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マリーとお出かけ

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クララはマリーとお出かけをする事になっていた。

街中まで繰り出すのだ。

ハッサンからもらった婚約指輪を処分するために。



二人は馬車に乗っている。

「もう、こんなのいらないわ」

クララは婚約指輪の入った箱をマリーに見せた。

「そうね。そんなの売っちゃえ、売っちゃえ!!」


マリーは悪役令嬢の友達ということで、巻き添えを食らっている。

やはり、クララ同様、クラスの男子から無視をされている。

しかし、マリーは婚約者がいる。

それは、ロシニア侯爵家令息のデビッドだった。

マリーもまた生まれながらにして婚約者がいたのだ。

しかし、マリーは婚約者と仲良し。

とはいえ、『今宵は誰と睦まじく』にはマリーもそうだが、マリーの婚約者の事は出てこない。

いや、マリーは名前こそは出てくるが、顔は出てこない。


そこで、クララはハッと思った。

もしかして、原作と異なることが何かこの世界で起こるかも?

しかし、今はそれは何だかわからない。


「じゃあ、いくぞ!!」

御者が馬車を走らせた。

「「お願いしまーす」」

二人は御者にそう挨拶をした。


春の空はまだまだ日差しは弱く、その上雲がまばらに点在している。

風も少しある。

まだまだ肌寒い。

ようやく雪が融けたという感じだ。


「まだまだ肌寒いわね」

「そうね。わたくしにとっては冬が戻ってきた感じだわ」

本当にそうだ。

春になってこれからだ、という時に婚約破棄。

春は遠く感じた。まだまだ冬という感じがした。


「でもね、クララ」

「なあに?」

「冬は必ず春となるって言葉あるでしょ?」

「ええ。知っているわ」

「クララにとって春は必ずやってくるわ」

冬は必ず春となる。止まない雨はない。明けない夜はない。

よく使われる言葉だ。

そう。そう思えば良い。

冬は必ず春になる。そう。今は春なのだから。


「ありがとう、マリー。きっと春は来るわね」

クララは笑顔になった。


「で、マリーはデビッドとうまくいっているの?」

「うん。お陰様で」

デビッドはマリーの2つ上で学園の先輩になる。


馬車は大きく揺れた。

ガッシャーン。

「なあに?」

「なんだろう?」

二人は顔を見つめ合った。


「何だ?」

御者が外を見たら、そこに大きい石があった。

「石……か。危ないな」

御者は石をどかした。

そして再び馬車を走らせた。


間もなくして、お店が見えてきた。

「ここだな? よし、着いいたぞ!!」

御者は馬車を止めた。

「ありがとう」

そう言ってクララは一人で馬車を降りた。


「へい、らっしゃい」

中から初老の男性が現れた。

「これ、売りたいんですけど」

「あいよ」

男性は指輪を受け取った。

そして、品定めを始めた。

「ごめんな。最近、偽物も出回っているから、時間がかかる」

間もなくして男性は

「よし!」

と言った。

「はい」

「これ、10万パーツで買い取ろう」

「良いのですか?」

「ああ。良い石を使っているな」

クララは10万パーツを受け取った。


「お待たせ!」

クララは馬車に戻った。
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