549 / 646
エピローグ【凛と拓夢の話】

服を着なよ【凛】

しおりを挟む
私は、急いで救急箱を持って龍ちゃんの傍にやってきた。

「凛、服着なよ」

龍ちゃんは、そう言って「いっ」と言いながら毛布を被せてくれた。

「大丈夫?服着てくる」

私は、立ち上がった。

「うん、着ておいで」

私は、頷いて洗面所に行ってモコモコのルームウェアを着て急いで戻った。

「それ白だから汚れない?」

「いいの」

龍ちゃんにそう言われたけど、私はバスタオルを外した。

「痛いでしょ?」

「大丈夫、大丈夫」

「消毒はしない方がいいよね!洗面所で傷口に流してこれる?」

「ああ、うん。わかった」

龍ちゃんは、ゆっくり立ち上がって洗面所に行った。薄いピンクのバスタオルは、龍ちゃんの血がついていた。

「ごめん」

龍ちゃんが、フェイスタオルで腕を押さえながら行った。

「血は?」

「ちょっとだけだよ」

私は、龍ちゃんの腕を見せてもらう。

「ちょっと抉れてるかも」

そう言って、ガーゼを当てて包帯を巻いていく。

「龍ちゃん、私ね」

「うん」

「結局、無理だったよ」

私は、包帯を巻きながら言った。

「仕方ないよね。こればっかりはね」

龍ちゃんは、そう言いながら私の頬を左手で撫でてくれる。包帯を巻き終わった私は、龍ちゃんの隣に座った。

「ごめんね。龍ちゃん。期待して私を抱いてくれてたのに…。結局、うまくいかなくてごめんね」

話してるうちに、私の視界は涙で滲み始める。

「別に俺はいいよ。凛の気持ちに比べたら…。たいした事ないよ」

龍ちゃんは、そう言って痛い方の腕で私の手を握りしめてくる。

「ごめんね。龍ちゃん。本当は、龍ちゃんだって……期待してたんでしょ?」

私の言葉に龍ちゃんは、柔らかく笑ってくれる。

「ちょっとは、そうだったかもな!でも、あの時と違ってそうでもないかも…。だって俺は、凛と一緒にいたいだけだから…」

龍ちゃんは、左手で目を擦りながら話していた。私は、龍ちゃんが握りしめた手を握り返して話す。

「龍ちゃん、本当は私…。凄く期待してた」

「そっかあ…」

龍ちゃんの笑顔に涙が止まらなくなってきて、私は泣きながら話す。

「拓夢の子じゃないっていうのはわかってたよ。でも、そうなら龍ちゃんの子だってわかってた。それにね、私。龍ちゃんじゃない人の子は…。いらないって思ってたから…。だから、余計に今辛い。悲しい。龍ちゃん」

私の言葉に龍ちゃんは、左手で目をおって話す。

「駄目だなー。そんな風に言われたら俺。駄目だから…」

「泣いちゃうって事?龍ちゃんが…」

龍ちゃんは、ゆっくりと顔を見せる。

「うん、かもな…。もうすでに…」

そう言った瞬間、龍ちゃんの目から涙がスッーって流れ落ちた。

「時々、わかんなくなる時あるよな?」

龍ちゃんは、そう言って左手を私の頬に当てた。

「何が?」

私は、そう言って龍ちゃんを見つめていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家 結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。 愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。

【完結】指先が触れる距離

山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。 必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。 「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。 手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。 近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

処理中です...