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森林波瀾篇
錯乱
しおりを挟む「で?お前。何したか分かってる?」
僕と人型の声の主は、『おうち』に帰ってきて、ソファに向き合う形で座り合っていた。
声の主は、ソファに座って足をプラプラさせている。
僕は怒っていた、ブチギレである。こんな憤り、健二にすら感じたことがなかった。
なぜなら、いつのまにか何処とも知れないところに連れてこられたのだから。
「うむ。分かっている。私は、私の目的のためにお前を召喚した。」
声の主は淡々と語った。
「だからその目的ってなんだよ!さっきから聞いてるだろ!!??」
そう、僕が連れられて幾ばくか時間が経っているが、何か質問しても、『声の主』は答えてくれないのだ。
「それは、言えぬ。」
「はぁ??」
もう、怒りすぎて、むしろそれを通り越して呆れていた。
「はぁ、じゃあもういいわ。こうなったものは仕方ない。それは割り切る。」
「そうだな。それが私としても一番ありがたい。」
「……で、僕はこれからどうすればいいんだ?」
「そうだなぁ。……お前がここに来たのは完全に私のわがままだ。なので、お前の一切は私たちが面倒することにしよう。それでは不満か?」
「いや、僕はこの世界の対価とか分からないんだけども。」
そう。僕が召喚されたこの場所。なんとビックリ異世界ではありませんか!?
さっき、魔法を見せてもらって、納得したのだ、というか、無理やり自分を納得させた。まあ、魔法なら最初に見たんだけどね。
後に、優希は、あの転移魔法が相当やばいものだったことを知る。
「あ、それもそうか。ならば、それで決定してしまうが、良いか?」
「うん。まあいいよ。」
こうして、優希は悪魔のような契約をしてしまったのだが、そんなこと、優希の知れる範疇にはない。
**********
声の主は、優希のことをお前と呼ぶことを不便に感じていた。
「ところでお前。名前はなんと言うんだ?」
「名前?俺の名前は、遠藤優希だ。」
「エンドウ…ユウキ。そうか。あそこはニホンだったな。ということは、エンドウがファミリーネームか。」
「?あぁそうだ。」
「ならば、お前は今日からユウキ・エンドウと名乗れ。その方が楽であろう。」
「?分かった」
「ところで、お前の名前はなんだ?」
声の主に名前を聞き返した。
「私か?私は《空間の神》カオスだ。」
「…………??カオス?混沌?」
ん??え?なに?かおす?中二病が多用するあの「カオス」か?
う、うわぁぁぁぁ!!お、俺の封印されし右腕が!!!
しまった。つい昔の癖が……まあ、そんなことはどうでもいいだろう。
それって名前なの?
(こいつ大丈夫なのか?)
心底そう思った。
しかし、そんなことは杞憂であった。
「ユウキは何を戸惑っておるのだ。あぁ、私が神と名乗ったことか?安心せよ。私は正真正銘の神だ。」
カオスは雄弁と語った。
「そこじゃねぇ!カオスって……」
僕はすぐさま訂正を入れた。神であるとかないとか、そういうお話はもうすぐ受け入れた。こんな魔法を使える世界なんだ、神がいてもおかしくない、と。
「なんだ?あちらの世界でいう、ギリシア神話に登場するだろ?《空間神》カオスが。それは私のことなのだよ。」
この発言が、ユウキをさらに混乱させることになるのだが、カオスにそんなことが理解できるわけがない。
「???《空間神》カオス??てか、そんな神いたの?知らなかったんだけど」
カオスは、ユウキのその発言に絶句した。
「は!?え?なっ、なぜだ!!あちらの世界で『カオス』や『混沌』とよく言うらしいではないか!それなのに!なぜ《空間神》カオスの名は知られていないのだ!!おかしいではないか!!」
僕がカオスのこの反応を見て面白がっていたのは、ここだけの話である。
「まあ、ゼウスとかアポロンとかは有名だと思うけどさ、カオスなんて神、初めて聞いたよ?」
僕は正直に話した。ここは現実を見てもらおう。
「そ、そうなのか……それはあいつらなのか?うーむ、これは私の存在をあちらの世界に知らしめる必要があるな。」
カオスは、その後ブツブツと何やら唱えていたが、一貫して無視することにした。
「まあ、名前とかはもういいでしょカオス。ところで、お前神なんだよな?それより、ここはどこなんだよ。」
