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出会い 5 視点変更あり
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「なぁ、飲もうぜ。俺の名前はアンリだ。あんたは?」
アンリ! なんて素晴らしい響きだ。アンリ、この先何万回でも呼ぶつもりだ。
「クロード・リス――」
「いいよ、名前だけで」
結婚相手は身分が高い方がいいと思っているみたいなことを言っておいて、家名を聞かないとは。私ほどの相手なら、家名など関係ないということだろうか。
「そうだな。名前さえあれば――」
抱き合える。
よし、酒を飲まそう。ちなみに私は輪っかだ。呑んでも呑んでも酔いもしない。父はそんなに強くないから母の家系だろう。友人が泣いていたな。お前なんか色のついた水でものんどけって。失礼なやつだ。まぁ招待状を融通してくれたからいい。アンリと私のキューピッドだ。
「お前も飲めよ」
早く名前を呼んでもらいたくて訂正した。
「クロードだ」
「クロードっていうか、クロでいい。あんた昔飼ってた犬に似てる」
多分、アンリは既に酔っている。
「ちょっと待て、私が犬だと」
「クロは格好いいんだぞ!」
犬か。アンリの犬になるのも悪くない。アンリが自慢できる番犬になってやろう。
アンリは犬のことが大好きだったんだろう。クロと呼ぶ目が優しい。
二杯呑んだところで、アンリが潰れた。早々に抱き上げてその場を後にした。母の視線が刺さっている気がするけれど、今はそれどころじゃない。
「あれ、アンリ帰るのか? 大丈夫か?」
知り合いだろう男に尋ねられて、半分寝ていたアンリがニコッと笑った。
「うん、クロがいるから――」
その相手もアンリが犬のクロのことを言っているとは思わない。
「そうか、明日は休みだけど羽目を外しすぎるなよ」
と馬車まで見送ってくれたので誰にも誰何されることなく無事にお持ち帰りができた。
真っ新な身体は瑞々しく、乾いた心を潤してくれた。
「クロくすぐったい」
なんて言われたら、一生犬でいいかと思ってしまう。
激しく甘い夜を越えて、朝から散々アンリを味わった。一度で味わい尽くすことのできない甘味のようだ。気絶同然に眠りについたアンリの身体を拭いて眠っていると無粋なメッセージが届けられた。
『さっさと来なさい』
ちなみに三通目だそうだ。昨日はドアを叩く音にも気づかなかった。母の呼び出し、そして感動の再会(?)を経て、やはり妹には会わせてもらえなかった。
『あなたの顔はやばいのよ。うちの家系のド直球の好みなの。妹の道を踏み外させたくなければ会わないでちょうだい』
酷い、けれど諦めもついた。運命の出会いがあったから、我慢できる。妹は天使だが、アンリは女神だ! いや、神か。
急いで帰ったのにアンリはいなかった。まさか帰ったのかと慌てて廊下を走り、柵を跳び越えて馬車付きに辿り着いた。
アンリは驚いたように私を見つめた。色々言いたいことも突き詰めたいこともあったがアンリの一言で吹き飛んだ。
「パンケーキ美味しかったよ」
昨日、寝物語にここのパンケーキの美味しさを語っておいて良かった。それがなければ、きっと間に合わなかっただろう。
実家に帰るというアンリにキスをして満足した。始まったばかりなのだ。
逃がさない――。
後ろ姿を眺めてそう決めた。
「お客様、ホテルに戻られますか?」
「いいや、リスホード侯爵家へ向かってくれたまえ」
今から練らねばならない。いかにしてアンリを手に入れるか。
クロード・リスホード、齢二十六才にして隣国の大使を務めた男は明日からアンリ・ランティスの通う王宮で外務官を務めることになっている。
アンリ! なんて素晴らしい響きだ。アンリ、この先何万回でも呼ぶつもりだ。
「クロード・リス――」
「いいよ、名前だけで」
結婚相手は身分が高い方がいいと思っているみたいなことを言っておいて、家名を聞かないとは。私ほどの相手なら、家名など関係ないということだろうか。
「そうだな。名前さえあれば――」
抱き合える。
よし、酒を飲まそう。ちなみに私は輪っかだ。呑んでも呑んでも酔いもしない。父はそんなに強くないから母の家系だろう。友人が泣いていたな。お前なんか色のついた水でものんどけって。失礼なやつだ。まぁ招待状を融通してくれたからいい。アンリと私のキューピッドだ。
「お前も飲めよ」
早く名前を呼んでもらいたくて訂正した。
「クロードだ」
「クロードっていうか、クロでいい。あんた昔飼ってた犬に似てる」
多分、アンリは既に酔っている。
「ちょっと待て、私が犬だと」
「クロは格好いいんだぞ!」
犬か。アンリの犬になるのも悪くない。アンリが自慢できる番犬になってやろう。
アンリは犬のことが大好きだったんだろう。クロと呼ぶ目が優しい。
二杯呑んだところで、アンリが潰れた。早々に抱き上げてその場を後にした。母の視線が刺さっている気がするけれど、今はそれどころじゃない。
「あれ、アンリ帰るのか? 大丈夫か?」
知り合いだろう男に尋ねられて、半分寝ていたアンリがニコッと笑った。
「うん、クロがいるから――」
その相手もアンリが犬のクロのことを言っているとは思わない。
「そうか、明日は休みだけど羽目を外しすぎるなよ」
と馬車まで見送ってくれたので誰にも誰何されることなく無事にお持ち帰りができた。
真っ新な身体は瑞々しく、乾いた心を潤してくれた。
「クロくすぐったい」
なんて言われたら、一生犬でいいかと思ってしまう。
激しく甘い夜を越えて、朝から散々アンリを味わった。一度で味わい尽くすことのできない甘味のようだ。気絶同然に眠りについたアンリの身体を拭いて眠っていると無粋なメッセージが届けられた。
『さっさと来なさい』
ちなみに三通目だそうだ。昨日はドアを叩く音にも気づかなかった。母の呼び出し、そして感動の再会(?)を経て、やはり妹には会わせてもらえなかった。
『あなたの顔はやばいのよ。うちの家系のド直球の好みなの。妹の道を踏み外させたくなければ会わないでちょうだい』
酷い、けれど諦めもついた。運命の出会いがあったから、我慢できる。妹は天使だが、アンリは女神だ! いや、神か。
急いで帰ったのにアンリはいなかった。まさか帰ったのかと慌てて廊下を走り、柵を跳び越えて馬車付きに辿り着いた。
アンリは驚いたように私を見つめた。色々言いたいことも突き詰めたいこともあったがアンリの一言で吹き飛んだ。
「パンケーキ美味しかったよ」
昨日、寝物語にここのパンケーキの美味しさを語っておいて良かった。それがなければ、きっと間に合わなかっただろう。
実家に帰るというアンリにキスをして満足した。始まったばかりなのだ。
逃がさない――。
後ろ姿を眺めてそう決めた。
「お客様、ホテルに戻られますか?」
「いいや、リスホード侯爵家へ向かってくれたまえ」
今から練らねばならない。いかにしてアンリを手に入れるか。
クロード・リスホード、齢二十六才にして隣国の大使を務めた男は明日からアンリ・ランティスの通う王宮で外務官を務めることになっている。
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