(完結)見捨てられた令嬢は王子と出会う。[アルファ、scraiv専用]

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騎士の婚約者

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 私にトラストさんはプロポーズをしてくれた。なぜ私なのかわからなかったが勢いでその手を掴み、今の辛い日常を救ってほしいっと欲を出した。

 結果は…………トントン拍子で婚約が決まる。それも正妻だと言う。

 元婚約者は名家ヌツェルだったがそれと同じぐらいの名家アフトクラトルとの婚約が私の知らないところ。トラストさんと大人たちの話で決まったのだ。

 何も知らされず。気付けば話し合いが終わっており。あとでトラストさんが私に教えてくれるらしい。

 ベットに腰掛けて大人しく待っていると部屋に入ってきた黒い鎧に気圧される。

「トラストさん?」
「はい、トラスト・アフトクラトルです。お嬢さん」

 キザな台詞を恥ずかしげもなく喋る彼。兜を外し、凛々しい顔で私の前に跪く。

「えっと………」
「お手を拝借」

 私の手を取り甲に軽く口をつける。

「トラスト・アフトクラトルはあなたの婚約者とし………あなたを護る事を誓います」
「そ、その!! えっと!!」

 竜と騎士と姫の物語の一説を思い浮かべてしまう。

「どうでしたか? 好きな小説を伺っておりました」
「そ、そうですけど!! 物語は物語で………その当事者に憧れているわけでは!!」
「自分は憧れております。姫様」
「あっうぅ………」

 彼は凄く格好いい。私なんかでいいのだろうか?

「決まった事をお伝えします。お義父さんとの会話で学園卒業させることを条件に婚約が成立しました」
「学園卒業?」
「はい。どうしてもすぐとは言いませんでした。なので父上たちは婚約者と言っても赤の他人と思い。学園卒業まで関係を続けられましたら結婚しても良いとの事です」
「そうですか…………関係を続けれましたら」
「すいません。父親は番隊長。中々曲げたりはしない人です。しかし………学園卒業まで私は待つことにします」
「………本当に待つのですか? 他にいい人でも見つけても」
「アメリアさんは他に誰かいると?」
「い、いないです」
「では、自分もいません。ご安心を………ヌツェル家より義は厚く婚約破棄は相応の罰を受けるつもりです」

 彼が私の手を一切離そうとしない。

「…………本当にいいんですか?」
「泣きそうですよ? 大丈夫ですか?」
「ぐすん………嬉しくて………」
「泣いてください。誰も止めはしません」

 私は泣き虫だ。また、変な所で泣いてしまう。頼りたい………頼りたい。

「お願い……私を……捨てないで」
「騎士道に誓って」

 彼は物語の王子のように宣言するのだった。



 アメリアは泣きつかれて眠ってしまった。泣く姿は心が痛むよりも、何故かか弱い彼女を可愛らしいと思えて罪悪感が湧いた。

「はぁ、変態ですね自分」
「トラスト様。お嬢様は?」
「泣きつかれて寝ています。部屋に入らないように」
「かしこまりました…………本当にお嬢様はトラスト様を慕ってるんですね」
「ん? 何故わかるのです?」
「私は………泣かれても一人で泣きたいと言われて一緒にいられません。トラスト様はずっと一緒です」
「強引なんですよ自分」
「それが……いいんでしょう。引っ込み思案ですから」

 わかる。学園でも大人しいと聞いていた。だからこそ陰口を言われるのだろう。田舎出の貴族令嬢は皆がそうだ。

 汚ならしい。

「トラスト様………今日はどうされるんですか?」
「仕事を残さずに来ました。泊まります。明日からの彼女が心配です」
「………学園卒業ですね」
「ええ、頑張ってもらわないといけません。成績はいいので飛び級が出来るでしょう」

 結婚するには先ず卒業してもらわないといけない。一応は学園は花嫁修行の場。卒業しないとは花嫁としては不適格なのだ。自分は気にはしないが………世間は違う。ヴィス家も花嫁不適格者を出すのは笑いものになってしまうからだ。

