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喜与恵と宝珠の視点
踏み出せない想い
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「連絡先交換したら、どうかな?」
「せやな!交換しようか」
湊は、成木さんに名刺を渡してる。
「俺も、どうぞ」
「おおきに」
成木さんから、名刺を受け取っている。
よかった。気に入ってもらえたみたいだった。
「あの、友達から宜しくお願いします。」
「俺、あんま一ヶ所におらんのよね。」
「でも、関西にいるんですよね」
「せやなー。関西メインやけど!仕事がら、いろいろ行かなアカンから…。そんなデートとかできへんよ。ええの?」
成木さんは、少し考えてる。
「もしも、付き合うとかなるなら俺が満月さんに歩み寄ります。」
「そんなんええよ!成木さんかて、基盤しっかりしてきてるんやろ?今さら、手放す必要なんかないから」
私達は、歳を重ねると臆病になる。
今まで、築き上げたものを手放すのが怖くなる。
「でも、考えますから」
「まあ、会える時に会おな!」
そう言って、湊は、笑った。
食事会は、無事に終わった。
「また、来ます。美味しかったです。」
「うん、喜与恵さん。またね」
「はい」
喜与恵は、村井さんと話していた。
湊が、お金を出してくれた。
店を出て、車に乗り込んで成木さんを送った。
湊と成木さんは、後部座席に乗った。
「ごちそうさまでした。」
成木さんは、家につくと車から降りた。
「待って!メッセージちょうだいな!」
湊も車から降りて、話してる。
「勿論。」
「会われんくても、テレビ電話とかあるやん!あんなん嫌やなかったら、してや!アカンかな?」
「いいよ」
「じゃあ、また会おうな」
「はい」
「次は、二人でな!バイバイ」
「はい」
成木さんは、手を振っていた。
湊は、車に乗り込んだ。
「夜にすればよかった?」
「いや、一回目は、これぐらいがええよ。」
湊は、そう言って笑った。
「スーパーで、買い物して帰るよ」
「ああ、ええで」
成木さんは、ずっと手を振っていて湊もずっと手を振っていた。
「若い頃みたいに、なんもかんも捨ててこれたらええのにな。」
「そうだね」
「50もまわったら、臆病なるわ!冒険心なんかより、色々心配してまうやろ?長く生きるんかな?とか、老後はどうするんかな?とか、余計なもんいっぱいくっついてくるやん。」
「そうだね、みなちゃん」
「まあ、きよちゃんも宝珠もバケモンなってもうたから、俺よりは長生きやな!せやけど、介護とか、色々くっついてくるやん!もう、思い通りに生きられんのよな。だから、俺、新しい恋探すなんて考えてなかったわ。」
「成木さんは、気に入った?」
「うん。よかったで!好きになるかは、わからんけど!全力で向き合いたいって思ったで」
そう言いながらも、湊の中には前の彼が存在しているのを感じていた。
たった一歩で越えることなど、出来るはずのない時間と想い。
「ホンマに。年取ったら、アカンな。簡単に、次、次、っていかれへんくなる。臆病になる。また、次アカンかったらって思ったらこわなるわ。また、子供欲しいゆわれたらどないして生きていけばええんかわからんなるわ」
赤信号で停まって、バックミラーで湊を見ると、窓の外を見ながら泣いてる。
「最近な、初めて、おとんとおかんが俺が同性愛者って知った日に泣いたのをよく思い出すねん。大人になって、満月を誰が継ぐんや!どないか、子孫だけ残されへんか?うちらは、ちゃんと育ててきたやろ?湊は、女の子と結婚して跡取りをつくるんよ!この家は、呪われてるんやね。俺が、12歳で、百合は2歳やった。おかんは、妊娠してたけど、まだ性別もわからんかったから…。二人とも絶望しとった。それで、大泣きしとった。俺、悪い事してるんやって初めて思った。」
「それって?」
「きよちゃんが、好きやってゆったんや!まだ、じいちゃんおったから、じいちゃんが湊は同性愛者やなってゆった!自分の兄貴と同じやって!俺は、きよちゃんを好きなんが悪い思ってへんかったし。喜んでくれる思っとった。やのに、全然喜んでくれんかったわ。背負わされた荷物が、ホンマに重かったな!」
長男というのと、跡取りが必要だという事、小さな頃から湊は、苦しめられてきたのを感じる。
子供を授かる事に、湊は苦しめられてきたのに…。
また、苦しめられる事になるなんて…。
「この歳で、同じ事で悩むんはキツいで!もう、生きていたくないぐらいやで。ホンマ…。明日にでも、死んでたらええのにって何回も思ってしもた」
スーパーの駐車場に車を停める。
湊は、顔を隠しながら泣いていた。
喜与恵も、ポロポロと泣いている。
「乗り越えた思っとったのにな!俺、弱すぎるわ」
