桜の季節に失くした恋と…【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

文字の大きさ
40 / 65
お腹いっぱい、召し上がれ

繋がり合う愛

しおりを挟む
「円香、ラザニア」

「ありがとう」

円香と出会ってから、13年を迎えた。

「これだよ。これ」

どちらかが、そうしようって決めたわけじゃないのに、俺達は気づけば傍にいて、気づけば付き合っていて、気づけば同棲をしていた。

「よかった」

「うん、美味しいよ。美鶴」

「ありがとう」

俺は、引っ越してすぐに円香に99本の包丁を見せた。

初めて、美花の物も処分出来た。

「これ、何?」

「人を殺そうと思っていた。10年前に」

「これを使って?」

「ああ、駄目だよな」

俺の言葉に、円香は泣きながら抱き締めてくれた。

「こんなに、暗闇にいたのに誰にも気づいてもらえなかったんだね?美鶴、今までよく頑張ったね」

「わぁぁぁぁぁ。美花ーー」

俺は、情けない程に円香の前で泣いたんだ。

「いいよ、美鶴。美花さんだと、思っていいんだよ。」

「円香」

ドロドロに、泣いた顔の鼻水や涙をタオルで拭ってくれながら円香は笑った。

「俺も、円香の彼の代わりに使ってくれていいから…。」

「うん」

俺達は、お互いの相手の代用品になる事を決めたんだ。

でも、不思議と悲しくも辛くもなかった。

きっと、円香も同じなんだと思った。

「友作さん」

酔うと円香は、そうやって抱きついてきた。

「なに?円香」

「美花さんでしょ?」

円香は、優しく俺の頬に手を当ててくれる。

今日は、円香がやっと手紙を開けれた日だった。

「美花」

「愛してるよ、美鶴」

「そこは、友作さんじゃないのか?」

「美鶴だよ。愛してるの。ちゃんと愛してるんだよ。美鶴」

「円香、何でそんな事。初めてだろ?」

「美鶴を愛してる気持ちは、ずっとあったんだよ。先生の代わりじゃないんだよ。美鶴の全てがいつの間にか好きだった。同じ傷を持ってる所も好き」

円香は、俺の左胸に手を当ててる。

「俺も、気づいたら円香でいっぱいだったんだよ。いつの間にか、円香が好きだった。円香に出会ってなかったら俺は、殺人鬼になってた」

「美鶴が、人を殺さなくてよかった。美花さんは、きっと美鶴をとめたかったんだね。」

「そうだと思ってる。俺は、今だって美花をいじめてたやつが許せない」

「こんなに、素敵な人だからみんないじめたくなったんじゃない?太ってるなんて、いじめたい理由の一つにつけただけだよ。本当は、美花さんが幸せそうだからいじめたかったんだよ」

俺と美花のアルバムの写真を見ながら円香は言った。

「円香、桜の木のおまじないだっけ?それのせいじゃないよ。先生が亡くなったのは…。きっと、大人になっていく円香に自分が必要じゃなくなっていく事が怖かったんだよ。」

俺は、円香を後ろから抱き締めた。

「美鶴、私ね。美鶴と死ぬまでいたいよ。他に何もいらない。美鶴がいればそれでいいの。美鶴が作ってくれる料理食べて、美鶴にれて。ただ、それだけでいいんだよ」

「円香、俺も円香と死ぬまでいたいよ。円香に、れて。円香が俺の料理を食べて笑ってくれる。それだけで、いいんだ。それだけで、いい。」

「うん、わかってる。私達ずっと同じ気持ちだったね」

「そうだな」

俺は、円香が俺の料理を口にするだけで身体中が幸福感と快楽に包まれる。

円香にその話をしたら、円香は俺にマッサージをしている時にそうなると話した。

多幸感に包まれた。

円香知ってる?

光を少しでも感じると闇に戻れないって事

幸せを少しでも感じると不幸せだった頃にもどれないって事

二人でいる事を知ったら、一人だった頃にはもどれない事

愛されてる事を知ったら、愛されない時にもどれない事

俺は、美花と円香に教えられた。

「円香、愛してるよ」

「美鶴、私も愛してるよ」

俺と円香は、少しずつ前に進んでいく。

愛した人を、ゆっくりと思い出にかえていきながら…。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【完結/番外追加】サリシャの光 〜憧れの先へ〜

ねるねわかば
恋愛
彼女は進む。過去に囚われた者たちを残して── 大商会の娘サーシャ。 子どもの頃から家業に関わる彼女は、従妹のメリンダと共に商会の看板娘として注目を集めていた。 華々しい活躍の裏で、着実に努力を重ねて夢へと向かうサーシャ。しかし時には心ないことを言う者もいた。 そんな彼女が初めて抱いた淡い恋。 けれどその想いは、メリンダの涙と少年の軽率な一言であっさり踏みにじられてしまう。 サーシャはメリンダたちとは距離をおき、商会の仕事からも離れる。 新たな場所で任される仕事、そして新たな出会い。どこにあっても、彼女が夢を諦めることはない。 一方、光に囚われた者たちは後悔と執着を募らせていき── 夢を諦めない少女が、もがきながら光を紡いでいく軌跡。 ※前作「ルースの祈り」と同じ世界観で登場人物も一部かぶりますが、単体でお読みいただけます。 ※作中の仕事や制作物、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...