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ラファエルとレイチェル
しおりを挟む王国からの姫が到着した。しかし……おもてなしはしない事と決められていた。理由は国賓としての母上がおもてなしを受けていない事と明確な敵である事。そして……忙しい事があげられた。
「と言うわけです。申し訳ありません。レイチェル姫」
王国の城の広間まで馬車で進み。多くの王国騎士が入る。数は多いようで少ないような王国騎士に対してラファエル一人がお相手をする。自己紹介も済ませた時、皆が思っている事をレイチェルが質問する。
「……お一人?」
「ええ、お一人です。長い旅。お疲れさまです。部屋はご用意しております。明日、女王と謁見し……明後日から自由に過ごされてください。部屋のみの貸し出しです。使用人もいらっしゃるでしょうから……大丈夫でしょう」
「………」
騎士がざわつく中でラファエルは隠れているガブリエルに目線を寄せる。目線移動に気付いた騎士の人数を見るが……全員意識をしだし。ラファエルは驚く。使用人さえも何か血の臭いがするじゃないかと身を引き締めた。
一人でやれないかもしれない。だが……ラファエルは兄を越えようとする壁の高さに興奮する性。故にやる気が出る。不可能が心地いい。
(いいでしょう。いいでしょう。護りきってみせましょう!!)
ラファエルはやる気に満ちたのだった。
*
ばっふ……
「あら、いいへやー」
城の一室に案内されたレイチェルはもう使われてなかった寝室にあるベットに転がる。上にミェースチの寝室があるが……全く知らない。その中で……ラファエルが笑顔で部屋を紹介するが全く聞かれていなかった。
ラファエルはそれに全く怒らず。腕を組んで彼女が満足するのを待った。部屋は暖炉はないが暖かく。レイチェルはそれに疑問を持つ。
「暖炉はないのに暖かいですわ?」
「魔石から熱が出ております。一定の温度で放出されており……ゆっくり暖かいのです。火も使わず危険ではないですが。魔石が砕ける場合もあり。気を付けないといけません。レイチェル様の部屋は暖炉ですか?」
「ええ、暖炉です」
「暖炉いいですよね。実家変わった暖炉です。お湯も沸かせていいんですよねー。それを使って酒を暖めるとこれがまた……」
「おじさん臭いわね。あなた」
「そうですね。もう大人ですから」
「………聞いてもいい?」
ベットに腰かけるレイチェルは偉そうに聞く。
「何歳?」
「16ですね」
「じゅ、16?」
「ええ、16です」
レイチェルはラファエルの大きい体と雰囲気に驚く。ラファエルも自分が大人びている事はわかっていたがそれが必要なのだと思っているため。全く気にしない。だからか……
「レイチェル姫は妹みたいですね~」
ラファエルは子供っぽいと思ってしまう。それをレイチェルはムッとするが……
ガチャ
「ラファエルお兄様。隣近所に騎士を案内しました」
入ってきた女性に驚きそんな事は忘れてしまう。綺麗な緑の長髪に青の髪と色鮮やかで驚いたのだ。金の色よりも目立つ色と……何よりスタイルの良さに驚く。
「ありがとう。ガブリエル……挨拶してくれ。歳も言えばいいと思う」
「はい。お兄様……私は女騎士ガブリエル・バルバロッサです。15歳です」
「は、はい……レイチェル・グローライトと言います。じゅ……14です」
ベットから立ち上がり。一つ上の美女に自分の歳を言うのが恥ずかしくなる。腰や胸などは完全に大人であり力強く……自分と比較しても鍛えられているために……綺麗な姫と言う自信を無くした。
「あら……可愛い姫ですね。ラファエルお兄様……手を出してはいけませんよ」
「好色でも流石に手を出す愚かさはありません。一応姫なのですから」
「レイチェル姫……気を付けてくださいね」
「あっ……はい……大丈夫です。襲われても……大丈夫です」
「ん? ……お兄様。私はこれで失礼します。ふふ」
「ええ、お疲れさま」(こいつ、レイチェル姫を値踏みして勝ったことで満足したか……それにしても)
ラファエルはその行為に関する部分で顔が暗くなった事に気になり、レイチェル姫の婚約者を思い浮かべて納得する。しかし、レイチェルに慰めの言葉をラファエルはかけるつもりはない。そこまで仲がいい訳じゃないからだ。まだ。
「ガブリエル……他に……伝えてくれるかい? 姫様はお疲れだと……」
「ええ、お兄様。お自由に」
だからこそ……笑顔で部屋を連れ出す決断をする。
「レイチェル姫……ご飯の時間も全て案内させていただきますが……二人で抜け出しましょう」
「えっ?」
レイチェル姫の手をラファエルは優しく掴む。騎士が姫を引っ張り。そして窓の近くでラファエルは手を離して窓を開け放った。冷たい冬の空気が部屋に入り込む。ラファエルは窓の縁に立ち、レイチェル姫は驚く。
「な、何をするんですか!?」
「ここから抜け出すんです。鍵は閉めていますから大丈夫」
「で、でも!! 落ちたら死にます!!」
「大丈夫、私を信じてください。帝国をご案内しましょう。やる気が出ました」
「で、でも……」
「母上に会わせませんよ?」
「………ぐぅ」
レイチェルは渋々手を掴んだ。その瞬間にフワッとレイチェルは浮き上がり。ラファエルの隣に来る。レイチェルの目の前は帝国の町並みが並び、人が粒のように見えるぐらい高い場所で……レイチェルは後ろに倒れそうになる。
ギュッ
「……ふぅ。安心してください」
ラファエルは知っていた。こういうときは笑顔で優しく抱き締めて言えばいい事を。ウリエルのように安心させればいいと。無理矢理掴み逃げることを許さないラファエルは……
「大丈夫、しっかりと握って。腰に手を……よし!! 行きますよ!!」
フワッ!!
レイチェルと一緒に窓から外に出る。好色王子の相手を惚れさせる手段の一つ……吊り橋効果期待の。
高所から……ダイブだ。
「んんん!!」
勢いよく地面に落ち……レイチェルは目を閉じる。恐怖が……あるが、人の暖かさに頼る。そう、ラファエルに強く抱きついた。
ふよふよ……
そして、大きくむせかえるような風に持ち上げられ、落ちる感覚が無くなり。地面に降り立った。
スタッ
「目を開けてください姫」
「あっはい……」
ラファエルの言葉にレイチェルは目を開けると……そこは帝国の商店街裏路地であり。活気が耳に届く。
「行きましょう。姫」
「えっ!? で、でも……ドレスですし」
「ならば服を買いましょう。大丈夫です」
「えっと……貴族よ……危ない」
ラファエルがレイチェル姫を抱き寄せ耳元で囁く。
「魔法騎士団1番隊長ラファエル。騎士の名誉にかけて護り抜きます。死ぬときは一緒です姫……では……お連れします。一人でも大丈夫な理由をお見せしますから」
レイチェルはラファエルに連れ出されてしまったのだった。
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