湊に、何て言えばいいのか言葉をうまく選べなくて、黙って泣く事しか出来なかった。
「せやな!交換しようか」
湊は、成木さんに名刺を渡してる。
「俺も、どうぞ」
「おおきに」
成木さんから、名刺を受け取っている。
よかった。気に入ってもらえたみたいだった。
「あの、友達から宜しくお願いします。」
「俺、あんま一ヶ所におらんのよね。」
「でも、関西にいるんですよね」
「せやなー。関西メインやけど!仕事がら、いろいろ行かなアカンから…。そんなデートとかできへんよ。ええの?」
成木さんは、少し考えてる。
「もしも、付き合うとかなるなら俺が満月さんに歩み寄ります。」
「そんなんええよ!成木さんかて、基盤しっかりしてきてるんやろ?今さら、手放す必要なんかないから」
私達は、歳を重ねると臆病になる。
今まで、築き上げたものを手放すのが怖くなる。
「でも、考えますから」
「まあ、会える時に会おな!」
そう言って、湊は、笑った。
食事会は、無事に終わった。
「また、来ます。美味しかったです。」
「うん、喜与恵さん。またね」
「はい」
喜与恵は、村井さんと話していた。
湊が、お金を出してくれた。
店を出て、車に乗り込んで成木さんを送った。
湊と成木さんは、後部座席に乗った。
「ごちそうさまでした。」
成木さんは、家につくと車から降りた。
「待って!メッセージちょうだいな!」
湊も車から降りて、話してる。
「勿論。」
「会われんくても、テレビ電話とかあるやん!あんなん嫌やなかったら、してや!アカンかな?」
「いいよ」
「じゃあ、また会おうな」
「はい」
「次は、二人でな!バイバイ」
「はい」
成木さんは、手を振っていた。
湊は、車に乗り込んだ。
「夜にすればよかった?」
「いや、一回目は、これぐらいがええよ。」
湊は、そう言って笑った。
「スーパーで、買い物して帰るよ」
「ああ、ええで」
成木さんは、ずっと手を振っていて湊もずっと手を振っていた。
「若い頃みたいに、なんもかんも捨ててこれたらええのにな。」
「そうだね」
「50もまわったら、臆病なるわ!冒険心なんかより、色々心配してまうやろ?長く生きるんかな?とか、老後はどうするんかな?とか、余計なもんいっぱいくっついてくるやん。」
「そうだね、みなちゃん」
「まあ、きよちゃんも宝珠もバケモンなってもうたから、俺よりは長生きやな!せやけど、介護とか、色々くっついてくるやん!もう、思い通りに生きられんのよな。だから、俺、新しい恋探すなんて考えてなかったわ。」
「成木さんは、気に入った?」
「うん。よかったで!好きになるかは、わからんけど!全力で向き合いたいって思ったで」
そう言いながらも、湊の中には前の彼が存在しているのを感じていた。
たった一歩で越えることなど、出来るはずのない時間と想い。
「ホンマに。年取ったら、アカンな。簡単に、次、次、っていかれへんくなる。臆病になる。また、次アカンかったらって思ったらこわなるわ。また、子供欲しいゆわれたらどないして生きていけばええんかわからんなるわ」
赤信号で停まって、バックミラーで湊を見ると、窓の外を見ながら泣いてる。
「最近な、初めて、おとんとおかんが俺が同性愛者って知った日に泣いたのをよく思い出すねん。大人になって、満月を誰が継ぐんや!どないか、子孫だけ残されへんか?うちらは、ちゃんと育ててきたやろ?湊は、女の子と結婚して跡取りをつくるんよ!この家は、呪われてるんやね。俺が、12歳で、百合は2歳やった。おかんは、妊娠してたけど、まだ性別もわからんかったから…。二人とも絶望しとった。それで、大泣きしとった。俺、悪い事してるんやって初めて思った。」
「それって?」
「きよちゃんが、好きやってゆったんや!まだ、じいちゃんおったから、じいちゃんが湊は同性愛者やなってゆった!自分の兄貴と同じやって!俺は、きよちゃんを好きなんが悪い思ってへんかったし。喜んでくれる思っとった。やのに、全然喜んでくれんかったわ。背負わされた荷物が、ホンマに重かったな!」
長男というのと、跡取りが必要だという事、小さな頃から湊は、苦しめられてきたのを感じる。
子供を授かる事に、湊は苦しめられてきたのに…。
また、苦しめられる事になるなんて…。
「この歳で、同じ事で悩むんはキツいで!もう、生きていたくないぐらいやで。ホンマ…。明日にでも、死んでたらええのにって何回も思ってしもた」
スーパーの駐車場に車を停める。
湊は、顔を隠しながら泣いていた。
喜与恵も、ポロポロと泣いている。
「乗り越えた思っとったのにな!俺、弱すぎるわ」
湊に、何て言えばいいのか言葉をうまく選べなくて、黙って泣く事しか出来なかった。
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