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家庭の事情がありまして1
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昼は時間があるといいながらもクロードはブランカを連れて出かけていった。まだ外務のことについてほとんどわからない俺では、付いていっても何もできないどころか邪魔になる。
「昼だな」
話次第では食事はとれないかもしれないが、おやつタイムがあるので大丈夫だろうと部屋を後にした。
外務の建物の側で込み入った話をするのもなんなので、外に近い中庭を指定した。テーブルはないが、芝生があって植え込みも沢山あるので秘密の話をするのにいいと聞いたのだ。
庭の入り口にケヴィンが立っていた。仕事が終わっているのでラフな装いだが似合っている。
「アンリ!」
茶色の髪の毛はさっぱりと短髪で、もはや昔の面影はない。少し悔しいが、こればかりは仕方ない。ケヴィンも努力していて、騎士団では有望株だとミッチェルが言っていた。
「ケヴィン、こっちだ」
「え、アンリそっちは――」
ケヴィンは言いよどみながら意を決したような顔で「いや、行こう」と俺の手を引っ張った。俺が真剣な話をするつもりなのが伝わったのだろう。さすが幼なじみだ。
「ここでいいかな?」
随分奥まったところに来たけれど、誰にも話を聞かれたくないのでちょうどいい。
「ああ、ケヴィン。聞きたいことがある」
「何でも聞いてくれ。アンリがオレのことを聞きたいなんて珍しいな」
芝生で隣に座るとケヴィンの方からいい匂いがした。こいつ、香水なんて使っているのか。一つしか違わないのに、ケヴィンに差をつけられたような気がした。
「いい匂いだな」
「匂い?」
ケヴィンがうわずった声を上げる。変なやつだ。
「何か香辛料みたいな匂いがする。首筋につけるのか」
「ひゃっ! アンリ?」
美味しそうな匂いだ。うーん、肉料理に使うやつに似てる。シャツをグイッと引っ張って匂いを確認すると、ケヴィンが変な声を出した。
「ア、アンリがいいなら……オレ」
ハッと気がつくと空が見えた。次いで、近くに空よりも明るい青。
「……ん? ケヴィ……ン……あ……」
つたないキス、をされていた。身体を芝生に押しつけられて、大きな身体から身を捩って逃げることもできない。
「アンリっ、何か見ないうちに色っぽくなって――、好き。好きなんだ――」
「何を――、お前っ!」
好き? 何を言ってるんだ。お前が好きなのはミッチェルじゃと言いたいのに混乱した頭では口を開け閉めしかできなかった。
「アンリ、昔から好きだった」
「やめっ!」
もう一度降りてきた唇を避けながら『好き』という言葉が頭の中に反響する。
「アンリ、大す――」
「公共の場で乱暴か……ゲスがっ」
冷たい声が聞こえた瞬間、俺の上にのしかかっていたケヴィンがフワッと持ち上がって振り投げられた。ケヴィンはお尻をついて転がった。
「……ケヴィン!」
思わず大丈夫かと声をかけようとしてケヴィンを放り投げた人物がクロードだと気づいた。
「何をする――」
そう言って、ケヴィンが固まる。キラキラ王子の登場に本当に驚いているようだ。
「それはこちらの台詞だ。こんな場所で押し倒すだと。幼なじみだと聞いていたが、節操のない男だ」
「クロード! 様! なんでここに――」
思わずクロードと呼んでしまって、だめだだめだと敬称をつけた。
「ビアンカからアンリに人が少ない、話を聞かれにくい場所を聞かれたから恋人達の庭を教えたって聞いたら来ずにはいられないだろう!」
「恋人……」
「私と来るんだと思ったそうだ」
「クロードと……、なんで?」
ここが恋人の庭だというのも意味がわからないが、クロードと来るというのも意味がわからない。
「アンリ、この人……は外務の……」
「そう、俺の上司だ」
呆気にとられていたケヴィンもクロードのことがわかったようだ。
「上司がなんで……こんなところに」
もっともだ。
「ケヴィン、俺はお前とミッチェルが想い合ってると思ってた! なのになんで俺にキスなんか」
とりあえずクロードのことは置いておくことにした。また二人きりで会って襲われたら目もあてられない。
「ミッチェルのことは妹みたいに思ってる。オレが昔から好きだったのはアンリだけだよ。アンリはでも……オレのことそんな風に思ってないのわかってたから、幼なじみとして側にいたんだ。でも、恋人の森に誘ってくれたということは……」
「いや、知らなかった。城の中だぞ、仕事場で恋人の森って何を考えてるんだよ」
まぁ、そういうのが好きそうな元上司とかいるからわからないでもないけれど。
「アンリ……。オレは諦めないからっ、キスしてわかったんだ。やっぱりお前はオレの大事な……っ」
わからん。キスしてわかるってなんだ?
