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エピローグ【拓夢の話2】

憂鬱な気持ちが広がる

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俺は、鍵を閉めてため息をついた。

「はぁー」

凛と重ねた想い出が、引っ越せばまるごと消えてしまうじゃないか…。それでも、隣人やこのフロアの住人。そして、このマンションの住人に迷惑はかけれない。相沢さんが、かける魔法は売れる。だったら、俺はここを去るしかないのかも知れないな…。

俺は、リビングには行かずに寝室に入った。ベッドにゴロリと横になった。スマホをスーツのポケットから取り出した。
俺は、床に落ちてるそれを拾った。

「怖かったよな…」

そのボタンを見つめながら、凛がどれだけの恐怖の中にいたのかを考えていた。想像出来ない。
凛を守れなかった。俺の家にこなければ、凛が蓮見に襲われる事はなかった。悔しくて、悲しくて、俺は自分への苛立ちを抑えられない。

ブブッ

【拓夢!デビュー出来るって聞いたよ!何で言わないのよ!見に行きたかったじゃない】

母親からのメッセージを見つめていた。

【誰に聞いたの?】

ブブッ

【俊君のお母さんから聞いたのよ!知らなかったから…。悲しかったじゃない】

【ごめん】

ブブッ

【次は、呼んでよ!お父さんと二人で行くから】

【わかった】

母親からのメッセージは、それで終わった。そりゃあ、俺には、まっつんの気持ちがわからないよな…。

愛されてるか愛されてないかと聞かれたら、俺は愛されてるって答えられる。そんな俺は、幸せ者なんだってわかる。

俺は、凛の服のボタンを見つめる。このまま、凛と終わっていく。それだけは、どうしても嫌だった。

コンコンー

「はい」

ガチャー

「理沙ちゃん、帰ったよ」

「もう、そんな経った?」

「うん。二時間ぐらい」

「そっか」

凛が部屋に入ってくる。
そして、ベッドに横になる。

「ボタン縫ってやろうか?」

「自分で出来るよ」

俺は、凛の掌にボタンを置く。

「あの服は、処分しようかなって」

「思い出すから?」

「そうだね」

「そうだよな!嫌な事思い出すよな」

俺は、凛を引き寄せて抱き締める。

「明日、俺が服買ってあげる」

「えっ?」

「仕事休み取ってるんだ!明日は…」

「どうして?」

「あー、前にとってたんだよ!撮影の日にちが、わかった時にね。元々、俺の夢を応援してくれてる会社だったから。だから、有給使って、休みとったんだ。凛がこうなったからとかじゃないよ」

俺は、そう言って凛の頭に顔を埋める。同じ匂い、嬉しくてにやけてくる。

「そうだったんだね」

「うん。明日だったら、凛を守ってやれたのに…」

「でも、卵。明日買ってこようかって」

「あー、あれは…。明日休みだから、朝に買ってこようかなーって」

「紛らわしい。言い方しないでよ」

凛は、そう言って上目遣いで俺を見つめる。

「凛」

「何?」

「生まれ変わりがあるなら…。次の人生では、赤ちゃん産めて…。蓮見と出会わなければいいな」

「そしたら、拓夢とは…」

俺は、凛を抱き締めて耳元で、そっと囁いた。

「出会わなくていい」
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