……だとっ……!」

 そして、いまだ床の上に這いつくばったままの憐れを誘う少女魔王デスニアにちらと視線が向くと同時――情欲に似た嗜虐と野心と狂気にその血走った赤い瞳が歪み、玉座へと向けて一直線に走り出した。

 それを見つめながら、俺は――

「ジュドぉぉっ! この大逆の反逆者がぁっ! 痴れものがあぁぁっ! その玉座はっ! デスニアさまのっ! いやっ! このオレさまのっ! 貴様などにぃぃぃっっ!」

「くくっ……! 上出来だ……! バーオネラル……!」

 ――玉座に悠々と頬杖をついたまま、心の底からの満足と共に凶悪に口の端をつり上げた。
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