「ンッ! あ……アッ……ン」
グイッと手首を引っ張られてクロードの方に倒れた。そのまま抱きしめられて、唇を奪われた。手で退けようとして手を握られ、脇腹を擦った手の感触でゾクゾクと快楽の前の寒気を覚えた。その瞬間、クロードの舌が俺の唇をこじ開けて中に侵入を果たす。
昨日のことをまだ身体は覚えている。顎が怠くなるまでしたキス、キスといいながらされたフェラ。でも中途半端に終わったからか燠火が身体の奥でくすぶっていたように尻の奥が疼いた。
「キスっていうのはこういうものだが。さっきのあれがそうだと?」
顔を上げられなくて、クロードの首筋に顔を押しつけた。
「ア、アンリ!」
「ごめん……、ケヴィンのことは妹の彼氏としか思ってない」
「アンリ……、そっか。ごめん、勘違いした。ミッチェルのことは本当に妹としか思えないんだ」
ケヴィンがミッチェルのことを弄んだとは思っていない。ただ、気が合うし釣り合いもとれているから周囲が勝手に盛り上がってしまっただけなんだろう。
「わかった。悪いけど、クロードのことは内緒にしてくれ。ミッチェルにも」
「うん、でもアンリ。クロードさんのこと好きなのか? 心配で」
好き? クロードのことを? そんなこと思ったこともない。酔った勢いで寝ただけの男だ。でもそんなことをケヴィンに言ったら元の木阿弥だ。
「君に心配される必要はない。行け――」
命令に慣れた男の声に、騎士団で命令されることに慣れた男は抗えなかった。何度か振り返りながら去って行った。
「昼だな」
話次第では食事はとれないかもしれないが、おやつタイムがあるので大丈夫だろうと部屋を後にした。
外務の建物の側で込み入った話をするのもなんなので、外に近い中庭を指定した。テーブルはないが、芝生があって植え込みも沢山あるので秘密の話をするのにいいと聞いたのだ。
庭の入り口にケヴィンが立っていた。仕事が終わっているのでラフな装いだが似合っている。
「アンリ!」
茶色の髪の毛はさっぱりと短髪で、もはや昔の面影はない。少し悔しいが、こればかりは仕方ない。ケヴィンも努力していて、騎士団では有望株だとミッチェルが言っていた。
「ケヴィン、こっちだ」
「え、アンリそっちは――」
ケヴィンは言いよどみながら意を決したような顔で「いや、行こう」と俺の手を引っ張った。俺が真剣な話をするつもりなのが伝わったのだろう。さすが幼なじみだ。
「ここでいいかな?」
随分奥まったところに来たけれど、誰にも話を聞かれたくないのでちょうどいい。
「ああ、ケヴィン。聞きたいことがある」
「何でも聞いてくれ。アンリがオレのことを聞きたいなんて珍しいな」
芝生で隣に座るとケヴィンの方からいい匂いがした。こいつ、香水なんて使っているのか。一つしか違わないのに、ケヴィンに差をつけられたような気がした。
「いい匂いだな」
「匂い?」
ケヴィンがうわずった声を上げる。変なやつだ。
「何か香辛料みたいな匂いがする。首筋につけるのか」
「ひゃっ! アンリ?」
美味しそうな匂いだ。うーん、肉料理に使うやつに似てる。シャツをグイッと引っ張って匂いを確認すると、ケヴィンが変な声を出した。
「ア、アンリがいいなら……オレ」
ハッと気がつくと空が見えた。次いで、近くに空よりも明るい青。
「……ん? ケヴィ……ン……あ……」
つたないキス、をされていた。身体を芝生に押しつけられて、大きな身体から身を捩って逃げることもできない。
「アンリっ、何か見ないうちに色っぽくなって――、好き。好きなんだ――」
「何を――、お前っ!」
好き? 何を言ってるんだ。お前が好きなのはミッチェルじゃと言いたいのに混乱した頭では口を開け閉めしかできなかった。
