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極悪令嬢に堕ちる
出る杭は打たれる
しおりを挟む私は仲介者である。変わった衣装の女性を私の個人所有の建物に案内をし、用意した面会室でお相手をする。ソファーに座る彼女は体をさわりだし、なにかを探す。
「綺麗に片付けるじゃないか」
「そうです。掃除はしっかりとしております」
「ん、タバコいいかね」
「ええ、どうぞ」
私の目の前で葉巻を取り出し、私が用意した皿の上でよく磨がれたハサミで先端を切り落とす。
「じゃぁ……おっと。火がない」
変わった衣装の女性が体をまさぐる。魔法でつけたりしないのかと疑問に思ったが……私は手を差し出す。手のひらに炎がうねり、ウェルネットはタバコをそれに触れさせ煙を上げたタバコを咥えて一呼吸行う。私は炎を握って消し、振って魔法を散らす。
「ふぅ……美味しい。綺麗な火だ」
「……」
「そんな警戒するな。同じ『老人会』じゃないか。それに……悪くない火と言っただろう」
「では、単刀直入に抗争は止めろと言いたいんですね」
「そう、過剰だよ。逆襲がね。誰も殺されてないだろう? 引くなら今だ」
「妹分の目を潰し、攻めてきたのはあちらですがね」
「そう、あちらだ。だから謝りたいと言っている。もちろん、謝りを受け入れさせる。何故なら、うちが喧嘩を買い取ったからだ」
「……仲介料ですね」
「そう。私と戦うのは面白くないだろう?」
「……ええ、そうですね。こんな弱小では厳しい」
「謙遜しちゃって。可愛いお嬢様ね。いいえ、お嬢様を被った猛獣ね」
「目標は壊滅させて。私たちに関わると痛い目を見ますよと伝えたかったんですけどね……」
「やめなさい。その先は危ない。特にあなたは『老人会』都市壊滅するわ。暴れるのは今日までよ」
「……」
私はウェルネットを睨む。この先には何もないかもしれないがまだ。目標には届いていないと考える。
「悪くない話を持ってきたわ。あなたがやりたい事も非常にわかりやすい」
「何を知っておいでですか?」
「ヒナト君は元気よね」
「脅しですか?」
背中が熱くなる。心臓が跳ねて苦しい。手を胸に当てて自身を押さえ込む。
「まさか、もしも彼が死んだらあなたはもう。それはもう恐ろしい事になるわね。それを押さえ込めている間は大丈夫だけど」
「……もったいぶらず安心させてください」
「わかった。非常に多くの物を用意する。まず一つ目、ヒナト君には手を出さない出させない。それは私が預かる。2つ目、この抗争が私もちになり。私の傘下としてあなたの組織を保護してあげる。まぁ首輪をつけさせてもらうわ。3つ目、貴族社会にあなたの居場所を用意する手助けをするわ。4つ目、我々と商売の取引もする。あとは……まぁうん。もっとあるけど書面じゃないと覚えきらないわ」
破格な条件に私は驚く。扇子を広げて動揺を隠した。
「驚いたのね。素直な表情を隠すなんて可愛い」
「……非常に厚遇な気がしましてね」
「首輪をつけるのは厚遇かしら?」
「後ろ盾と言います。威を借りれるでしょう?」
「もちろん。長いパートナーにあなたを私は選ぶ。同じ『老人会』だしね」
「選んでいただきありがとうございます」
「うん。ではここからは私があなたにもう一つお願いしたいことがある」
「なんでしょうか?」
「その裏の世界での活動を少しの間やめて。表の活動を一生懸命行いなさい。そのために私がこの組織の後ろ前を守ってあげるわ。余裕を作ってあげる」
「?」
「品行方正な令嬢に戻りなさい」
首を傾げる。唐突に言われた言葉に意味を見いだせない。
「理由はあなたの目標はヒナト君を奪うことでしょう」
「……はい」
嘘はつかない。皆にも言っている。こればかりは絶対である。
「ここに居ては届かないわ。もちろん、多くの理由がある」
タバコを置き、彼女は語る。
「私はあなたの火を見た、味わった。そこには純粋な気持ちが入っており。非常に甘く感じたわ。そんな火を持つあなたは影の者ではない。陽の者よ……そんなのがこんな世界に居ては困るの。非常に眩しくて住みにくくなる。我々の世界には少し邪魔なの」
「そうなのですか?」
「そうよ。だから……あなたを怖がるの皆ね。そして本来あなたが居るべきは学園でしょう。帰りなさい。私が用意する。この世界の物は」
「……」
ここで引けば一生懸命努力が終わる気がした。多くを殺し領地を取る事はできなくなる。だが私の目的は違う。
「ヒナトを取り戻すために。手伝っていただけるのですね」
「もちろん、私の目的も彼をあなたに渡すのが目的よ」
「物扱いはやめてください」
「ごめんなさい。でも物でもあるのよ」
「含んだ言い方ですね」
「『老人会』が腰を上げた。それも……あなたに与するために。知らず知らずに後ろ盾を手に入れたでしょう。とにかく学園でヒナト君に近付きなさい」
「わかりました。妹たちを引かせます」
「よろしく」
彼女はそう言い、壁にかけてあるマントを羽織り、三角帽子を被って部屋を出る。私は深呼吸をして天井を仰ぎ……妹分の中で重要な3人を呼び寄せるのだった。
*
ウェルネットはエルヴィスの魔女の家から路地に戻り、部下と鉢合わせる。部下は普通の服装で身を包んでいた。
「船長、交渉お疲れ様です」
「……ああ、骨が折れるかと思ったよ。相手がまだまだ青くてよかった。流石に全面戦争を選べる力は怖いね。あっ火をくれ」
「いつもお持ちになってください。火石ですどうぞ」
「相手の火を見るにはいいんだよ。味もかわる。その石は味気がないね」
魔石を使い、火を生み出してウェルネットは葉巻を咥え、そこに火を貰う。深く吸い込み、煙をため息と共に吐き出す。
「はぁ、これで首輪がつくことになるだろう。全く、あの猛獣の首輪を外した馬鹿の顔を拝みたいものだ」
「船長、聖女と言われる者が首輪を持っております」
「そうだね。全く……世の中とは不思議な物だよ」
「これからどういたしましすか?」
「海に戻るさ。あとの事は任せたよ……あれは悪魔の申し子だ」
「はい、船長」
そう言い、変わった服装の女性は夜に消え。部下の女性も闇に消えていくのだった。
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