10 / 18
今日から息子やから
しおりを挟む
母は、怒りでズンズン歩きだした。
「あー。腹立つ。九(きゅう)、なんやあれ。」
「ホンマやな。僕、殴りたかったわ」
「竹君、なんであんなイイコやのに。あんな、父親やねんやろな」
「ホンマやで、何やあの言い方」
「子供から、金まで巻き上げよって」
母と僕は、イライラしながら帰宅した。
「九(きゅう)、竹君にLimeした?」
「したよ」
時刻は、七時半を過ぎたところだった。
「お母ちゃん、ご飯するわ。お赤飯炊くねん」
母は、すぐに気持ちを切り替えた。
「これ、そっち置いとって」
中身を確認していないそれを、僕はTVの横の棚に置いた。
「ただいま」
父が帰宅してきた。
「おかえり」
「あー。どやった?」
ネクタイをはずしながら、父が尋ねると。
母は、怒りに任せて父にさっきのを全部話した。
「なんやそれ。なんちゅう人間や」
温厚な父が、珍しく怒っていた。
「九(きゅう)、一緒に酒のも酒」
「アカン、それは、私らの息子が帰ってきてからや」
「せやな」
そう言って、父はスーツを着替えに行った。
ブー、ブー。
「もしもし」
『もしもし、九(きゅう)。早く行けそうやねんけど、九時やないとアカンかな?』
竹君からの電話やった。
「ええよ、今すぐでも」
『わかった。ほんなら行くわ』
「うん」
電話が切れた。
8時を過ぎたところやった。
暫くして、ピンポーン。
インターホンが鳴った。
「僕、迎えにいくわ」
「はいはい」
母は、キッチンでご飯をしていた。
僕は、玄関の扉を開けた。
ガチャ…
「いらっしゃい」
「お邪魔します。これ、ケーキ。若が好きやったの」
「ああー。あがって」
僕は、竹君をあげた。
「いらっしゃい」
「お邪魔します。」
「叔母さん、これ若が好きやったとこのケーキです。」
「あー。ありがとう。後で、供えるわ」
「はい」
そう言って竹君は、お辞儀をして兄ちゃんの仏壇に手を合わせにいった。
「九你臣(くにおみ)、さっきの紙袋持ってきて」
「あっ、うん。」
竹君が、戻ってきた。
「竹君、ご飯食べる前に話せるか?」
「はい」
母は、竹君をダイニングに座らせた。
僕は、紙袋を机の上に置いた。
「今日な、竹君のお父さんに会ってきたんよ。それで、おばちゃんこれ預かってきた。」
竹君は、紙袋の中を覗いて机の上に出した。
「やっぱり、返してきたんやね」
悲しそうな目をしてる。
それは、お母さんの位牌と写真。
「この手紙なに?」
僕の言葉に、竹君は手紙を開いてボロボロと泣き出した。
僕は、その紙を覗いて読んでしまった。
「お前の母親の遺骨は、永代供養にしました。住所は、こちらです。金輪際、この家に現れないで下さい。やっと、ゴミを捨てれてよかったです。母親共々、死んでもらえたらよかったんですがね。私の30年間を返して欲しいぐらいです。」
僕が読み上げた瞬間、父がテーブルを叩いた。
「ふざけるな」
ガンっ…。
「こんな人、親やないよ」
僕は、泣いていた。
竹君は、紙袋に手紙とお母さんの位牌と写真をしまった。
「やっと、父が自由になれてよかったです。ご迷惑をおかけしました。」
そう言って、僕達に頭を下げる。
「やめて」
母は、竹君にそう言った。
竹君の目から、涙が幾重にも重なり落ちる。
「お話は、これだけですか?これだけなら、明日も早いので俺は、失礼します。」
その言葉に母が、竹君を怒った。
「さっきから、何やの。他人行儀みたいに」
「俺は、他人やから」
「はあ?何ゆうてんの?あんたは、私らの子供になるんやで」
竹君は、目をパチクリさせていた。
「兄ちゃん、ご飯食って帰れや」
「九(きゅう)、何ゆってんの?」
「嫌やや、ゆうても。お父ちゃんは、離したらんで」
竹君は、状況が掴めずに固まってる。
「兄ちゃんから、竹君に一生のお願いが発動されたんや。これからは、若行臣(わかゆきおみ)として。僕の兄として、生きてくんやで。竹君」
竹君は、その場に膝から崩れ落ちた。
「もう、お母ちゃん赤飯炊いたんやから、食べていきーよ。ゆっくんが、嫌や言うてもお母ちゃん離さへんで」
「なんで、そんな優しいんですか?」
「だから、敬語はおかしいって。優しいのは、ゆっくんが優しいからやで。お父ちゃん、小さい頃から知ってるで。優しいん」
父と母は、竹君に近づいて頭を優しく撫でた。
「あー。腹立つ。九(きゅう)、なんやあれ。」
「ホンマやな。僕、殴りたかったわ」
「竹君、なんであんなイイコやのに。あんな、父親やねんやろな」
「ホンマやで、何やあの言い方」
「子供から、金まで巻き上げよって」
母と僕は、イライラしながら帰宅した。
「九(きゅう)、竹君にLimeした?」
「したよ」
時刻は、七時半を過ぎたところだった。
「お母ちゃん、ご飯するわ。お赤飯炊くねん」
