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アントニオサイド 女王様への挨拶
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この日は晴れていた。
空には無数の星が瞬いている。
まだ夜は明けていない。
二人は晴れの日を狙って行ったのだ。
延期に延期を重ねた。
なごり雪による吹雪が続いたからだ。
早朝。
アントニオとシモーネの二人は馬車に乗っている。
馬車の中は寒い。
女王様の待つ宮殿は遥か南西にある。
早朝に出発しないと、昼までに到着しない。
「では、いきますよ、アントニオ様、シモーネ様」
御者のコーエンが馬車を走らせた。
馬車は南西へと向かう。
外は真っ暗なので、何も見えない。
雪は相変わらず壁を作っている。
まだまだ冬は長そうだ。
「ねえ、アントニオ様」
「なんだい、シモーネ」
「女王陛下からお叱り受けないかしら?」
「そうだな……」
アントニオは腕を組んだ。
確かに、女王様は二人のことを良く思わないだろう。
まず、婚約破棄をしたこと自体、報告していない。
そして、新たにシモーネと婚約したのだから。
いわば、女王様との約束を破ったことになるからだ。
女王様には一人息子、パウロ・エンリケ王子がいる。
パウロ・エンリケは王子と言えども、なぜか婚約者がいない。
気に入った女性と結婚ができる。
アントニオの羨望はいつしか妬み、僻み、嫉みに変わっていた。
しかし、いつしかアントニオは両親の反対を押し切り、シモーネと新たに婚約を結んだ。
パウロ・エンリケの結婚事情はもはやどうでも良くなっていた。
「なあ、シモーネ」
「なんでしょう、アントニオ様」
「あのな……。パウロ・エンリケ王子殿下のことだけどさ」
「パウロ・エンリケ王子殿下がどうされたんです?」
「王子殿下、未だに独身だよな?」
「そうですわね」
「どうやら婚約者がいないみたいなんだよな」
「そうみたいですわね」
「王子殿下は好きな女性と結婚できるんだよな?」
「婚約者がいないということは、必然的にそうなるのかもしれませんね」
女王は王配のオスカル殿下と政略結婚だ。
オスカルは隣国のカリオン王国の第二王子。
女王でさえ政略結婚だというのに、なぜ、パウロ・エンリケは恋愛結婚なのだろうか?
「聞き出してやろう」
「何をです?」
「なぜ、女王陛下は政略結婚なのに、王子殿下は政略結婚ではないのか?」
パウロ・エンリケの婚約者候補になりそうな女性はごまんといる。
隣国の王女や、この国の公爵、侯爵令嬢だ。
それを考えれば、公爵令嬢のシモーネにも宿命の婚約者がいない。
「なあ、シモーネ」
「なんですの? アントニオ様」
「俺を選んでくれてありがとな」
「何を言い出すかと思えば……」
「感謝しているよ」
「なんでまた?」
そうだ。シモーネは筆頭公爵の自分よりも、王室に嫁いだ方が良いに決まっている。
なぜなら、貴族令嬢であれば、王妃という座に憧れを抱くからだ。
「なあ、シモーネ」
「はい?」
「お前、本当は俺よりパウロ・エンリケ王子殿下の方が良かったりしないか?」
「そんなことありませんわ!!」
即答だった。
「お前だって王妃の座に憧れたよな?」
「そんなことありませんわ!!」
(考えてみれば、フィリッパの姉、ベアトリスは哀れだな。なんだって次期マジョ家の当主となるがゆえに、パウロ・エンリケ王子殿下と結婚できないんだからな)
次第に空は明るくなってきた。
眼前には朝焼けが広がる。
「綺麗な朝焼けだな、シモーネ」
「本当ね。自然は私たちを応援してくれているのよ!!」
馬車は王都に入ったようだ。
何度も馬車で王宮に来ていれば、カンでどの辺りを走っているのかわかる。
「王都に入りましたぞ、アントニオ様。あと少しです」
「ありがとう、コーエン。
「あと少しね」
「ねえ、アントニオ様」
「どうしたんだい? シモーネ」
「もうすぐ冬が終わってしまうのね。なんだか寂しいわ」
シモーネは夏生まれの冬好きで、寒さに強い。
今日も薄い服装をしている。
王宮が見えてきた。
「あともうちょいですぞ!!」
と、コーエン。
馬車はついに王宮に入った。
「到着しましたぞ、お二人共」
「ありがとうございますわ、コーエン」
「コーエン、ありがとうな」
アントニオは馬車を降りた。
続いて、シモーネも馬車を降りた。