「はぁ………まったく。学園なんてただのお遊びでしょう」
「………そうですね。ですが決まった事をグチグチ言わない方がいいと思います。すいません………つい口が」
「いかにも。嫉妬も可愛い使用人だ」
「…………すいません」
「いや、いい………残念だったね。私が貰うよ彼女は」
「はい………どうぞ。妹みたいな子ですがお願いします」

 俺は使用人と別れ廊下を歩く。使用人は深々と頭を下げるのだった。



§



 私は起きる。ベットの上で。

「あれっ!?」

 日はすっかり暗く。時間が飛んでいる錯覚に陥いり。婚約者の前で寝てしまった事を後悔する。泣いて疲れて頭を撫でられて気持ちよくてつい。

「あやまらないと!!」
「何をあやまるんです?」
「ひゃ!?」

 テーブル席で本を片手にトラストさんはいた。

「驚かないでください。婚約者です」
「えっ………帰ったのではないのですか?」
「いつか夫婦になるのです。今から同棲の練習をしても問題はないでしょう」
「…………急すぎです」
「夜泣きするでしょ?」
「………たまにですが。ご存じですね」
「小説家目指しているときに。心の病で苦しむ主人公を書こうと医者や本で勉強していたのです。だから………普通に接する事が出来るんです。たまたまですね。書くのは諦めました」

 そんな事ってあるんだっと私は驚く。私の病は外傷は無い。だから………皆が健康だと思って話しかけてくる。だからなのか………健康だと偽って無理をして体調を悪くしてしまう。

「だから気にせずに相談してください。受け流します」
「受け流すんですね……」
「同情や一緒になって病むと引き込まれますから」

 彼は凄い。そこまで学んでるんだ。情が深いと入りすぎて自分まで滅入ってしまう。看病のし過ぎてミイラ取りがミイラになる人もいる。

「ですから。ほどほどに対応しますよ……自由に気を使わず」
「はい。その方が私も楽にできます」
「………ですが」
「はい?」
「気分で王子もします」
「…………それは。恥ずかしいのでやめてください」
「恥ずかしい姿も可愛いですね」
「やめてください!!本当に!!辛いんです!!」
「顔真っ赤ですね。ご飯はどうしますか?」

 私はドキドキが止まらず。そのまま一言。

「一緒に食べます」
「よかった」

 本当になんでこの人は私にここまで優しいのだろうか?





「えっと、お話があります」

 食事後、彼女が私を引き留める。部屋は別なのを借りている。向かおうとしたとき服を掴まれた。

「なんでしょうか?」
「少し、お話しをと。親睦を」
「いいですよ。いや、夜更かしはいけませんね」
「少しだけ………」
「明日でどうですか? 婚約者として長い時間共にします。明日でも大丈夫ですね」
「…………はい」
「すいません。眠くて眠くて」
「ご、ごめんなさい!!」
「いいえ」

 優しく演じる。王子を演じる。俺は………誉められた人間ではない。

「それではおやすみ」

 額の髪を退かしてキスをする。魔力のカンテラの光の強さでもわかるぐらいに婚約者は両手でおでこを触りながら紅くなった。可愛いですね。

「あっう………」

 大人っぽい彼女ですが。こういう仕草は14才の子供。大人っぽく見えるのは口少なく。大人しいからだろう。

「お、おやすみなさい」
「…………明日は遅いです」
「はい」

 自分はニヤける口を押さえて寝室へ向かった。新しい生活に胸を踊らせながら。





 初めてのキスは頭の額だった。暖かい感触で私は頭が真っ白になる。遠くなる彼の背を見つめながら体を抱いた。

「いつか………これが口とか………」

 変な想像で頭が沸く。振り回し考えを外へ追い出そうと追い出そうとする。

「うぅううう」

 数ヵ月前では想像できなかった甘い生活が待っている。頬をつねる私は確信した………これは夢ではない。現実なのだと。

 何が切っ掛けだったかわからない。

 だけど、素晴らしい婚約者が出来た。それも凄くかっこよくて………前の婚約者よりも何倍も………好きになれそうだった。

 聞きたい。どうして私を選んだかを。

「トラスト様…………」

 体が火照って熱い。キスだけで体がドキドキする。

「…………」

 明日もしてくれるかな…………


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