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拓夢の話11

凛の荷物

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俺は、凛の荷物を代わりに持ってあげる事に決めた。それは、凛をずっと苦しめてきた事だから…。

「凛、もう苦しまないでいい!俺が、それを預かったから!忘れてしまえばいい」

「拓夢」

凛は、泣きながら俺のおでこにおでこをくっつけてきた。

俺は、蓮見を殴ってやりたいと思った。嫌、そんなんじゃ足りない。殺してやりたい。だけど、殺した所で凛の傷は消えない。闇は、晴れない。
それなら、俺に出来る事はこれだけだ。

俺は、凛の胸に手を当てる。

「拓夢」

「俺がもらう。蓮見との記憶は、全部」

「うん」

「だから、凛。もう苦しむなよ!蓮見と凛は、高校で終わったんだ!ちゃんと終わったんだ」

「うん」

「だから、大丈夫」

俺は、凛にキスをする。

「誰かに言えるって、心(ここ)が軽くなるんだね」

「そうだな!」

俺も凛に話せて、軽くなった。凛も俺の胸に手を当ててくる。

「拓夢、私も貰う。拓夢は、まっつんさんのお母さんとは何もなかったんだよ!だから、もう思い出すのは今日が最後」

「凛、ありがとう」

「私も、墓場まで持って行ってあげるから」

「うん」

切望が、絶望に変わったあの日に凛に出会い、俺達は互いの悲しみを埋め合うように体を重ねた。

その関係が、今変わっていくのを感じる。俺と凛は、互いの荷物を交換した。

「もう、二度とその蓋を開かないで…拓夢」

「うん。凛も」

「約束」

「約束」

俺と凛は、指切りをする。もう二度とその蓋は開かない。俺は、まっつんの母親との事を凛に渡した。

「凛、俺ね。それ、嫌いなんだ」

「もしかして、私と同じ?」

俺は、凛に頷いた。

「どうして、嫌いなの?」

「初めての先輩にも、まっつんの母親にもされた。吐き気がしたんだ。気持ち悪くて、堪らなかった。そうやってる時に、目が合うだろ?それが、一番嫌いだった」

「わかる。私も、嫌いだった。蓮見君と目が合うのが…」

「旦那さんにもしなかったのか?」

「彼は、全部知ってるから…。私が嫌な事、全部。それでも、彼と付き合ってたくさん乗り越えられた事もあるの」

「俺も、美紗のお陰で乗り越えられた事がたくさんあるからわかるよ」

俺は、凛を引き寄せて抱き締める。

「実は、俺、まっつんの母親に会ってるんだ」

「その後?」

「うん」

「いつ?」

俺は、あの日を思い出しながら、凛に話す。

「一年前…」

「もしかして…」

凛は、何かを気づいたみたいに言った。

「最後までは、なってないよ!ただ、あの人も寂しかったんだと思うんだ」

「拓夢、私が墓場まで持って行くから!話していいよ」

そう言って、俺の涙を拭ってくれる。

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