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森林波瀾篇
いわゆるボス戦?
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「ところでユウキ様。この修行の目的、覚えておられますかな?」
ゼピュロスは、ユウキがそれを忘れてるであろうから、一応叩いておくことにした。
「ん?目的?僕の強化じゃないの?」
やはりだった。
「はぁ。まあ、良いでしょう。これの当初の目的は、『邪悪な魔物の討伐』です。おそらくの査定ではありますが、《中級魔法》である風の化身(ウィンドアバター)を会得した貴方様なら、難なくクリアすることができるでしょう。」
「えぇ……僕、そんなことしないといけないの?」
「えぇ。しなければなりません。これも修行の一環なのです。」
ゼピュロスは、ユウキを諭すように言った。
ゼピュロスが見るからには、その効果はあった。まあユウキからしたら何のことやら、なのだが。
……?え?また?
「チッ。しょうがねぇか。いいよ。やるよ。んで、誰を殺ればいいんだ?」
「お、乗り気ですね?いいですよ。今回はですね、ランクBのデッドウルフです。ランクが上がっていることからも、先ほどのウルフより強いのは分かるとは思います。まあ、その他については戦闘中に気づいてもらいましょうか。」
ゼピュロスはこう説明した、のだが、
「ん?今回?てことは、次回もあるのか?」
「……え、えぇ。まあ、邪悪な魔物は数多存在している故。」
「なるほど」
その後、そのデッドウルフの元に向かうのであった。
◆◇◆◇◆
「いましたいました。あそこにいるのがデッドウルフです。では、私はいつものようにしているので、ユウキ様。健闘を祈りますよ。」
そう言うと、ゼピュロスはまた空間から消えた。
「チッ。やるっきゃねぇか。」
"俺"もやる気を出すことにした。そして、いつものように枝を構える。
デッドウルフもこちらに気づいたようで、今にも走りだそうとしているところだ。
(なんで走らないんだ?)
単純に疑問に感じた。
そう。これまでの大概の魔物は、こちらを発見するやいなや、攻撃を仕掛けてきたのだ。なのに今回はそれがない。
(怯えているわけでもなさそうだし、てことは……)
RPGでは、自分よりレベルが低いモンスターとのエンカウント率が下がる、という仕様が時たま見られる。
ユウキは《中級魔法》風の化身(ウィンドアバター)を会得しているので、ある程度格は上がっているだろうし、戦闘力自体はこのデッドウルフよりも大きいだろう。
つまり、その方式がこの世界で採用されているのならば、自分よりも弱い相手ならば、怯えて逃げ出すのだ。
しかし、このデッドウルフにはそれがない。
ゼピュロスが俺に闘わせるんだ。素人と闘わせる魔物には、そう強い魔物ではないだろう、……あ、ランクBだっけか?そんなの、、忘れた。気にしない…
ここで、ユウキは考え、ある1つの結論に辿り着く。
(こいつ、自我があるのか?)
魔物の大概は、自我を持っていない。それは幾多の魔物との戦闘で分かっていた。
しかし、こんなに思考が飛躍していていいのだろうか。
いいんだよ!!
ここは異世界だぜ?何でもありなんだ。
俺は戦闘を始めることにした。
俺がデッドウルフへと走り出すと、デッドウルフがそれを待っていたかのように走り出した。
俺は、いつものように『お手製レイピア』でデッドウルフを突き刺す。
「!?チッ」
なんと、『お手製レイピア』がデッドウルフに通用しなかったのだ。
確かに突き刺した。それは間違いない。しかし、手応え0。相手の傷0。つまり、ダメージを入れられないようだ。
ここで、"僕"は自身のRPGの知識を活かすことになる。
(デッドウルフ?デッド?死?もしかして、霊体なのか?それなら、物理攻撃が効かないのは納得だけど)
(風の化身ウィンドアバターを使ったとしても、あれは身体を覆うだけ。結局行うのは物理攻撃だ。俺は、どうやってもあいつに勝てない、のか?)
