三日月宝珠と愛しき幽体

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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光珠の視点

エネルギー不足

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「それじゃあ、麗奈はエネルギーが不足して死に向かったって事なのか?」

「はい。三日月では、そう教えられてきました。肉体のエネルギーが不足し、魂のエネルギーを使い始めると、その魂は滅びのカウントダウンを始める。だから、食事で、気力と体力と霊気をあげなさいと教えられてきました。ただ、肉体が食べたくない時は一時的に魂からエネルギーをもらいます。食べれるようになったら、すぐに肉体にエネルギーを注ぎ続けます。食べれなかった日数を越えると肉体は、初めて魂にそのエネルギーを送りはじめるのです。そして、また魂はエネルギーが満タンになります。」

麗奈は、泣いてる。

『私は、気づかないうちに滅びに向かっていたんですね。もっと早く気づいていれば、よかったです。』

「若い魂は、エネルギーが豊富なので、少々磨り減らしても気づきません。だから、気づかなかったのだと思いますよ。麗奈ちゃんが、若いから周りも気づかなかったのでしょう。後悔してもどうにもならない事ですよね。ただ、エネルギーが不足すると悪しきものを呼び寄せやすいのは、事実です。」

『だから、事件が起きた』

「そうなりますね。」

麗奈は、私を見つめる。

『光珠、もうお互いに自分を責めるのはやめよう。宝珠さんに話を聞いてわかった。気づけなかっただけだったんだって。若いからって、過信していたんだと思う。ちゃんとエネルギーになるものを食べていなかったのよね。お母さんに、お菓子ばっかり食べないのって怒られていたのに…。』

「麗奈。私も、食べたいものを食べたらいいって言ってごめん。ちゃんとご飯を食べろって言うべきだった。」

『ううん。知らなかったから仕方ないよ。三日月の教えと三津木の教えは、違う所があったわけだから…。エネルギーの話しなんて知らなかったじゃない。お互いに…。』

「そうだな」

『取り返しのつかない事を、後悔するのは、もうやめよう。私も光珠も、もう未来に進むべきよ』

「生まれ変わりの道に行くのか?」

『お婆ちゃんが、亡くなったらそうするつもりなの。魂の抹消を受ける。』

「そんな……。まだ、いてくれよ。私が、そっちに行くまで」

『光珠が、こっちに来るまで何年だと思ってるの?私たちの時間は、生きている人間と進み方が違う。だけど、その分、濃縮された濃さがあるの。痛みや苦しみや悲しみは、万倍。幸せや楽しみや喜びは、千倍。そんな思いをしながら、光珠を待てないわ。』

「麗奈……」

『二条さんに頼んで、ちゃんとお別れしましょう。』

私は、項垂れて泣いた。

『それと、宝珠さん。これを光珠に後で見せてあげて欲しい』

「はい」

麗奈は、宝珠の手を握りしめた。

「わかりました。きちんと見せます。」

『宜しくお願いします。光珠、もうお願いだから苦しまないで。』

麗奈は、私の頬に手を当てる。


「それでは、失礼します。」

宝珠は、立ち上がって出て行った。

「麗奈、ごめんね。本当に、ごめんね。」

『ううん。私もごめんね』

「指だして」

『はい』

私は、麗奈の指にケースから指輪を出してはめた。

麗奈は、私に何度もキスをしてきた。

「汚れちゃうよ」

『ゐ空さんが、綺麗にしてくれる。』

「二条さんに、頼むから…。最後にきちんとお別れしよう。」

『うん』

心も身体も、もうさよならしなくちゃいけないのだ。

人生には、あの時もこの時もない事を私は、宝珠に何度も聞かされたのだ。

わかっていたのに、私は沢山の後悔を抱えた。

20年間、私が悔やんだ結果。

麗奈も、後悔をしていたのが痛いほどわかった。

万倍の痛みや苦しみを味わうと言うなら、手放してあげなければならないのだ。

それでも、お別れをきちんと出来そうにない自分がいた。

「指輪をはめれたんだね」

ゐ空さんの声に、顔を上げた。

「はい。叩いてしまったり、キスしちゃったり」

「想定内だから、大丈夫。」

もう、麗奈は話さなかった。

「麗奈は?」

「抜けたよ。人形の望みは、指輪をはめてもらう事だったから…」

ゐ空さんは、麗奈を抱えて元の位置に戻した。

「三日月宝珠を呼んだのは、ゐ空さんなのですね?」

私の言葉に、ゐ空さんは目を見開いて私を見つめた。

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