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拓夢の話3

美沙を好きって言って

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美沙は、俺の頬に手を当てる。

「たっちゃん、美沙を好きって言って」

「美沙、好きだよ」

「嬉しい」

ニコニコ嬉しそうに笑ってる。心は、二度と美沙に戻ることなんてない。俺は、それをわかってる。

「ちょっと眠ったら?疲れただろう?」

「うん、ちょっと寝るね」

「わかった」

「おやすみ」

「おやすみ」

俺は、美沙にキスをした。昔、働いていた先の先輩が不倫していた。その人は、女の人でどうしても彼を落としたかった。だけど、セックスをいくら重ねても彼は自分のものにならないと泣いていた。奥さんより、自分の方が絶対にうまいのにって…。テクニックは、愛を越えないよ!俺は、ベットから降りてキッチンに行く。体の快感を重ねて、体を落とした所で、愛は越えない。
コップに水が溢れる程、注いでから飲んだ。

俺は、凛を抱いてハッキリそれを感じた。そして、今日美沙として、もっとハッキリと感じた。いくら快感を与えた所で、愛は奪えない。結局、先輩も不倫相手と別れた。愛を全て奪える人間などいない。もしも、自分の方が夫や妻より勝ったと思う人間がいたとしたら…。それは、勘違いだ。ただ、相手から一時的に同情を貰えたに過ぎないのだ。それを愛されてると勘違いし、相手に対抗意識を燃やす奴がいる。俺は、そんな愚か者にはなりたくない。
だけど、美沙はきっと愚か者だ。

俺は、またコップに水を入れて飲んだ。スマホを見つめながら、凛に会いたくて堪らなかった。

俺は、昔、セックスだけが恋愛の全てだと勘違いしていた。体を快感で満たせば愛情など容易く手に入ると思っていた。だけど、ある時、違うと気づいた。それは、あの日自分のモノが使えなくなった時に気づいた。セックスは、恋愛の全てではないと…。だから、俺は凛に愛されない。あの子も無理だ。例え、凛をどれだけこの手に抱いて、凛の体が俺から離れないようにしても…。俺は、凛には愛されない。凛がくれるのは、同情だけだ。それをわかっていない、あの子はまだ…。きっと、セックスすれば自分のものになると思ってるんだろうなー。昔、仲良かった奴がそんな話が好きだったのを俺は、思い出した。

「拓夢、エッチうまくなったら!女の人、メロメロになるし!奪えるぜ」

興奮した友人と二人、その手の話を読み漁った。でも、今ならわかる。体の相性なんて、心の相性を越えられない。所詮、体は体でしかない。だから、あの本は嘘つきだ。もし、あれが本当なら俺は美沙を愛してるし。凛にも愛されてなくちゃおかしい。

俺は、立ち上がって冷蔵庫からビールを取り出した。

駄目だ、駄目だ。

プルルルー

プルルルー
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