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第196話 バッドエンドはすぐ傍に
しおりを挟む双子ちゃんに拘束されてから始まった美奈子さんによる拷問という名の取り調べは、鞭でピシピシされたりするようなものと違ってエッチなご褒美を貰える楽しいやつでした。
だけど何度も繰り返される質問に答えたものの、得られるご褒美タイムは愛棒を満足させるに至らなかったのです。
でもそんなボクにチャンスが巡って来た。アリスさんの好きなところを言うだけのボーナス問題ですよ。見事に正解したボクは、時間無制限のスペシャルタイムが獲得出来たのです。
そしてピュッピュと無責任中出しをしたら、美奈子さんじゃなくてアリスさんが居たのでした。なんでー!?
「ど、どどど、どうしてここにアリスさんが!?」
「ユウコちゃん、周りを良く見た方が良いですわよ?」
そう言ったアリスさんはボクの上から降りて行きました。ボクとアリスさんのダンジョンを繋ぐ透明な愛の糸がツツーと橋を架けたのが神秘的ですが、ボクの視界には違うものが映っていたのです。
「うふふふ、ユウタ君ったら可愛い猫ちゃんだったわね~。後で猫耳と尻尾を付けてあげるわね~」
「な、夏子さん……!?」
夏子さんが猫耳カチューシャと猫尻尾を手に持ってニコニコしています。あの猫尻尾の根元にはプラグが装着されているのです。あの尻尾は危険なアイテムな気がします!!
「ユウタさんが痛めつけられて泣いているんじゃないかと心配したのですが、随分と楽しそうでしたね」
「ひ、ひぃ!? 桜さんまで……」
腕を組んでジト目攻撃をしてくる桜さんが可愛いです。でも手にはビデオカメラがあるんですけど、もしかして撮影していましたか?
「うふふ、ユウコちゃんに孕めって言われてしまいましたわ。子宮が精液でタプタプになっちゃいましたの」
「え、えへへ。大好きニャーン!!」
ウットリとお腹に手を当てて喜んでいるアリスさんが居ます。
このお部屋には最初、ボクと双子ちゃん、そして美奈子さんしか居なかったはずだ。いつの間に3人も増えていたのだろうか? 目隠しされたのは3人が来ている事を悟られないためだったのか……。くっ、もしかしてボクはハメられていたのか!?
賢者タイムに突入したボクは、今までの拷問という名の質問を思い出してみた。ヤバイ、ご褒美欲しさに色々な事を暴露してしまった気がします……。
そんな混乱するボクに美奈子さんが教えてくれました。
「ユウタ様の危機意識がダメダメだと相談されましたので軍隊式の取り調べを行させて頂きました。では別室にて反省会を行いたいと思います」
「…………反省会、です」
「…………猫ちゃん反省、です」
「くっ、分かりました。じゃあこの拘束外してください」
手足を固定する拘束具を双子ちゃんが外してくれました。でもおかしいですね、夏子さんが嬉しそうに笑いながら近づいて来ました。手には首輪と猫耳カチューシャ、そして猫尻尾を持っているのです。
もしかして、アレですか?
「や、止めて下さい夏子さんっ、それはダメなやつですっ!」
「大丈夫よユウタ君、きっと似合うわよ~。うふふ、猫ちゃんって一度飼ってみたかったのよね~」
「…………猫ちゃん暴れちゃダメ、です」
「…………四つん這い、です」
「椿さんも桔梗さんも酷いですっ、きゃー!」
せっかく拘束が解かれたと思ったのに四つん這いにされてしまいました。双子ちゃんは見かけに寄らず力が強かったのです。そして嫌がるボクの首に赤い首輪を装備させられ、猫耳カチューシャまで付けられてしまいました。
そしてお尻にも……。
「ああ゛っ、お、お尻がぁ」
「うふふ、可愛い猫ちゃんの完成ね。あっちのお部屋までお散歩しましょうか」
「あ、あのあの、猫はお散歩しないと思いますー!」
「あらあら、最近の猫ちゃんはお外にだってお散歩に行くのよ~。もしかしてお外が良いのかしら?」
「にゃ、ニャーン! ユウニャンはお家が好きニャーン!!」
桜さんの向けるカメラに向かって堂々と宣言しました。もうボクはプライドを捨て、可愛い猫になったのだった……。