"俺"は、迫り来るデッドウルフの襲撃を何とか捌きながら思考する。
(物理攻撃がダメなだけでしょ?風の化身(ウィンドアバター)が無理なんて決まってないじゃん。)
……!?"僕"は、考えていただけなのに、なぜかそれは僕の中で言葉として表されたのだった。
(さっきも言っただろ。風の化身(ウィンドアバター)を使用したとしても、結局は殴ることになるんだよ。……てかお前、なんで喋れてんだ?)
(そう!なんで!!??)
(知るかよ)
そう。そんなこと、俺の知ったことじゃねぇ。
(僕、ほんとになんで君に干渉出来てるの?今までの戦闘って、全部僕見てただけなんだけどさ。)
(どうせ、《中級魔法》を取得したから、精神の扱いも容易に出来るようになったんだろ。俺は、"精神体"だからな。)
そう。今僕と話しているのは、もう1人の僕だ。
(精神体?)
当然、前の世界ではこんなことはなかった。だけど、こっちの世界に来て、こいつが僕の中に現れたのだ。
(まあ、それはいっか。)
(あぁ。今は目の前の敵に集中することだ。)
(ところでそれなんだけどさ、風の化身(ウィンドアバター)って風を纏うわけでしょ?なら、その纏ってる風を手に着けて、それで殴ればいいんじゃない?それって魔法で殴ることになるでしょ?)
(……そうか?まあ、やってみるだけやってみるわ。そもそも、それが技術的に出来るか分からんけどな。)
(それは大丈夫!)
(なんでだよ……)
(こういうときって、大概新しいこと出来ちゃうんだよ!?)
(…………)
俺は、唖然として声すら出なかった。
俺は、意識をデッドウルフに完全に向けることにした。
「風の化身となり、我に力を与えよ!!風の化身(ウィンドアバター)!!」
そう放つと、ユウキの身体はみるみるうちに風に包み込まれていく。
そして、自分の腕に意識を集中させる。といっても、デッドウルフは依然としてこちらに殴りかかっているので、それを回避しながら、だ。
(腕については僕がやる!お前は回避に専念してくれ!)
俺は一瞬戸惑ったが、
(あぁ。分かった。早いとこやってくれよ?)
(もちろん!)
僕は、風を腕に纏わせることに集中した。
(まず、腕に意識そのものを集中させて、身体の風を移動させるイメージで…………ん?あ!!これじゃだめじゃね!?)
このやり方の致命的な箇所に気がついた。
それは、腕に風を纏わせることで、身体を覆っていた風が薄くなるのだ。
そんなこと、当然攻撃力と防御力の両方が求められるRPGでやってはいけない行為だと考えていた。
ワンパンとか嫌だし。
(……さて、どうしようか。)
(…………)
(…………あ、また呪文改変すればいいんじゃね?)
(………………よし。たぶん大丈夫。)
俺は、デッドウルフに意識を集中させてはいるが、デッドウルフの攻撃は速く、重い。正直、弾くだけで精一杯だった。
それと、疑問に思ったのが、なぜこちらの物理攻撃が通じずに、あちらは物理攻撃を撃つのか。
まあ、これはゼピュロスを問いただせばいい話。俺はデッドウルフについて考えることにした。
(考えるにしても、あいつが早いとこ腕に風を纏わせる方法を探ってもらわないと、なんともならんな。)
あいつを待つとしよう。
(出来たよ!)
(おお!思ったより早かったな。早いとこやってくれ。)
(ああ。)
「風よ、我が『四肢』に纏え!!能力付与-風(ウィンドエンチャント)!!」
ユウキがそう言い放つと、ユウキの四肢、手足は風の塊で覆われた。
「おお!なんだこれ!?」
(僕たちの手足の風の層を強化した。これであいつを殴れるだろうし、たぶん僕らのスピードも上がっていると思うよ。この手のものは大概そうなんだ。)
(そ、そうか。まあ、足はさておき、手は完了ってわけだ。んじゃ、サクッと終わらせますか。)
(んだね。)
"2人"は、その後、デッドウルフを一瞬にして倒したのだった。
(おい!すげーじゃねぇかあれ!手もそうだけど、足だよ足!!!スピードが半端じゃなかったぜ!?)
