オタク、婚活したってよ

みやび

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きっかけと総括

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きっかけと総括


 まずは婚活のきっかけについて記そう。

 私が婚活をしようと思った理由は単純明快だ。子どもが欲しかった。それは、恋愛の延長線上にある「愛した人の子が欲しい」というロマンチックなものではない。本能に根差したものだ。生き物として生まれた以上、子孫を残したい。
その思いは、結婚の「け」の字も頭になかった若い頃から強く思っていた。
また、私は一人では生きていくのが難しいところがあると自己分析をしていて、「家族」というものを欲していた。自分の人生には伴走してくれる人が必要だと思ったのだ。

 だが、しかし、私はスロースター過ぎた。三十の声を聞く頃になってようやく重い腰を上げたのだ。「普通」の人ならとっくに結婚するか、結婚を前提にした恋人がいるような年頃を過ぎようとして、ようやく「このままでは結婚出来なくない?」と思い至ったのだ。
先にも述べた通り、私は彼氏いない歴=年齢である。結婚どころか交際経験もない。人からの紹介も見込めない。そんな私が色々ステップを飛ばして結婚するには、「婚活」しかなかった。

 いざ婚活、となった時にどの手段を取ろうかと考えた。
婚活パーティー、アプリ、相談所と主に選択肢は三つある。
しかしながら、アプリは周りの既婚者が「遊び」目的で利用していることを知っていたせいか、既婚者が容易に潜り込めるツールであると思った。交際経験もない私には、既婚者や詐欺目的の人間を見抜くのは無理だと思い、断念した。
また、Webサイト全盛期を知っているオタクとしては、写真やプロフィールをネットにアップすることに激しい抵抗があった。SNSでさんざんオタクしていて言うのはあれだが、ネットにはリアルは持ち込みたくなかった。
婚活パーティーは、オタクあるあるな人見知りな上に、初対面の人と短時間に会うと考えただけで具合が悪くなってしまい、諦めた。

以上のことから、消去法で相談所を手段として定めた。
相談所は、確実に独身しかいないし、それなりの金銭が発生する分、真剣に結婚を考えている人しかいない。結婚まで最短ルートを目指す私には適切なツールだ。

ここで、問題が発生する。
結婚相談所について、私は何も知らなかった。
色々調べたりはしたが、当時は婚活ブログの存在も知らず、まして、リアルな知り合いに「婚活してます?」などとは聞けるはずもなく、積みかけた。
結局のところ、職場の福利厚生的な相談所に行きついた。
後から振り返れば、これが失敗だった。
超アナログで、プロフィールは紙管理。紹介は仲人さん経由という仕組みだ。情報漏洩リスクが低いことと、「正規雇用の給与所得者」という条件を満たせることは魅力的だったが、とにかく会えない。お見合い自体が年に数回。入り口からして狭き門だ。会員資格が、原則職場つながりのグループの正規雇用者限定なのは安心だが、会員数は少ない。
それでも、その頃は営業トークの「市井の相談所の成婚率は4%程度だけど、うちは20%くらい」の文言に踊らされていた。よく考えてみれば、母数が少な過ぎて、数字に意味はないのだが、婚活初心者はまんまと引っかかって、ここで「なんちゃって婚活」「イマジナリー婚活」に三年も費やすという結果になったのである。

 もっとしっかりリサーチしておくべきだった。その報いとして、貴重な若い時間を費やして、「何の成果も得られませんでしたー!!」をやってしまったのだ。

 その後、ようやく三年目にして、「このままでは結婚出来ない!」と気づいて、大手相談所の門を叩くことになるのだ。
きっかけは、イマジナリー婚活であることに薄々気づきはじめて、婚活パーティーに試しに行ってみたことだ。
オタク向けを謳っていたので、期待したが、せいぜい「ワンピースが好き」「エヴァンゲリオンを見ます」「ドラクエを知ってます」程度のライト層ばかりで、「エヴァで最推しの回は?」とか「エヴァの使徒は~」などという会話が出来る雰囲気ではなく……当たり障りのないトークを繰り返すという疲労感ばかりが溜まる結果になった。
マッチングはしたが、特に縁にはつながらなかった。
しかしながら、ここで退室前に相談所に勧誘されたことで、相談所について詳しく知ることが出来、いかに現在の所属相談所が遅れていて、会員数が少なすぎることを知れたのは有意義だった。
私は多額の費用にビビりながらも、「成婚率は15%程度かも知れないけど、いまのままでは0%だ。なら、1%でも可能性に賭けたい」と思い、ガチな婚活に踏み出したのである。

 そして、一度は成婚退会にまで至った。だが、その後に破談となり、もう一度相談所を変えて婚活をするというなかなか波瀾万丈な婚活人生を送ることになる。
再入会後に現在の配偶者と出会い、無事に結婚。結婚生活も続いている。
失敗から学ぶとことも多く、自分自身を見つめ直し、人間的にも成長出来たので、五年の婚活は無駄ではなかったと思う。いまがあるのは過去の積み重ねのおかげだ。何より、配偶者に会うタイミングがベストタイミングになれたのも回り道のおかげである。その意味でも、天の配剤や運命というような言葉にも感謝が必要かも知れない。
少なくとも、現在の私は幸せだし、家庭も円満である。おそらく、他の人とではそうはいかなかったのだろう。「縁」とはよく言ったものだ。
運良く結婚出来ただけだとは繰り返し記載しているが、その「運」を引き寄せるための学びを重ねて努力はしてきた。その結果が現在につながっている。確かに運が良かったことは認めるが、運を結果に導くために出来ることはなんでもしたからこその結果である。

また、もし結婚出来なくて一生独身でも、婚活で培った様々な経験は決して無駄にはならなかったと思う。人間的に成長出来たことを糧に、人生を豊かにすることは出来たと思う。
ちなみに、一生独身なら、友人たちと同じマンションの別部屋に住む計画もあった。それもそれで、充実した人生の可能性をふんだんに秘めていただろう。
なお、友人はオタクしかいないので、オタ充には困らなかったに違いない。

 結婚しようがしまいが、生涯オタクは変わらない。それが、私である。
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