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苦しいのはなぜ?[月の視点]

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目を覚ますと矢吹さんが、居た。

何故、この場所にきたのかわからなかった。

矢吹さんに、お金を渡すと言われた。

胸がチクチク傷んだ。

追いかけて、真実を聞こうと思った。

気持ちを言われた時、嬉しいよりも嫌悪感が体を駆け巡った。

俺は、家に戻ってきていた。

シャワーを浴びて、ベッドに横になった。

いつの間にか、眠っていた。

矢吹さん

帰ってきてるかも知れないと、飛び起きた。

なぜ?

飛び起きたのだろうか?

コンコン

コンコン

ノックしても矢吹さんの返事は、ない。

ガチャ…

失礼します。

綺麗な部屋だな。

指輪、落ちてる。

ズキンズキン

何だろう?

苦しい。

本当に、仮装パーティーだったのだろうか?

矢吹さん泣いていたよな。

何で、なんも思い出せないんだよ。

ノート?

[星(ひかる)にプロポーズをした。時計気に入ってくれて嬉しい。]

[手にはいらない幸せの方が多い、それでも傍にいてあげたいと思ってしまう。泣かせたくない]

矢吹さんの彼氏のノートなのか?

矢吹さんは、男が好きなんだよな。

お金が欲しいから俺は、矢吹さんの傍にいるのか?

ブー、ブー

「はい」

「お前の兄貴だ。」  

「誰?」

「橘宇宙(たちばなそら)だ。」

「何の用?」

「結婚したいと思ってるなら、大事な話がある。明日、月城病院にこい」

「大事な話って?」

「くれば、わかる。夕方までにこいよ。じゃあな」

そう言って、電話は切れた。

兄がいたのか、知らなかった。

[俺は、星(ひかる)がいないと生きていけない。例え、どんな事があっても小さな欠片を拾い集めてでも、必ず星(ひかる)への気持ちに辿り着いてみせるから…。]

愛されていたんだな。

この人に…。

矢吹さん、何で、俺。

あんたの匂い嗅いだら、こんな苦しいんだろうか?

何で、俺を捨てるんだよ。

指輪の箱を開けた。

一つ足りない…。

俺は、這いつくばって指輪を探した。

嫌悪感の正体よりも、確かめたいのは、俺の奥底に眠ってる本当の気持ちだ。

「あった」

指輪を見つけた。

ケースにはめた。

矢吹さん…。

何故か、ノートと指輪を持って、キッチンに行った。

帰ってこないのだろうか?

冷蔵庫からビールを、取り出した。

「あっ、何か…」

ビールを机に置いて、紙とペンを探した。

シャッ、シャッって誰かを描(えが)いた。

「女か?誰だ?」

頭の中に流れた映像で、描(えが)いた。

誰か、検討もつかない。

プシュ

ビールを開けて、飲む。

まだ、雨はやみそうにない。

矢吹さん、風邪ひいてないかな?

矢吹さんの泣きすぎて掠れた声が、頭に響いた。

苦しめたかったわけじゃなかった。

ただ、知りたかった。

なんで、マッチングアプリの人の事を尋ねたのかな?

矢吹さんにやめてって言ってほしかったのか?

言われたら、やめたのか?

何も思い出せない。

栞さんが、そんな顔を自分以外に見せるなと言ったのに…。

俺は、何度も矢吹さんに見せた。

その度に、矢吹さんの目が潤んでいた。

何がしたいんだ、俺は…。

明日、兄に会えばわかるのか?

俺は、いったいどんな人間だったんだ。

バサッ…。

紙とペンをしまいにいったら、何かが落ちた。

写真か…。

矢吹さんと俺か…。

いつ撮ったんだろう?

何枚もある。

誕生日か、クリスマス、栞さんも写ってる。

これは、キスしてんのか?

俺は、矢吹さんの頬にキスをしてる。

って事は、あのノートって俺だったりするのか?

時計って、これか?

写真を持ってきてしまった。

ビールを飲みながら、ノートを捲る。

[星(ひかる)を愛している。一番とかそんな事は、もうどうだってよかった。傍にいてあげたいと思ってる。あの俺を見る目が、堪らなく愛しい。泣かないで欲しい。傷つけたくはない。もしもこの先、俺が星(ひかる)を傷つける存在になるなら…。俺を迷わず、捨ててくれ。]

そのページを広げて、置いた。

兄がいるなら、矢吹さんにお金を借りなくていい。

俺は、12万を机の上に置いた。

立ち上がって、ペンをとった。

さっき描(か)いた絵に、ありがとう、近いうちに出ていきます。と書いた。



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