(まあ、そうだろうね。)
あいつの反応を聞いて楽しんでいたかったが、そんな余裕はなかった。
「ユウキ様。今のはなんです?何をしたのです?」
そう、ゼピュロスへの対応である。
デッドウルフと交戦しているときに、
(そういえばお前、あのゼピュロスって奴、あんま信用しない方がいいぜ?奴からはお前、いや、俺らに対する嫌悪、憎悪が流れ出てる。だから、俺はあんまり相手にしたくはないんだが…)
(え?そーなの?そんなこと全然感じなかったけど)
(異世界にいて、魔素とは無縁の生活をしていたお前は間違いなく感知出来ねぇだろうよ。こっちの普通の奴らでもたぶん無理だ。俺は特別なんだよ。)
(特別?)
疑問に感じた。いや、元々感じていた。そもそも、なぜこんな存在がユウキの中に発生したのか。
ゼピュロスがユウキに対して憎悪を抱いているなど、考えられもしなかった。
(ああ。なんせ、俺はお前が通ってきた、あの有象無象が漂うなかに、一緒に漂っていた『物』の1つだからな。)
(ん、えぇっと、まあ、そうでもないと、この世界に来て僕の中に現れた理由なんてないか。)
(ああ。俺はな、…………まあいい。あの中は特別でな。この世界だって、あっちの世界だって見れるし、特殊能力だって発現する。というか、あそこで発現するんだよ。)
仕方ないか。こうなったら、昨日今日会った人よりも、自分を信じよう…って、こいつとも最近会ったばっかじゃね?というか今だ!!
……まあいっか。
(そうか。まあ、お前はもう1人の"僕"だし、お前の方を信じるよ。)
(ああ。だからな。俺の存在をゼピュロスに言わないで欲しいんだ。)
(え?なんで?)
(なんでってお前……まあ、その~、あ!俺の勘だ。信じろ。)
(そんなむやみに信じられはしない…けど……てか、なんで言うのに悩んでた!?……うーん、まあいいよ。その方向性で行くよ。)
(お前のその納得の仕方には不満だが、まあいい。)
というやり取りをしていた。
どうやら、彼いわく、ゼピュロスは何やら危ない存在らしい。僕は、それを加味して行動することにしよう。
その途中、枝について聞いてみた。
(なぁ、なんでこの枝こんなに硬いんだ?)
(あ、あぁそれか。この世界には魔素が充満している。それは、物質に影響を及ぼすんだ。この枝の場合は、魔素によって硬化しているんだよ。)
(へぇ。)
なんとまあゲーム仕様なのでしょうか。
……そんなことはどうでもいっか。枝は硬い。それだけで十分なのだ。
…………
そんなのでいいわけがない。
「あれ?枝で突いてもどうにもダメージが入らなかったみたいだったから、手に風の層を作って、それで殴った。まあ、要は魔法で殴ってたんだな。」
ユウキはこの部分に関しては本当のことを話した。なんてったって、ここは普通に話していいことだし、隠してもバレることだし、そもそもゼピュロスは隠すことに違和感を覚えるだろうから。
「!?なるほど!それは素晴らしい。私は、ユウキ様はデッドウルフに倒されると思って、回復魔法の準備をしていたのですが、無駄足だったようですね。」
おっと、ゼピュロスさんは僕のために回復魔法の発動の準備をしていてくれたようだ。
……ってまて。それって僕が倒される前提じゃねぇか!