母は、すぐに気持ちを切り替えた。
「これ、そっち置いとって」
中身を確認していないそれを、僕はTVの横の棚に置いた。
「ただいま」
父が帰宅してきた。
「おかえり」
「あー。どやった?」
ネクタイをはずしながら、父が尋ねると。
母は、怒りに任せて父にさっきのを全部話した。
「なんやそれ。なんちゅう人間や」
温厚な父が、珍しく怒っていた。
「九(きゅう)、一緒に酒のも酒」
「アカン、それは、私らの息子が帰ってきてからや」
「せやな」
そう言って、父はスーツを着替えに行った。
ブー、ブー。
「もしもし」
『もしもし、九(きゅう)。早く行けそうやねんけど、九時やないとアカンかな?』
竹君からの電話やった。
「ええよ、今すぐでも」
『わかった。ほんなら行くわ』
「うん」
電話が切れた。
8時を過ぎたところやった。
暫くして、ピンポーン。
インターホンが鳴った。
「僕、迎えにいくわ」
「はいはい」
母は、キッチンでご飯をしていた。
僕は、玄関の扉を開けた。
ガチャ…
「いらっしゃい」
「お邪魔します。これ、ケーキ。若が好きやったの」
「ああー。あがって」
僕は、竹君をあげた。
「いらっしゃい」
「お邪魔します。」
「叔母さん、これ若が好きやったとこのケーキです。」
「あー。ありがとう。後で、供えるわ」
「はい」
そう言って竹君は、お辞儀をして兄ちゃんの仏壇に手を合わせにいった。
「九你臣(くにおみ)、さっきの紙袋持ってきて」
「あっ、うん。」
竹君が、戻ってきた。
「竹君、ご飯食べる前に話せるか?」
「はい」
母は、竹君をダイニングに座らせた。
僕は、紙袋を机の上に置いた。
「今日な、竹君のお父さんに会ってきたんよ。それで、おばちゃんこれ預かってきた。」
竹君は、紙袋の中を覗いて机の上に出した。
「やっぱり、返してきたんやね」
悲しそうな目をしてる。
それは、お母さんの位牌と写真。
「この手紙なに?」
僕の言葉に、竹君は手紙を開いてボロボロと泣き出した。
僕は、その紙を覗いて読んでしまった。
「お前の母親の遺骨は、永代供養にしました。住所は、こちらです。金輪際、この家に現れないで下さい。やっと、ゴミを捨てれてよかったです。母親共々、死んでもらえたらよかったんですがね。私の30年間を返して欲しいぐらいです。」
僕が読み上げた瞬間、父がテーブルを叩いた。
「ふざけるな」
ガンっ…。
「こんな人、親やないよ」
僕は、泣いていた。
竹君は、紙袋に手紙とお母さんの位牌と写真をしまった。
「やっと、父が自由になれてよかったです。ご迷惑をおかけしました。」
そう言って、僕達に頭を下げる。
「やめて」
母は、竹君にそう言った。
竹君の目から、涙が幾重にも重なり落ちる。
「お話は、これだけですか?これだけなら、明日も早いので俺は、失礼します。」
その言葉に母が、竹君を怒った。
「さっきから、何やの。他人行儀みたいに」
「俺は、他人やから」
「はあ?何ゆうてんの?あんたは、私らの子供になるんやで」
竹君は、目をパチクリさせていた。
「兄ちゃん、ご飯食って帰れや」
「九(きゅう)、何ゆってんの?」
「嫌やや、ゆうても。お父ちゃんは、離したらんで」
竹君は、状況が掴めずに固まってる。
「兄ちゃんから、竹君に一生のお願いが発動されたんや。これからは、若行臣(わかゆきおみ)として。僕の兄として、生きてくんやで。竹君」
竹君は、その場に膝から崩れ落ちた。
「もう、お母ちゃん赤飯炊いたんやから、食べていきーよ。ゆっくんが、嫌や言うてもお母ちゃん離さへんで」
「なんで、そんな優しいんですか?」
「だから、敬語はおかしいって。優しいのは、ゆっくんが優しいからやで。お父ちゃん、小さい頃から知ってるで。優しいん」
父と母は、竹君に近づいて頭を優しく撫でた。
0
あなたにおすすめの小説
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
青龍将軍の新婚生活
蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。
武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。
そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。
「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」
幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。
中華風政略結婚ラブコメ。
※他のサイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる