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攻略対象者と

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学園の朝はとても賑やかだ。

「おっはよ~! 元気か~?」

クララは目隠しをされた。

目隠しをしてくるのはこの人物に決まっている。


攻略対象者の一人、フリードリヒ・フランクリン。

燃えるような赤い髪を逆立て、ルビーの瞳に長身、小顔の男性。

「おはよう、フリードリヒ」

そう言うと、フリードリヒは目を覆っていた手を振り解いた。


「あははは。弄りようがあるんだよなー、クララは」

クララはクラスの嫌われ者でも、彼だけは違う。

まともに挨拶をしてくれる人の一人だ。


「んで。昨日の宿題やった?」

「勿論よ」

「わりぃ、俺、宿題忘れちゃたんだ。写させてもらえるかな?」

フリードリヒは頭を掻きながらそう言った。


気さくな感じのフリードリヒ。

宿題を忘れてくるのはもはや定番。

決まってクララのところに来るのだ。


クララはフリードリヒにノートを渡した。

「ありがとねん」

そう言ってフリードリヒは自分の席に着き、早速丸写しをし始めた。



そこに、深緑色の顔をした中肉中背の精悍な顔立ちをした男性が来た。

クラスメイトのマーク・パレスだ。

マークもまた攻略対象者の一人。 

筆頭公爵家の令息で運動神経が良い。


「おはよう」

返事がない。

「おはよう、マーク」


やはり、返事がない。


(そうよね。私は嫌われ者の悪役令嬢だからね)

クララは溜め息をついた。

(仕方無いわ。挨拶は諦めましょう)


マークはそのまま自分の席に着いた。


マークから目を離すと、黒髪の短髪、黒い瞳に雫のような鼻、下唇が異様に厚い男性が現れた。


スティーヴン・ウィリスだ。

彼もまた攻略対象者の一人。

王弟の長男。

医者を目指していて、頭脳明晰だ。


「スティーヴン、おはよう」

元気よく声をかけた。


やはり、返事がない。

(またも無視か……)


クララは悲しくなってしまった。

(これが悪役令嬢の宿命というやつよね……)


気を取り直し、クラスメイトへの挨拶はやめなかった。


黄金のサラサラな髪を後ろで束ね、スカイブルーの瞳に透き通るような白い肌。

まるで、どこかの国の王子様のような風貌をしている。

しかし、彼は平民なのだ。


名前はトール。

「おはよう、トール」

「おはようございます、クララ」

流石は平民。

妙なプライド意識を持っていないから、悪役令嬢とてきちんと返事を返してくれる。


トールは席に着き、読書を始めた。


「やあ、すまない。恩に着るよ」

フリードリヒがノートを返しに来た。


「も~。これからはちゃんと宿題やってよね」

「ごめん、ごめん」

フリードリヒは手を合わせ、頭をペコペコさせてきた。

しかし、これがフリードリヒなのだ。

何度も同じ事を繰り返す。


クララは諦めの気持ちと呆れの気持ちが同居していた。
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