まあ、そんなことはいいや。
「さて、デッドウルフ討伐も完了したことですし、今日はこの辺で城に帰りましょうか。」
「ああ。もう疲れた。帰ったらすぐ寝る。」
「おほほ。体力はまだまだのようですな。これは鍛え甲斐がありそうです。」
僕は、ゼピュロスが不敵な笑みを浮かべたが、それは見なかったことにした。
そして、2人、もとい"3人"で城に帰ることにした。
ゼピュロスは、ユウキがそれを忘れてるであろうから、一応叩いておくことにした。
「ん?目的?僕の強化じゃないの?」
やはりだった。
「はぁ。まあ、良いでしょう。これの当初の目的は、『邪悪な魔物の討伐』です。おそらくの査定ではありますが、《中級魔法》である風の化身(ウィンドアバター)を会得した貴方様なら、難なくクリアすることができるでしょう。」
「えぇ……僕、そんなことしないといけないの?」
「えぇ。しなければなりません。これも修行の一環なのです。」
ゼピュロスは、ユウキを諭すように言った。
ゼピュロスが見るからには、その効果はあった。まあユウキからしたら何のことやら、なのだが。
……?え?また?
「チッ。しょうがねぇか。いいよ。やるよ。んで、誰を殺ればいいんだ?」
「お、乗り気ですね?いいですよ。今回はですね、ランクBのデッドウルフです。ランクが上がっていることからも、先ほどのウルフより強いのは分かるとは思います。まあ、その他については戦闘中に気づいてもらいましょうか。」
ゼピュロスはこう説明した、のだが、
「ん?今回?てことは、次回もあるのか?」
「……え、えぇ。まあ、邪悪な魔物は数多存在している故。」
「なるほど」
その後、そのデッドウルフの元に向かうのであった。
◆◇◆◇◆
「いましたいました。あそこにいるのがデッドウルフです。では、私はいつものようにしているので、ユウキ様。健闘を祈りますよ。」
そう言うと、ゼピュロスはまた空間から消えた。
「チッ。やるっきゃねぇか。」
"俺"もやる気を出すことにした。そして、いつものように枝を構える。
デッドウルフもこちらに気づいたようで、今にも走りだそうとしているところだ。
(なんで走らないんだ?)
単純に疑問に感じた。
そう。これまでの大概の魔物は、こちらを発見するやいなや、攻撃を仕掛けてきたのだ。なのに今回はそれがない。
(怯えているわけでもなさそうだし、てことは……)
RPGでは、自分よりレベルが低いモンスターとのエンカウント率が下がる、という仕様が時たま見られる。
ユウキは《中級魔法》風の化身(ウィンドアバター)を会得しているので、ある程度格は上がっているだろうし、戦闘力自体はこのデッドウルフよりも大きいだろう。
つまり、その方式がこの世界で採用されているのならば、自分よりも弱い相手ならば、怯えて逃げ出すのだ。
しかし、このデッドウルフにはそれがない。
ゼピュロスが俺に闘わせるんだ。素人と闘わせる魔物には、そう強い魔物ではないだろう、……あ、ランクBだっけか?そんなの、、忘れた。気にしない…
ここで、ユウキは考え、ある1つの結論に辿り着く。
(こいつ、自我があるのか?)
魔物の大概は、自我を持っていない。それは幾多の魔物との戦闘で分かっていた。
しかし、こんなに思考が飛躍していていいのだろうか。
いいんだよ!!
ここは異世界だぜ?何でもありなんだ。
俺は戦闘を始めることにした。
俺がデッドウルフへと走り出すと、デッドウルフがそれを待っていたかのように走り出した。
俺は、いつものように『お手製レイピア』でデッドウルフを突き刺す。
「!?チッ」
なんと、『お手製レイピア』がデッドウルフに通用しなかったのだ。
確かに突き刺した。それは間違いない。しかし、手応え0。相手の傷0。つまり、ダメージを入れられないようだ。
ここで、"僕"は自身のRPGの知識を活かすことになる。
(デッドウルフ?デッド?死?もしかして、霊体なのか?それなら、物理攻撃が効かないのは納得だけど)
(風の化身ウィンドアバターを使ったとしても、あれは身体を覆うだけ。結局行うのは物理攻撃だ。俺は、どうやってもあいつに勝てない、のか?)