城内に案内役の騎士がいた。
まだ、あどけなさの残る、少年兵だ。
「話は聞いています。どうぞ」
二人は王宮の中に入った。
中は広い。
左右に階段がある。
「謁見の間にお入り下さい」
二人は謁見の間に入った。
腰まである長い金髪にスカイブルーの瞳、筋の通った高い鼻。
頭には王冠。首には眩いばかりに光る緑色の宝石が嵌め込まれたネックレス。
ドレスには無数の宝石が散りばめられている。
この女性こそがこの国の女王、アウローラ女王だ。
謁見の間に入ったその刹那、アウローラの顔が曇った。
この状況を察しているようだ。
「じょ……女王陛下!! まず、謝らなければならないことがあります」
「なんですの? アントニオ」
「じ……実は……」
アウローラの前ではなぜか吃ってしまう。
「わ、私はマジョ侯爵令嬢、フィリッパと婚約破棄しました」
「なぜですの?」
「じ、実は……」
(冷静、冷静)
「じ、実はシモーネと新たに婚約を結びました」
「そうですか。では、フィリッパはどうされるのです?」
「彼女は今、自由の身です」
アウローラが冷たい視線を投げかけている。
それもそのはずだ。
フィリッパには一方的に婚約破棄を告げたのだから。
「で、オゴール公爵はなんて仰ったのです?」
「父上も母上もこの結婚には反対しております」
「それもそうね」
アウローラは立ち上がった。
「わたくしはこの結婚に異議申し立て致しますわ」
「女王様。でも、待って下さいよ」
「何か言いたいことがありそうね。良かろう。聞いて差し上げますわ」
「パウロ・エンリケ王子殿下にはなぜ婚約者がいないのですか? 要するに、自由恋愛、結婚ってことですよね」
「そうね。そうなるわね」
「ズルいですよ!」
「なぜです?」
「俺……ああ、いや、私は政略結婚で、王子殿下は自由恋愛」
「パウロ・エンリケは我儘で……自由にさせてくれなければ王籍離脱をする、と言い張るものですから」
「じゃあ、俺……いや、私も自由で良いじゃないですか」
「でも、決まりは決まりですわ。家同士のつながりをあなたは断ったのですよ」
アントニオは右手に拳を握りしめていた。
「もういいです。女王様、あとは精霊たちのジャッジに任せますから」
そう言ってアントニオとシモーネは謁見の間を出た。
結婚できるか、できないかの権限はアウローラにはない。
精霊のジャッジに任せることにした。
空には無数の星が瞬いている。
まだ夜は明けていない。
二人は晴れの日を狙って行ったのだ。
延期に延期を重ねた。
なごり雪による吹雪が続いたからだ。
早朝。
アントニオとシモーネの二人は馬車に乗っている。
馬車の中は寒い。
女王様の待つ宮殿は遥か南西にある。
早朝に出発しないと、昼までに到着しない。
「では、いきますよ、アントニオ様、シモーネ様」
御者のコーエンが馬車を走らせた。
馬車は南西へと向かう。
外は真っ暗なので、何も見えない。
雪は相変わらず壁を作っている。
まだまだ冬は長そうだ。
「ねえ、アントニオ様」
「なんだい、シモーネ」
「女王陛下からお叱り受けないかしら?」
「そうだな……」
アントニオは腕を組んだ。
確かに、女王様は二人のことを良く思わないだろう。
まず、婚約破棄をしたこと自体、報告していない。
そして、新たにシモーネと婚約したのだから。
いわば、女王様との約束を破ったことになるからだ。
女王様には一人息子、パウロ・エンリケ王子がいる。
パウロ・エンリケは王子と言えども、なぜか婚約者がいない。
気に入った女性と結婚ができる。
アントニオの羨望はいつしか妬み、僻み、嫉みに変わっていた。
しかし、いつしかアントニオは両親の反対を押し切り、シモーネと新たに婚約を結んだ。
パウロ・エンリケの結婚事情はもはやどうでも良くなっていた。
「なあ、シモーネ」
「なんでしょう、アントニオ様」
「あのな……。パウロ・エンリケ王子殿下のことだけどさ」
「パウロ・エンリケ王子殿下がどうされたんです?」
「王子殿下、未だに独身だよな?」
「そうですわね」
「どうやら婚約者がいないみたいなんだよな」
「そうみたいですわね」
「王子殿下は好きな女性と結婚できるんだよな?」
「婚約者がいないということは、必然的にそうなるのかもしれませんね」
女王は王配のオスカル殿下と政略結婚だ。
オスカルは隣国のカリオン王国の第二王子。
女王でさえ政略結婚だというのに、なぜ、パウロ・エンリケは恋愛結婚なのだろうか?