◇
猫ちゃんグッズを完全装備したボクは、四足歩行で尻尾を振りながら完璧な猫ちゃんを演じているのでした。夏子さんにリードを引いて貰いながら歩いたのはちょっと興奮しましたね。もしかしてボクは新しい性癖に目覚めたのだろうか!? リビングまでの短い道のりでしたが楽しかったです。
リビングに到着したところでボクの首輪からリードが外されました。そして女性陣がソファーに座っている中でボクだけがフカフカの絨毯の上で香箱座りをするのでした。この香箱座りは中々良いかもしれませんね。前を向くと自然と女性達のスカートの中が見えるのでした。
「…………猫ちゃんがパンツ覗いてます」
「…………恥ずかしいから見ちゃダメ、です」
「そ、そんな事してないニャーン!」
何故バレた!? 双子ちゃんの純白のパンツが目に飛び込んで来たら見ない方が失礼だよね……。
「ではユウタ様の取り調べの結果をメモしてあります。奥様方、どうぞ」
ボクがキョロキョロとパンツウォッチングを楽しんでいる間に美奈子さんがメモ用紙をみんなに渡しています。くっ、ボクは一体どんなことをゲロってしまったのだろうか……。
「あらあら、いっぱい喋っちゃったのね~。そう言えば私が持ってるエッチな本の内容まで喋ってたわね。赤ちゃんの教育に悪いから封印してたのに、お腹の子に変な性癖が付いたらどうするのかしら?」
「だ、大丈夫ですよー! じゃなかった、大丈夫ニャン! 赤ちゃんはまだ本とか理解出来ないニャン!!」
「うふふ、そうね~。でも子供の教育はしっかりとやりますから、猫ちゃんもあんまり変な事しちゃダメですからね?」
「わ、分かりましたニャン!!」
ふぅ、どうやら夏子さんの英才教育という名の子育ては既に始まっていたようですね。あんなに好きだったおねショタの本を封印ですか……、本気ですね!
「…………猫ちゃん装備の裸の男の方がヤバい、です!」
「…………教育に悪影響、です!」
「ユウタ君なら大丈夫よ~。あ、お腹の子が動いたような気がするわ~。きっと喜んでいるのよ」
双子ちゃんの鋭いツッコミにも負けない夏子さんは逞しいですね。でも夏子さん、まだお腹の子は動く程大きくないと思いますよ?
夏子さんが嬉しそうにお腹を摩っているのを見ていたところ、桜さんから声を掛けられました。
「ユウタさん、私が胸の大きさを気にしている事を言うなんて酷過ぎます」
「えっ、あ、その……ごめんなさい。美奈子さんの脅されて仕方が無かったんです! 許してニャーン!!」
ボクは急いで桜さんの足元まで走りました。猫ちゃん走法も慣れて来ましたね。そして桜さんの柔らかい太股に頭を突っ込んでクンカクンカしちゃいます。
なんだかんだで桜さんも嬉しいのか頭をナデナデしてくれます。猫も良いかも♪
「嘘ですね。ご褒美欲しさに暴露していました。まあ私も妊娠しておっぱい大きくなりますから良いですけどね。それよりユウタさん、コーラのレシピまで喋っていましたよ?」
「マジニャン!?」
ボクの命の次の次くらいに大事なユウタ・コーラのレシピですよ。ボクはいつの間にそんな大事な情報を喋ったのだろうか……。思わず太腿から顔を上げてしまいました。
腑に落ちないボクの顔を見た美奈子さんが答えを教えてくれました。
「最初に水分補給で飲んだジュースです。アレにはユウタ様がリラックスする成分がたっぷりと含まれている特性ジュース、気持ち良くお喋り出来ましたね?」
「…………猫ちゃんが美味しそうにチューチューしてました」
「…………バナナオレ味、です」
「くっ、あの美味しいジュースが罠だったなんて……」
おかしいと思ったのです。水分補給と言いながらドロドロのバナナジュースですよ。確かに美味しかったですけど、まさか自白剤のようなものが入っていたなんて……。シャコガイよりも硬い口と言われたボクが簡単に情報をお漏らしするなんておかしいと思ったのです。
暴露してしまった過去の自分を責めていたところ、アリスさんから声が掛かった。アリスさんの事も何か暴露しちゃったのだろうか?