「おお、そうか。まだ一切の説明をしておらんだな。では、ざっくりと説明するとしよう。」
「ああ、頼む。」
カオスがこれから、この世界について説明してくれるらしい。
僕の心の内は、正直、まだにわかにも信じられない、というのが本音である。なので、この世界のことを聞いて、色々と考えたかったのだ。
「分かったか?ユウキよ。」
「分かったような、分かってないような……ん?あれ?」
「どうしたユウキ」
「いやぁ、なんで会話が出来てるのかなって。神様が日本語使ってるのかい?」
そう。ふと疑問に思った。それは、"なぜ対話が出来ているのか"。
僕は日本語を話しているつもりだった。
しかし、カオスが日本語を話していて、ユウキに合わせていなければ、ここでの対話は通用しないわけだ。
しかし、そもそもの問題としてこんな異世界で日本語が使えるのか、という問題がある。
結局のところ、状況が分からないのだ。
「あぁ。言語のことか。それの説明を欠いていたな、すまない。この世界の言語は、そちらの世界とは違って統一されている。だから、あらゆる人間と気兼ねなく対話ができるぞ。」
ほうほう。ん?いや、あの、一旦僕は今カオスが何を話しているか聞いたと思うんですが。
カオスはさらに続けた。
「そして、お前をここに連れてくる際に、脳をいじった。脳の記憶媒体の一部を空間ごと改竄し、お前の記憶媒体にこの世界の言語の情報を上書きさせてもらった。あ、安心してよい。日本語などのあちらの情報は残してある。」
…………………………
なんかサラッとお化けみたいなこと言ってないか?この神さま。
なに、記憶の改竄って。神さまってそんな凄いの?
僕は言葉が出せなかった。
「どうした、何か話さんか。」
いや、話したくても、聞きたいこと山ほどあるけど!!
まあ、もういいや。
結局、さっきのカオスの説明を聞いても、対して理解できなかった。
その内容とは、
1.ここは前いた世界とは時間軸、空間軸の異なるパラレルワールド、つまり異世界である
2.この世界には『魔素』というものがあり、人間などの生物は、それを用いて魔法を使用することができる
3.『魔素』は、モンスターの源となっており、この世界ではモンスターが徘徊しているまた、モンスターは『魔素』で形成されている
4.この世界の人間は、「ギルド」を作成し、脅威に対抗をしている
5.この世界には、5大陸と呼ばれる5つの大陸が存在する
6.それぞれの大陸は、神が統治している
ざっとこんな具合だ。
なんとまあ"ゲーム"の世界なのでしょうか。
これを聞いて、思考の仕方を変えることにした。
「なあ、ちょっと外で色々やってみてもいいか?」
「ん?あぁ、それは構わないぞ。だが、私の従者を監視役としてつけるがな。今のお前では危なすぎるのでな。」
そう。こんなゲームみたいな世界なんだ。きっと、前の世界以上に楽しいだろう。『ギルド』もあるようだし、ますます。
勇者とかいるのかな。などと考えたのだ。
「それはいい。なら、もう行っていいか?」
「いいぞ。では、……ゼピュロス。お前がついて行ってやれ。お前であれば最悪の事態は起きないだろ?」
カオスがそう言うと、どこからかその『ゼピュロス』がやって来た。
「はっ、お任せください。その任務、この身をもって遂行いたします。」
「うむ。」
「あのー、カオスさん?」
「なんだユウキよ。」
「ゼピュロスって、《風の神》ゼピュロスなのか?」
ようやく落ち着いた心をまたも錯乱させられた気分だった。
なぜなら、神であるカオスが、神であるゼピュロスを従者と呼び、使役していたからだ。
《風の神》ゼピュロスのことは知っていた。いつか、小学生かいつかのときに、友人と調べたのだ。そのきっかけすらも忘れたが、なぜかその名前だけは覚えていた。
「あ、あぁ。そうだが?それがどうしたんだ?」
「……いや、なんでもない。」
そのとき、なんとなく空気を読んだのは好セーブだっただろう。正直に話したら、ゼピュロスの身が危ないと予知したからだ。
「ならばよい。さっさと行くがよい。」
カオスはそう言い、2人を送り出した。
カオスを上手く騙せたと思ったが、後ろから「ゼピュロス、お前、後で覚悟しておけよ。」という声が聞こえ、ゼピュロスには申し訳ないことをした、と思ったのだった。
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