四天王最弱の闇の貴公子に転生した俺は器用貧乏を返上し、無限の手札と敵専用チート級最強最悪スキルで高笑いと共に全てを蹂躙し屈服させ覇道を征く!

ミオニチ

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第2部 〈世界制覇〉編

84、決着。永世皇帝ネスカリシュオ。――一つの問いと、その答え。

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「一つ問おう。永世皇帝ネスカリシュオ。何故、おまえは国母を代替わりさせない?」

 その唐突とも言える俺の問いに、少年帝は何の反応も示さない。

 ただ静かにその翠の瞳で俺をじっと見つめている。

 ――まるで、全ての反応を意識的に抑え込んだように。

「先程おまえは言っていたな? 永く生きれば生きるほどに、その体も精神も劣化し続ける、と。ここにいる俺とデスニアとアリューシャが会戦で倒した他の四大将帝三人を道化と嘲笑し、引き合いに出して」

 名前を告げると同時に、ちらと二人に目を向ければ、油断なく目の前の敵を見据えたままだった。

 それを頼もしく思い、俺はうなずく。

 それから、俺は静かに佇み微笑み続けている桃髪の美女に目を向ける。

「ならば、すでに千年を生きるこの国母将帝マリアリテレザこそが最も劣化しているはず。永世皇帝ネスカリシュオ。おまえが言うように、この国母――いや、がただの生体禁術式。ただおまえの寵愛を受け、ただおまえを産むための道具にすぎないのならば、同じように定期的に同じ人間を産み直させ代替わりさせればいいはず。いや、むしろ積極的にそうすべきだろう? 生きている限り劣化し続けるのだから……!」

「………………貴様。何が、言いたい」

 返された永世皇帝ネスカリシュオの言葉には、何の感情もこもっていない。

 ――そう。長い長い沈黙の果てに、まるでやはり、全ての感情を押し殺しでもしたかのように。

「もう一度問おう。本当にいいのか? 永世皇帝ネスカリシュオ。その国母よりこの俺が全ての魔力を奪いつくし、国母将帝マリアリテレザを永久に喪失うしなわせても……!」

 それは、先ほどと同じ問い。そして今度は、そこにさらにこう重ねる。

「自分自身を平気で代替わりさせるおまえが、たとえ同じ人間を輪廻転生させ、代替わりさせたとしてもなお代えの利かない、おまえにとって唯一無二の存在! 千年を生き続け、その間に劣化し続けたその体と精神をその身に溜め込んだ膨大な魔力で無理やりに維持し続ける歪な在り方となっても、それでもなお!」

 まっすぐに国母将帝マリアリテレザを指差してから、それを横に、永世皇帝ネスカリシュオへと、繋ぐ。

「永世皇帝ネスカリシュオ! おまえが永久に愛し、その傍らに永久に居させ続けると誓った、おまえにとってこの世界で唯一自分以上に価値を見出せる、唯一無二の愛する女をこの俺がおまえから奪っても!」

 俺の叫びに、少年帝の感情は動かない。ただ静かにその翠の瞳で俺を見つめている。

 そして、長い長い沈黙の果て。

 静かに、いわおのように固く引き結ばれた、永世皇帝ネスカリシュオの唇が動いた。

「……………………………………………一つ、問う」

「何だ? 永世皇帝ネスカリシュオ」

「……貴公は、本当にできると思うのか? 余から、この千年、国母将帝マリアリテレザに溜め込ませた全ての魔力を奪うことが?」

「ふ。もちろん、できる。……と言いたいところだが、先ほどの打ち合い……実際は精々が半分といった所か」

「……ならば」

「そう。は、半分だ。だが残り半分を俺たちは必ずもう一度奪いに来る……!」

「……余が、貴公らを逃がすとでも?」

「その答えは、すでにおまえはその身をもって知っているはずだ。そのために、俺はこうしてデスニアとアリューシャを。この俺の信頼し、最も頼りにする右腕と左腕をここに連れてきたのだから……!」

 俺は厳かに、ぶわりと漆黒のマントと両手を広げる。

 見なくても、わかる。少年帝のその翠の瞳が見つめる先には。

 俺の右では、蒼の魔力をまとった紫の瞳の輝きが。

 俺の左では、金と黒の二条の光を左右に携えた青い瞳の輝きが、まっすぐに見つめ返しているのが。

 ――すでにそれは、半ば儀式めいたやりとりと言えた。

 その始まりも、過程も、顛末も全てわかりきっていながら、なお必要とされる――勝敗を決するための儀式。

「………………………………………………わかった。余の、負けでよい。いまをもって、余は退位する。魔王ジュド。エリミタリア永世帝国は、いまより貴公の好きにするがいい。」

「いいだろう。その敗北、そしてその空の玉座、確かにこの俺が受け取った。永世皇帝ネスカリシュオ……!」

 そうして、一つ深く息を吐き、金髪の少年、永世皇帝ネスカリシュオは、自らの敗北を宣言した。

 千年続いたエリミタリア永世帝国を治めた最後の君主としての矜持を保ち、何ら感情を見せることなく、静かに、厳かに、穏やかに。

 ――ある意味では、まるで、永い間。

 その肩に背負い続けていた荷物を、そっと下ろしたかのように。
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