憧れの先輩の結婚式からお持ち帰りされました

東院さち

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出会い 4 視点変更あり

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 晴天、そうか、天も祝福しているのか、天使の結婚式を――。

「クロード、お前突然帰ってきたかと思ったら、結婚式の招待状を寄越せだって? 俺はどうするんだよ、職場の同僚の結婚式をすっぽかせるか」
「うるさい。これでどうだ。希少価値の高いブラストワインだ」
 
 ゴクリと喉の奥が鳴った音が聞こえた。とっておきのワインだ。

「おま……、こんなもの持ってたのか――」
「いいからくれ」
「……わかった。だが、変なことするなよ。新郎は真面目だからな」
「……多分……」
「多分って――」
「うるさい。ワインを割るぞ」

 投げるマネをすると、やめてくれーと悲鳴を上げて奪われた。

「顔を見に行くだけだ」

 そそくさと去って行く友人の背中に呟いた。明日は、妹の結婚式なのだ。

 私の生まれは隣りの国だ。父が大使としてリン国へ出向していた時に王族に連なる姫と結婚した。結婚生活は五年ほど。父はモテた。顔も身体もいい。性に緩いところを除けば性格も悪くない。性に緩いというか断るのが面倒とかそんなことを言っていた。浮気の相手が悪かった。母の弟だったのだ。母の家系は美形好きを公言していた。母の弟はそんな義兄に恋慕して、父を酔い潰して乗ったらしい。何度目か数えるのも嫌になるほどの浮気にさすがの母も切れて離縁した。父に似ているからという理由で私も母に拒否されて、父と一緒にこの国に帰ってきた。母はその後、父の後任としてやってきた父の叔父である大使を気に入って結婚した。妹ができたと聞いた。
 母もどうかと思う。

 妹の話を聞いて、情報を集めた。姿絵も何枚か入手した。さすが侯爵家、金は沸くほどあるので金に糸目はつけない。妹の名はリオナ。
 リオナは天使のように可愛かった。私と同じ金の髪、私と同じ緑の瞳。姿絵の向こうから微笑む顔に何度キスしただろう。何度も会いたいと母に手紙を送ったが受け入れてもらえることはなかった。
 十八になり、私は意を決した。この国にいる限り、リオナに会えない。外交官になろうと。父の部下になるなんて正直嫌でしかたなかったが、背に腹はかえられない。顔だけでなく頭も良かったので問題なく出世した。元々侯爵家の跡取りだ。だれも私の行く手を阻む者はいない。しかし、大使として出向するには五年近くかかった。それでも前代未聞の異例の早さだと言われた。
 これで堂々と母の国、リオナに会いにいけると意気揚々と馬を駆った。
 ところが、リン国にたどり着くと母と妹はいなかった。私が来たために、国に帰った大使の夫と私の国に行ってしまったのだ。引き継ぎは優秀な次官がしてくれた。
 すっかりポカをしてしまった。そうだ、何故考えが及ばなかったんだろう。
 そして、私は任期である三年を前に、国に帰ってきたのである。後、一ヶ月ほどあったけれど、嫌な予感がしたのだ。
 帰ってきた私に父が言った。

「お前には関係ないが、妹が明日結婚するそうだ」

 帰ってきたばかりで疲れ切っている私を父の何気ない一言が切り裂いた。神はいない。そう知った。
 友人に招待状を譲ってもらって、髪を染め、カラーコンタクトを入れて出席した。
 涙なしにはいられない。生まれてずっと会いたかった可愛いリオナ。真っ白なドレスが似合っている。隣の男は私ほどじゃないが背も高く、真面目そうな顔で花嫁にキスをした。

 涙が止まらない。鼻水もとまらない。もう既に自分のハンカチはドロドロだ。

「あんた、みっともないから早く泣き止んだほうがいいよ」

 隣の席の男が言った。みっともない? この私が? 詩人が詩を捧げるために行列すると言われている私に?
 チラッと見れば、男の目にもうっすらと涙のようなものが見えた。

「親切だな。あんたもハンカチいるんじゃないの?」

 自分の涙を拭けばいいのにと思いながら、ありがたく顔を拭かせてもらった。

「俺は別に。ただ、職場で一番身分が高くて性格のいいやつがいなくなったなってだけで……」

 新郎め! 真面目な顔して随分人気があるじゃないか。
 どんなやつに好かれているのか気になって、隣の男が酒を煽る姿も確かめてみた。

 ゴクリと音がした。自分の喉の音だと気づかなかった。

「あんたは彼女の方に未練があるみたいだな。ずっと見てたし」

 酒があまり強くないのか頬が赤く染まっていた。柔らかそうな茶色い髪のせいか生真面目そうに見えるが、笑うと可愛いだろう。可愛い? 男が? ありえない。
 紫かピンクに見える瞳は希少価値の高いピンクダイアモンドのように煌めいて見えた。

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