「聞き出してやろう」
「何をです?」
「なぜ、女王陛下は政略結婚なのに、王子殿下は政略結婚ではないのか?」
パウロ・エンリケの婚約者候補になりそうな女性はごまんといる。
隣国の王女や、この国の公爵、侯爵令嬢だ。
それを考えれば、公爵令嬢のシモーネにも宿命の婚約者がいない。
「なあ、シモーネ」
「なんですの? アントニオ様」
「俺を選んでくれてありがとな」
「何を言い出すかと思えば……」
「感謝しているよ」
「なんでまた?」
そうだ。シモーネは筆頭公爵の自分よりも、王室に嫁いだ方が良いに決まっている。
なぜなら、貴族令嬢であれば、王妃という座に憧れを抱くからだ。
「なあ、シモーネ」
「はい?」
「お前、本当は俺よりパウロ・エンリケ王子殿下の方が良かったりしないか?」
「そんなことありませんわ!!」
即答だった。
「お前だって王妃の座に憧れたよな?」
「そんなことありませんわ!!」
(考えてみれば、フィリッパの姉、ベアトリスは哀れだな。なんだって次期マジョ家の当主となるがゆえに、パウロ・エンリケ王子殿下と結婚できないんだからな)
次第に空は明るくなってきた。
眼前には朝焼けが広がる。
「綺麗な朝焼けだな、シモーネ」
「本当ね。自然は私たちを応援してくれているのよ!!」
馬車は王都に入ったようだ。
何度も馬車で王宮に来ていれば、カンでどの辺りを走っているのかわかる。
「王都に入りましたぞ、アントニオ様。あと少しです」
「ありがとう、コーエン。
「あと少しね」
「ねえ、アントニオ様」
「どうしたんだい? シモーネ」
「もうすぐ冬が終わってしまうのね。なんだか寂しいわ」
シモーネは夏生まれの冬好きで、寒さに強い。
今日も薄い服装をしている。
王宮が見えてきた。
「あともうちょいですぞ!!」
と、コーエン。
馬車はついに王宮に入った。
「到着しましたぞ、お二人共」
「ありがとうございますわ、コーエン」
「コーエン、ありがとうな」
アントニオは馬車を降りた。
続いて、シモーネも馬車を降りた。
城内に案内役の騎士がいた。
まだ、あどけなさの残る、少年兵だ。
「話は聞いています。どうぞ」
二人は王宮の中に入った。
中は広い。
左右に階段がある。
「謁見の間にお入り下さい」
二人は謁見の間に入った。
腰まである長い金髪にスカイブルーの瞳、筋の通った高い鼻。
頭には王冠。首には眩いばかりに光る緑色の宝石が嵌め込まれたネックレス。
ドレスには無数の宝石が散りばめられている。
この女性こそがこの国の女王、アウローラ女王だ。
謁見の間に入ったその刹那、アウローラの顔が曇った。
この状況を察しているようだ。
「じょ……女王陛下!! まず、謝らなければならないことがあります」
「なんですの? アントニオ」
「じ……実は……」
アウローラの前ではなぜか吃ってしまう。
「わ、私はマジョ侯爵令嬢、フィリッパと婚約破棄しました」
「なぜですの?」
「じ、実は……」
(冷静、冷静)
「じ、実はシモーネと新たに婚約を結びました」
「そうですか。では、フィリッパはどうされるのです?」
「彼女は今、自由の身です」
アウローラが冷たい視線を投げかけている。
それもそのはずだ。
フィリッパには一方的に婚約破棄を告げたのだから。
「で、オゴール公爵はなんて仰ったのです?」
「父上も母上もこの結婚には反対しております」
「それもそうね」
アウローラは立ち上がった。
「わたくしはこの結婚に異議申し立て致しますわ」
「女王様。でも、待って下さいよ」
「何か言いたいことがありそうね。良かろう。聞いて差し上げますわ」
「パウロ・エンリケ王子殿下にはなぜ婚約者がいないのですか? 要するに、自由恋愛、結婚ってことですよね」
「そうね。そうなるわね」
「ズルいですよ!」
「なぜです?」
「俺……ああ、いや、私は政略結婚で、王子殿下は自由恋愛」
「パウロ・エンリケは我儘で……自由にさせてくれなければ王籍離脱をする、と言い張るものですから」
「じゃあ、俺……いや、私も自由で良いじゃないですか」
「でも、決まりは決まりですわ。家同士のつながりをあなたは断ったのですよ」
アントニオは右手に拳を握りしめていた。
「もういいです。女王様、あとは精霊たちのジャッジに任せますから」
そう言ってアントニオとシモーネは謁見の間を出た。
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