四天王最弱の闇の貴公子に転生した俺は器用貧乏を返上し、無限の手札と敵専用チート級最強最悪スキルで高笑いと共に全てを蹂躙し屈服させ覇道を征く!

ミオニチ

文字の大きさ
42 / 94
第2部 〈世界制覇〉編

42、人類の怨敵。いま両国はその志を一つにする――歪なる野心をもって。

しおりを挟む
 トーリラ王国とフレト王国。

 中央の雄大な湖を境に隣り合う小国同士の長く続く戦争。血で血を洗うようなその戦場の只中。

 だが、突如として出現した俺という第三の脅威に、いまや敵味方の垣根なく戦場全てに次々とざわめきは広がっていった。

「「まま、魔王……ジュドっ……!? 魔王国……エンデっ……!?」」

「「ど、どうなってるんだっ……!? な、なんでダンジョンから、あの国から、出てっ……!?」」

「「ゆ、勇者は何をやって……!? ま、まさか負けたのか……!?」」

「「あ、あれだけ世界各国からの支援を受けておいてか……!?」」

「「や、役立たずめっ! 何が代々世界を救う勇者を輩出する偉大なる国家! クインブレン王国かっ!」」

 ――ふむ? これは意外だな。

 とてもではないが俺にとって聞き逃せない意味深な情報が幾つも出てきたぞ。

 まさか、末端の兵士がこれほどの情報を持っているとは……いや、か?

 永らく触れることすら禁忌とされてきたダンジョン内の聖なる女神像セーブポイント同様、俺たち魔族と魔物のみがいままで知ることのなかった。

 ――おそらくは何らかの意図により知らないことに疑問を持つことすらできなかった世界の仕組みがあったということか。

 あらためて考えてみれば、この不自然極まりない構図。

 世界を手中に収めんとする一大勢力の権力者たる魔王と、勇者といういかに力があろうともたかだか一個人にすぎないものとの戦いを成立するための……!

 だが、この兵士たちの慌てぶり。どうやら期せずしてそのくびきはいまや解き放たれたと見える。

 根拠は、ある。なぜなら、全ての人類の希望たるあの太陽のような少女、勇者アリューシャは、すでに……!
 
「う、狼狽えるなっ! それでも貴様ら、栄えあるトーリラ王国の兵士かぁっ!」

「そうだっ! 栄えあるフレト王国の兵士たちよっ! 恐れることはないっ!」

 両国の指揮官らしき壮年の男二人。

 それぞれに意匠は違えど等しく他の兵士たちよりも豪奢な鎧を身につけ、両国の国旗を持った兵士を含めた側近を従えた男たちが先ほどから使用していた拡声魔道具を手にざわめく兵士たちにがなり立てる。

「見ろっ! いかに強大な魔力を持つ魔族とはいえ、相手はたった二人!」

「そうだっ! 大してこちらは両国あわせて総勢二万の勇壮なる精兵っ! 負ける道理はないっ!」

「それに考えてもみよっ! ここで我ら二国がこの魔王を名乗る魔族を討ち果たせば、クインブレン王国の擁する勇者など不要と各国に示すことができる!」

「そうなればっ! 隣国でありながら、いまはあの全世界から不可侵を約束された忌々しい女王の治める国家の広大な領土を切り取ることも可能っ!」

「そうだっ! それが叶えば、小国同士でこんな小さな土地を奪い合う必要もないっ!」

 その際限なく過熱していくトーリラ王国とフレト王国の指揮官たちのもの言いに、両国の兵士たちも敵味方の垣根なくざわめき出す。

 ――先ほどまでとは違い高揚し、まるで熱に浮かされたように。

「「って、てことは……な、長く続いてきた、この不毛な戦争が……終わる……!?」」

「「い、いまオレたちが……両国同士で力を合わせて、この魔王を名乗る魔族たちを……倒せばっ……!?」」

「そうだっ! トーリラの、そしてフレトの兵士……いや、たちよっ! いまこそその手に武器をとれっ!」

「これは、天におわす我らが偉大なる聖なる女神の天啓であるっ! いまは人間同士で争いあっている場合ではないっ!」

「ノコノコとこの戦場に現れてきた我ら人類の怨敵であるよこしまなる魔族の王! 魔王を討ち果たし!」

「そして、それを足がかりに永らく勇者などという偽物の希望で我らをたばかり続けてきたあの忌々しいクインブレン王国にも正義の鉄槌を下すのだっ!」

「「真に我らこそが! 聖なる女神に天啓を受けしものとしてっ! いまこそ征けっ! その力を示せっ! 勇者たちよっ!」」

『『おおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!』』

 ――それはまるで、地鳴り。

 いまや完全にその志を一つにした両国総勢約二万の兵士たちが怒涛の如く人類の怨敵と不名誉なレッテルを貼られた魔族、俺とデスニアに殺到してきた。

 結局は、その先にはまた別の国に侵略するという――誰よりも心優しい本当の勇者アリューシャとは似ても似つかない歪なる野心をもって。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

処理中です...