憧れの先輩の結婚式からお持ち帰りされました

東院さち

文字の大きさ
8 / 53

職場変更に異議あり 3

しおりを挟む
 「クロード様の仕事のスケジュール管理があなたの仕事になります。慣れていないでしょうから、しばらく私、ビアンカが補佐につきます」

 最初あった女の人とは違って値踏みもしないし見下げもせず、ビアンカがアンリに手を出した。その手を握って、「アンリです。よろしくおねがいします」と挨拶した。

「私は外務長官の補佐の一人なんです。外務長官には息子の嫁だからしっかり教えてやってくれって言われましたけど、そうなんですか?」

 ビアンカの興味深そうな笑顔に一瞬何を言われているのかわからなくなった。が、慌てて訂正をした。変な噂がまわっては困る。

「よよよ、嫁っ? それ、俺のことじゃありませんよ。ははっ、外務長官は面白い方ですね」 
「そういう冗談を言う方じゃないんですけどね。そうなんですか」
「そうですよ」
「残念~」

 何が残念かはわからないけれど、どうせ賭けでもされているんだろう。財務でもよくやるんだ。『新人はいつまでもつか』あのイケメンに『いつ食われるか』なんて下世話なものまで。もう食われてるけど。

「クロード様は帰ってきてすぐなのでそれほど仕事が入っているわけではありません。大使はおやめになると書類提出して受理されているので、リン国担当になられると思います。今までは外務長官が担当されていたのです。とりあえず、アンリはリン国について知ることが一番かと思います。それはクロード様が教えてくれるはずなので、私は大使として来ているリン国の要人について説明しますね」

 リン国は一番仲のいい国で、ここ何代も戦争になっていない。海がある貿易を主としているこの国とは穀物のやりとりが一番多いはずだ。

「今の大使はとてもイケメンが好きなんです。ですからクロード様なら簡単に転がせると思いますが、めちゃくちゃ狙われているので、そこは頑張って守ってください」
「え、守るって……俺強くないですよ」
 
 自慢にならないが喧嘩をしたこともない。女姉妹が三人いて、簡単にいうとしもべ状態だ。

「大使は女性なので腕力を使ってくることはないと思いますが、王宮に泊まる際の就寝時は必ず同じ部屋に寝泊まりしてください」
「それは……、確認だけして鍵をかければいいのでは」
「忍んでこないとも限りません」
「いや、そこは訴えましょうよ」

 怖い大使じゃないか。

「訴えて、実はクロード様が望んだことだと言われて立証できるとは限りませんから」
「今までリン国の大使をしてたクロード……様はどうしてたの? 会ったりしてたでしょ」
「今までも補佐官が一緒の部屋にいたと思いますよ」

 補佐官がそんなことまでやらないといけないなんて、見くびってたよ。

「できるだけ側にいてください。それが一番安全なので」
「護衛をつけた方がいいよ」
「護衛はついているのです。けれど抑止力になるので是非お願いします」

 イヤイヤながら頷いた。仕事ならばしかたがない。

「素直な方ですね」
「え、嘘なの?」
「いえ、もっと嫌がられるかと思っていました」

 ビアンカが笑いながら俺に書類を渡す。パラパラをめくると、リン国の要人と家族、大使館の人間について書かれていた。

「嫌がってないように見えたなら、その眼鏡新調したほうがいいよ」
「まぁ、そんなイヤミを言えるなんて――。鍛えがいがありますこと」

 書類に気をとられて、口を滑らせてしまった。弟の勘がそう言う。

「すみません、眼鏡、お似合いです。鍛えなくていいです……」

 クスクスと笑いながらビアンカが忠告してくれる。

「飲み物には気をつけてください。変な味がしたら絶対に飲まないでくださいね」
「毒……ですか?」
「いえ、媚薬とか平気で盛ってくるらしいので」
「やっぱり大使変更してもらってください~」

 情けないけれど、俺はビアンカに泣きをいれた。が、もちろん取り合ってくれなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

【完結】顔だけと言われた騎士は大成を誓う

凪瀬夜霧
BL
「顔だけだ」と笑われても、俺は本気で騎士になりたかった。 傷だらけの努力の末にたどり着いた第三騎士団。 そこで出会った団長・ルークは、初めて“顔以外の俺”を見てくれた人だった。 不器用に愛を拒む騎士と、そんな彼を優しく包む団長。 甘くてまっすぐな、異世界騎士BLファンタジー。

処理中です...