「でもユウコちゃんったら酷いですわ。私の好きなところで最初に言ったのがおっぱいでしたもの」
「ち、違うんですアリスさーん! ゴロニャーン!!」
ボクは桜さんの元から急いで移動してアリスさんに飛びつきました。大きなお胸に顔を埋めてクンカクンカタイムに突入です。ふぅ、やっぱりアリスさんのおっぱいは最高ですよ。あの時、咄嗟に出た言葉も嘘じゃ無かったのです。
「あんっ、そんな事したって誤魔化されませんわよ! やんっ、揉んじゃダメですわ~」
「ゴロニャーン! アリスさんのおっぱい大好きニャーン!! 好き好きニャーン」
「…………エロ猫、です」
「…………どさくさに紛れてモミモミしてる、です」
双子ちゃんが何やらゴニョゴニョ言ってますが聞かなかった事にしましょう。今はアリスさんのご機嫌を損ねる訳にはいかないのです。
子猫が母猫のおっぱいをモミモミするようにアリスさんのおっぱいをモミモミしていたところ、桜さんの寂しそうな声が聞こえて来ました。
「やっぱりユウタさんはアリスさんみたいな大きなおっぱいが好きなんですね……」
その言葉を聞いた瞬間、シュババッとアリスさんの元から離れて桜さんの胸に飛び込んだ。
「そんな事ないニャン! 桜さんのおっぱいは形が良くて張りがあって気持ち良いおっぱいニャン。チュッチュしたいニャーン!!」
「あらあら、良いわね~」
ボクは必死にオス猫を演じて媚びを売るのでした……。
魅惑の猫ちゃんコスチュームが功を奏したのか、お嫁さん達はご機嫌になりました。ホストクラブユウタで鍛えた女性を喜ばせるテクニックが役立ちましたね。
お酒も追加されて和やかな雰囲気の中、今回の発起人である美奈子さんから有難いお言葉を頂きました。
「今回の件で良くご理解して頂けたと思いますが、ユウタ様は本当に警戒心を身に付けて下さい。今日の取り調べは単なるお遊びです。もし本当に捕まってしまったらこんなものじゃ済みませんからね? ユウタ様が止めてって言っても鞭で叩かれたり平気でやってきますよ」
「こ、怖いニャーン!」
やっぱり今日のはお遊びだったのか。そうだよね、単に気持ち良いだけだったもんね……。
美奈子さんの言葉を聞いた女性陣が神妙な顔で頷いています。やっぱり美奈子さんの言ったように拉致とかされる事件があるのだろう。ガクガクブルブル。
「ユウタ様の護衛には必ず椿と桔梗を同行させます。ユウタ様に何かあればここに居る女性達だけでなく恵美様、美羽お嬢様や雪乃様、琴音様も悲しむことを忘れないようにお願いします。もちろん私だってユウタ様に何かあったら悲しいです」
「…………私も悲しい、です!」
「…………ズッ友、です!」
「美奈子さん、椿さん、桔梗さん……」
そうか、ボクはもう自分一人の体じゃないって事か。これから女性だらけの社会に出てお仕事をするのだ。ボクの中にある常識を捨てて気を引き締めて行動しないとダメですね。
「ユウコちゃんは一人で大丈夫って言ってたけど、次のサンガリー社との打ち合わせ、やっぱり私も一緒に行きますわ。だって私、社長ですもの」
「はい、ボクはちょっと自信過剰になっていました。今日の事も含めて、どれだけ皆さんに支えられて生きてきたか分かったような気がします。こんなボクですが、これからも宜しくお願いします! ニャン!」
ボクの言葉を聞いてみんなが笑顔で頷いていた。最後のニャンが良かったのかもしれませんね!
「警戒心か……」
みんが笑い合う中、ふとそんな言葉が口から零れた。
思い起こせばこの世界に迷い込んでからというもの、全てがトントン拍子に事が進んだ。全く自分が知らない場所に迷い込み、衣食住が保証される安全な場所で幸せに暮らしているのだ。もしかしたらボクは物語の主人公になったつもりでいたのかもしれない。
でも美奈子さんの言うように、危険は身近に潜んでいたのかもしれない。
迷い込んで直ぐに出会ったあの女性に着いて行ったらどうなっていただろうか? レイプ魔のスミレさんがもっとヤバい人だったら?
もしかしたらボクの行動次第では、バッドエンドはすぐ傍にあったのかもしれない……。
「ユウタ様に忠告しておく事があったのを忘れていました」
美奈子さんがボクの目を鋭く見つめて来ました。その真剣な表情を見たボクは、シャキーンと背筋を伸ばして正座をしたのでした。猫ちゃんなのに正座ですよ。あれ、お尻に違和感がありますよ?
でもそんな事よりも重大な事が美奈子さんの口から飛び出て来たのです。
「ユウタ様の周辺人物を洗ったところ、『百合と豚骨』の女性店主は某国の諜報員という事が判明しました。今のところ平穏なので大丈夫だとは思いますが、絶対に一人で近づかないようにご注意下さい」
「えっ……本当に?」
「…………ブラックリスト入りしてます、です」
「…………危険人物、です」
もしかして店長の優果さんですか? あのチャイナドレスが似合う三つ編みの素敵な女性です。ボクとチューしたこともある女性ですよ。あの人が諜報員ですか!?
次に来たらもっと凄い事をしてあげる、そう言っていました。もし誘拐とかだったら確かに凄い事ですね。どうやらボクはいつの間にかバッドエンドを回避していたようです。
「え、えっと、今後はもっと危機感を持つようにしますニャン!」
これからユウタとして仕事がいっぱいするのです。今まで以上に気を引き締めて行く必要がありそうです……。
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