"俺"は、迫り来るデッドウルフの襲撃を何とか捌きながら思考する。
(物理攻撃がダメなだけでしょ?風の化身(ウィンドアバター)が無理なんて決まってないじゃん。)
……!?"僕"は、考えていただけなのに、なぜかそれは僕の中で言葉として表されたのだった。
(さっきも言っただろ。風の化身(ウィンドアバター)を使用したとしても、結局は殴ることになるんだよ。……てかお前、なんで喋れてんだ?)
(そう!なんで!!??)
(知るかよ)
そう。そんなこと、俺の知ったことじゃねぇ。
(僕、ほんとになんで君に干渉出来てるの?今までの戦闘って、全部僕見てただけなんだけどさ。)
(どうせ、《中級魔法》を取得したから、精神の扱いも容易に出来るようになったんだろ。俺は、"精神体"だからな。)
そう。今僕と話しているのは、もう1人の僕だ。
(精神体?)
当然、前の世界ではこんなことはなかった。だけど、こっちの世界に来て、こいつが僕の中に現れたのだ。
(まあ、それはいっか。)
(あぁ。今は目の前の敵に集中することだ。)
(ところでそれなんだけどさ、風の化身(ウィンドアバター)って風を纏うわけでしょ?なら、その纏ってる風を手に着けて、それで殴ればいいんじゃない?それって魔法で殴ることになるでしょ?)
(……そうか?まあ、やってみるだけやってみるわ。そもそも、それが技術的に出来るか分からんけどな。)
(それは大丈夫!)
(なんでだよ……)
(こういうときって、大概新しいこと出来ちゃうんだよ!?)
(…………)
俺は、唖然として声すら出なかった。
俺は、意識をデッドウルフに完全に向けることにした。
「風の化身となり、我に力を与えよ!!風の化身(ウィンドアバター)!!」
そう放つと、ユウキの身体はみるみるうちに風に包み込まれていく。
そして、自分の腕に意識を集中させる。といっても、デッドウルフは依然としてこちらに殴りかかっているので、それを回避しながら、だ。
(腕については僕がやる!お前は回避に専念してくれ!)
俺は一瞬戸惑ったが、
(あぁ。分かった。早いとこやってくれよ?)
(もちろん!)
僕は、風を腕に纏わせることに集中した。
(まず、腕に意識そのものを集中させて、身体の風を移動させるイメージで…………ん?あ!!これじゃだめじゃね!?)
このやり方の致命的な箇所に気がついた。
それは、腕に風を纏わせることで、身体を覆っていた風が薄くなるのだ。
そんなこと、当然攻撃力と防御力の両方が求められるRPGでやってはいけない行為だと考えていた。
ワンパンとか嫌だし。
(……さて、どうしようか。)
(…………)
(…………あ、また呪文改変すればいいんじゃね?)
(………………よし。たぶん大丈夫。)
俺は、デッドウルフに意識を集中させてはいるが、デッドウルフの攻撃は速く、重い。正直、弾くだけで精一杯だった。
それと、疑問に思ったのが、なぜこちらの物理攻撃が通じずに、あちらは物理攻撃を撃つのか。
まあ、これはゼピュロスを問いただせばいい話。俺はデッドウルフについて考えることにした。
(考えるにしても、あいつが早いとこ腕に風を纏わせる方法を探ってもらわないと、なんともならんな。)
あいつを待つとしよう。
(出来たよ!)
(おお!思ったより早かったな。早いとこやってくれ。)
(ああ。)
「風よ、我が『四肢』に纏え!!能力付与-風(ウィンドエンチャント)!!」
ユウキがそう言い放つと、ユウキの四肢、手足は風の塊で覆われた。
「おお!なんだこれ!?」
(僕たちの手足の風の層を強化した。これであいつを殴れるだろうし、たぶん僕らのスピードも上がっていると思うよ。この手のものは大概そうなんだ。)
(そ、そうか。まあ、足はさておき、手は完了ってわけだ。んじゃ、サクッと終わらせますか。)
(んだね。)
"2人"は、その後、デッドウルフを一瞬にして倒したのだった。
(おい!すげーじゃねぇかあれ!手もそうだけど、足だよ足!!!スピードが半端じゃなかったぜ!?)
