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優季の目覚め
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新巻さんは、優季の写真を目の前に置いた。
「これは、優季がこの店に初めて訪れた日です。」
さっきとは、違って暗い顔をしていた。
「では、お話しましょう。」
そう言って、新巻さんは話し出した。
13年前、12月ー
カランカラン
「いらっしゃいませ。囚われている方以外の入店は、お断りしております。」
「囚われてるとは、何ですか?」
「ここでは、性的思考でしょうか?あの方は、マゾヒストです。私は、サディスト。あの方は、子供しか無理です。あの方は…。」
「だったら、僕も入れますね」
「あなたは、何ですか?」
「一緒に暮らしてる彼女を痛め付けたくて仕方ないんです。」
「そうですか、では、お入り下さい」
私は、彼を案内した。
「お名前は、偽名でも結構ですよ。」
「優季です。」
「ゆうきですか、どんな漢字でしょうか?」
差し出したノートに、優季と書いた。
「このノートは?」
「これは、懺悔ノートです。」
「懺悔ノート?」
「はい、こちらにおられる方々は、自分の性的嗜好に嫌悪感を抱いておられます。なので、こちらに懺悔されています。私も、その一人です。愛するものを殴り付けてしまう。その衝動が、押さえられません。何を飲まれますか?」
「ビールで」
「かしこまりました。」
私は、ビールを優季に差し出した。
「初めてなんです。僕は、人に怒った事もイライラした事もなかった。」
「はい」
「それが、桜と住んでから桜が宅配業者に笑いかけることにすらイライラする。」
「そうですか」
「体の奥底から湧き出る暗く重い衝動を抑える日々でした。でも、もう我慢出来ない。」
「やってみては、どうですか?」
「えっ?」
私は、優季にペンを渡した。
「彼女にやってみては、どうでしょうか?自分の気持ちを抑えつけていると、やがて犯罪者になりますよ。」
「兄ちゃん、あの事件知ってるか?」
常連のリッキーさんが、優季に話しかけた。
「あの事件とは?」
「彼女を殴り殺した事件だよ」
「あー。知っています。一年前ですよね?」
「ああ、そうだ。あいつも、ここに通ってたよ」
「そうなんですか」
「彼は、やらない選択をしましたね。リッキーさん」
「ああ、香乂(こうが)。飲めよ」
「いただきます。」
私は、ビールをいただいた。
「やらない選択をして、殺したんですか?」
「1ヶ月前に来た時に、もう我慢出来ないとかってずっと言っていたよな」
「そうですね」
「それでも、あいつはやらないやらないって言ったんだよ。小出しにしてれば、殺さなくてすむのによ」
「そうなんですか?」
私は、優季に笑いかけた。
「これ以上やっては、いけないがわかるというだけです。」
「僕は、桜を殺したくない」
「それなら、兄ちゃん。小出しにしていけ」
「まずは、ソフトからですね」
「嫌われないだろうか?」
「嫌われたら、この店の中のやつを好きになればいいさ。マリーみたいなのは、沢山いるさ」
「マリー?」
「あー。あの端に座ってる彼女です。性的マゾヒストです。彼女は、征服される事で快感を得ます。」
「まさに、マリーは、Win-Winの関係だな。」
「あんな、綺麗な人なのに…」
「性的嗜好は、人それぞれってわけですね」
リッキーは、後ろの席の愛を顎で差した。
「あいつは、小学校の先生で幼児が好きなんだぜ。気持ち悪いだろ?」
「酷い言い方は、なしですよ」
「わかってるよ。でも、あいつはここのお陰で自分の性的嗜好を抑えられたんだよ」
「どうやったんですか?」
「何もやってないさ。ここで、同じ仲間を作って話しただけさ。人間てのは厄介で、吐き出さなければ、その衝動に飲み込まれちまう。その黒い衝動に飲み込まれたら最後。人生おしまいだ。」
リッキーさんは、笑っていった。
「僕も、話に来てもいいですか?」