「アンリ、昔から好きだった」
「やめっ!」
もう一度降りてきた唇を避けながら『好き』という言葉が頭の中に反響する。
「アンリ、大す――」
「公共の場で乱暴か……ゲスがっ」
冷たい声が聞こえた瞬間、俺の上にのしかかっていたケヴィンがフワッと持ち上がって振り投げられた。ケヴィンはお尻をついて転がった。
「……ケヴィン!」
思わず大丈夫かと声をかけようとしてケヴィンを放り投げた人物がクロードだと気づいた。
「何をする――」
そう言って、ケヴィンが固まる。キラキラ王子の登場に本当に驚いているようだ。
「それはこちらの台詞だ。こんな場所で押し倒すだと。幼なじみだと聞いていたが、節操のない男だ」
「クロード! 様! なんでここに――」
思わずクロードと呼んでしまって、だめだだめだと敬称をつけた。
「ビアンカからアンリに人が少ない、話を聞かれにくい場所を聞かれたから恋人達の庭を教えたって聞いたら来ずにはいられないだろう!」
「恋人……」
「私と来るんだと思ったそうだ」
「クロードと……、なんで?」
ここが恋人の庭だというのも意味がわからないが、クロードと来るというのも意味がわからない。
「アンリ、この人……は外務の……」
「そう、俺の上司だ」
呆気にとられていたケヴィンもクロードのことがわかったようだ。
「上司がなんで……こんなところに」
もっともだ。
「ケヴィン、俺はお前とミッチェルが想い合ってると思ってた! なのになんで俺にキスなんか」
とりあえずクロードのことは置いておくことにした。また二人きりで会って襲われたら目もあてられない。
「ミッチェルのことは妹みたいに思ってる。オレが昔から好きだったのはアンリだけだよ。アンリはでも……オレのことそんな風に思ってないのわかってたから、幼なじみとして側にいたんだ。でも、恋人の森に誘ってくれたということは……」
「いや、知らなかった。城の中だぞ、仕事場で恋人の森って何を考えてるんだよ」
まぁ、そういうのが好きそうな元上司とかいるからわからないでもないけれど。
「アンリ……。オレは諦めないからっ、キスしてわかったんだ。やっぱりお前はオレの大事な……っ」
わからん。キスしてわかるってなんだ?
「ンッ! あ……アッ……ン」
グイッと手首を引っ張られてクロードの方に倒れた。そのまま抱きしめられて、唇を奪われた。手で退けようとして手を握られ、脇腹を擦った手の感触でゾクゾクと快楽の前の寒気を覚えた。その瞬間、クロードの舌が俺の唇をこじ開けて中に侵入を果たす。
昨日のことをまだ身体は覚えている。顎が怠くなるまでしたキス、キスといいながらされたフェラ。でも中途半端に終わったからか燠火が身体の奥でくすぶっていたように尻の奥が疼いた。
「キスっていうのはこういうものだが。さっきのあれがそうだと?」
顔を上げられなくて、クロードの首筋に顔を押しつけた。
「ア、アンリ!」
「ごめん……、ケヴィンのことは妹の彼氏としか思ってない」
「アンリ……、そっか。ごめん、勘違いした。ミッチェルのことは本当に妹としか思えないんだ」
ケヴィンがミッチェルのことを弄んだとは思っていない。ただ、気が合うし釣り合いもとれているから周囲が勝手に盛り上がってしまっただけなんだろう。
「わかった。悪いけど、クロードのことは内緒にしてくれ。ミッチェルにも」
「うん、でもアンリ。クロードさんのこと好きなのか? 心配で」
好き? クロードのことを? そんなこと思ったこともない。酔った勢いで寝ただけの男だ。でもそんなことをケヴィンに言ったら元の木阿弥だ。
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