(まあ、そうだろうね。)
あいつの反応を聞いて楽しんでいたかったが、そんな余裕はなかった。
「ユウキ様。今のはなんです?何をしたのです?」
そう、ゼピュロスへの対応である。
デッドウルフと交戦しているときに、
(そういえばお前、あのゼピュロスって奴、あんま信用しない方がいいぜ?奴からはお前、いや、俺らに対する嫌悪、憎悪が流れ出てる。だから、俺はあんまり相手にしたくはないんだが…)
(え?そーなの?そんなこと全然感じなかったけど)
(異世界にいて、魔素とは無縁の生活をしていたお前は間違いなく感知出来ねぇだろうよ。こっちの普通の奴らでもたぶん無理だ。俺は特別なんだよ。)
(特別?)
疑問に感じた。いや、元々感じていた。そもそも、なぜこんな存在がユウキの中に発生したのか。
ゼピュロスがユウキに対して憎悪を抱いているなど、考えられもしなかった。
(ああ。なんせ、俺はお前が通ってきた、あの有象無象が漂うなかに、一緒に漂っていた『物』の1つだからな。)
(ん、えぇっと、まあ、そうでもないと、この世界に来て僕の中に現れた理由なんてないか。)
(ああ。俺はな、…………まあいい。あの中は特別でな。この世界だって、あっちの世界だって見れるし、特殊能力だって発現する。というか、あそこで発現するんだよ。)
仕方ないか。こうなったら、昨日今日会った人よりも、自分を信じよう…って、こいつとも最近会ったばっかじゃね?というか今だ!!
……まあいっか。
(そうか。まあ、お前はもう1人の"僕"だし、お前の方を信じるよ。)
(ああ。だからな。俺の存在をゼピュロスに言わないで欲しいんだ。)
(え?なんで?)
(なんでってお前……まあ、その~、あ!俺の勘だ。信じろ。)
(そんなむやみに信じられはしない…けど……てか、なんで言うのに悩んでた!?……うーん、まあいいよ。その方向性で行くよ。)
(お前のその納得の仕方には不満だが、まあいい。)
というやり取りをしていた。
どうやら、彼いわく、ゼピュロスは何やら危ない存在らしい。僕は、それを加味して行動することにしよう。
その途中、枝について聞いてみた。
(なぁ、なんでこの枝こんなに硬いんだ?)
(あ、あぁそれか。この世界には魔素が充満している。それは、物質に影響を及ぼすんだ。この枝の場合は、魔素によって硬化しているんだよ。)
(へぇ。)
なんとまあゲーム仕様なのでしょうか。
……そんなことはどうでもいっか。枝は硬い。それだけで十分なのだ。
…………
そんなのでいいわけがない。
「あれ?枝で突いてもどうにもダメージが入らなかったみたいだったから、手に風の層を作って、それで殴った。まあ、要は魔法で殴ってたんだな。」
ユウキはこの部分に関しては本当のことを話した。なんてったって、ここは普通に話していいことだし、隠してもバレることだし、そもそもゼピュロスは隠すことに違和感を覚えるだろうから。
「!?なるほど!それは素晴らしい。私は、ユウキ様はデッドウルフに倒されると思って、回復魔法の準備をしていたのですが、無駄足だったようですね。」
おっと、ゼピュロスさんは僕のために回復魔法の発動の準備をしていてくれたようだ。
……ってまて。それって僕が倒される前提じゃねぇか!
まあ、そんなことはいいや。
「さて、デッドウルフ討伐も完了したことですし、今日はこの辺で城に帰りましょうか。」
「ああ。もう疲れた。帰ったらすぐ寝る。」
「おほほ。体力はまだまだのようですな。これは鍛え甲斐がありそうです。」
僕は、ゼピュロスが不敵な笑みを浮かべたが、それは見なかったことにした。
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