「いつでも、どうぞ。お待ちしております。」
これが、優季の目覚めだった。
「これは、優季がこの店に初めて訪れた日です。」
さっきとは、違って暗い顔をしていた。
「では、お話しましょう。」
そう言って、新巻さんは話し出した。
13年前、12月ー
カランカラン
「いらっしゃいませ。囚われている方以外の入店は、お断りしております。」
「囚われてるとは、何ですか?」
「ここでは、性的思考でしょうか?あの方は、マゾヒストです。私は、サディスト。あの方は、子供しか無理です。あの方は…。」
「だったら、僕も入れますね」
「あなたは、何ですか?」
「一緒に暮らしてる彼女を痛め付けたくて仕方ないんです。」
「そうですか、では、お入り下さい」
私は、彼を案内した。
「お名前は、偽名でも結構ですよ。」
「優季です。」
「ゆうきですか、どんな漢字でしょうか?」
差し出したノートに、優季と書いた。
「このノートは?」
「これは、懺悔ノートです。」
「懺悔ノート?」
「はい、こちらにおられる方々は、自分の性的嗜好に嫌悪感を抱いておられます。なので、こちらに懺悔されています。私も、その一人です。愛するものを殴り付けてしまう。その衝動が、押さえられません。何を飲まれますか?」
「ビールで」
「かしこまりました。」
私は、ビールを優季に差し出した。
「初めてなんです。僕は、人に怒った事もイライラした事もなかった。」
「はい」
「それが、桜と住んでから桜が宅配業者に笑いかけることにすらイライラする。」
「そうですか」
「体の奥底から湧き出る暗く重い衝動を抑える日々でした。でも、もう我慢出来ない。」
「やってみては、どうですか?」
「えっ?」
私は、優季にペンを渡した。
「彼女にやってみては、どうでしょうか?自分の気持ちを抑えつけていると、やがて犯罪者になりますよ。」
「兄ちゃん、あの事件知ってるか?」
常連のリッキーさんが、優季に話しかけた。
「あの事件とは?」
「彼女を殴り殺した事件だよ」
「あー。知っています。一年前ですよね?」
「ああ、そうだ。あいつも、ここに通ってたよ」
「そうなんですか」
「彼は、やらない選択をしましたね。リッキーさん」
「ああ、香乂(こうが)。飲めよ」
「いただきます。」
私は、ビールをいただいた。
「やらない選択をして、殺したんですか?」
「1ヶ月前に来た時に、もう我慢出来ないとかってずっと言っていたよな」
「そうですね」
「それでも、あいつはやらないやらないって言ったんだよ。小出しにしてれば、殺さなくてすむのによ」
「そうなんですか?」
私は、優季に笑いかけた。
「これ以上やっては、いけないがわかるというだけです。」
「僕は、桜を殺したくない」
「それなら、兄ちゃん。小出しにしていけ」
「まずは、ソフトからですね」
「嫌われないだろうか?」
「嫌われたら、この店の中のやつを好きになればいいさ。マリーみたいなのは、沢山いるさ」
「マリー?」
「あー。あの端に座ってる彼女です。性的マゾヒストです。彼女は、征服される事で快感を得ます。」
「まさに、マリーは、Win-Winの関係だな。」
「あんな、綺麗な人なのに…」
「性的嗜好は、人それぞれってわけですね」
リッキーは、後ろの席の愛を顎で差した。
「あいつは、小学校の先生で幼児が好きなんだぜ。気持ち悪いだろ?」
「酷い言い方は、なしですよ」
「わかってるよ。でも、あいつはここのお陰で自分の性的嗜好を抑えられたんだよ」
「どうやったんですか?」
「何もやってないさ。ここで、同じ仲間を作って話しただけさ。人間てのは厄介で、吐き出さなければ、その衝動に飲み込まれちまう。その黒い衝動に飲み込まれたら最後。人生おしまいだ。」
リッキーさんは、笑っていった。
「僕も、話に来てもいいですか?」
「いつでも、どうぞ。お待ちしております。」
これが、優季の目覚めだった。
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