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拓夢の話11

行って

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俺は、凛から離れる。

「平田さんの所に行って!俺は、もう大丈夫だから」

「拓夢、辛かったね」

凛は、そう言って頬を撫でてくれる。

「凛も、辛かったよな」

俺も、凛の頬を撫でる。

「私、拓夢が心配だよ!だから、凛君には…」

「いいから、約束したなら行かなきゃ!凛、俺の事は心配しなくていいから」

「でも…」

「大丈夫だから!平田さんといる約束したんだろ?行けよ!ごめんな。連れてきたのは、俺なのに…」

「ううん。ついてきて」

「うん」

俺と凛は、起き上がった。服を着る。

「帰りは、一緒に帰れる?」

「どうかな…」

「じゃあ、次はいつ会う?」

「凛、俺はいなくならないから!大丈夫だって」

凛は、不安そうに俺を見つめる。

「だって、俺達は互いの荷物を交換した仲だろ?心配するな」

俺の笑顔に凛は、頷いてくれる。

「もう、俺はまっつんのお母さんの事忘れるよ!だから、凛も蓮見を忘れろ」

「うん。拓夢、私がここに預かったから」

凛は、俺の手を握りしめて、その手を自分のおでこにおく。

「私が、ちゃんと持ってくから」

「脳内か!」

「うん、記憶したよ」

その笑顔に、俺は凛を引き寄せてキスをした。もう、苦しまなくていい。俺の背負っていた重い重い荷物を凛が持ってくれた。誰かに話すだけで、心が驚く程軽くなるのを感じた。

「今なら、飛べるかも」

「見えないけど、羽根はえてるかもね!私も拓夢も…」

「そうだな」

「私ね、軽いよ!気持ちが軽い。ずっと重たかったから……。ずっと、苦しかったから…」

「わかってる」

「拓夢も同じだったんだね?」

俺は、凛に頷いて優しく笑った。

「私達が、惹かれ合ったのは絶望を埋める為なのかと思ってた。だけど、違ったね。私達が出会ったのは、お互いの荷物を預かる為だったんだよ」

「そうだな!」

俺は、凛の頬に手を当てて涙を優しく撫でるように拭った。

「凛君の所に行くね!約束だから」

凛がニコッと笑った瞬間、目から大粒の涙がボトボトと流れ落ちた。

「ついてく!行こう」

さっきまで、存在していた平田さんへのヤキモチが消えていた。

「うん」

俺達は、部屋を出る。手を繋いで歩いて、平田さんと凛が泊まろうとした部屋に着いた。

ビーー。

「はい」

「凛君、今日は一緒にいるから」

「ふざけないでよ」

「取り敢えず、中に入って」

平田さんの母親は、怒りが静まらないようだった。

「凛といようなんて、あんた何考えてんのよ」

凛は、その剣幕に固まってしまった。

「母さん、さっきから話してるだろ!悪いのは、僕なんだ」

「はあ?16歳の男をたぶらかすような女が悪いに決まってるでしょうが!」

さっきとは、違うのはお酒をまた飲んでるからなのがわかった。
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