婚約破棄したら悪役令嬢の妹に転生していたことを知る。ヒロインに婚約者を差し上げたら、この国の第一王子から求愛されました。

hikari

文字の大きさ
10 / 14

アントニオ目線 精霊の森へ

しおりを挟む
やはり、延期に延期を重ね、精霊の森へと向かう日が決まった。

精霊の森へ行き、精霊たちに挨拶に行くのだ。

アントニオの両親は結婚に反対。

アウローラも結婚を認めてくれなかった。

しかし、シモーネの両親は結婚を認めてくれた。

それが何よりもの救いだった。

そうだ。ジャッジするのは精霊たちだ。

精霊たちが賛成すると、虹が立ち、反対すると雨が降ると言われている。


精霊の森へ行くために、馬車を走らせた。

「コーエン。今日も頼む!!」

「はい、アントニオ様」

と、コーエン。

「よろしくお願いしますわ!!」

と、シモーネ。


「きっと精霊たちは俺たちの結婚に賛成してくれるさ!!」

「そうですわね」

意気揚々とした気持ちで儀式に臨む。


精霊の森はここから遥か東にある。

また、出発は日の入り前。

空には星が見えない。

恐らく、曇天。

天気予報だと、午後から晴れるような事を言っていた。


外は相変わらず雪景色。

そして、雪の壁。

寒い……。

でも、アントニオにとっては寒さは暑さより耐えられる。

吐息は相変わらず白く濁る。


シモーネは白いミンクのコートに白い毛皮のマフラーをしている。

それでいながらも、下にはタイツも何も穿かず、生足だ。

「寒くないか?」

「寒くないわ」

「どこかの誰かさんとは大違いだな」

二人は笑った。

どこかの誰かさんとは勿論、フィリッパ・マジョだ。


フィリッパは何かと寒がった。

冬になると、ファッションを度外視にした服装をする。

何枚も服を羽織り、マフラーをする。

そして、イアーマフラーまでするのだから、耳のおしゃれは必然的に怠ってしまう。

だから、冬場はピアスをしないのだ。


そんな寒がりのフィリッパに合わせていたため、苦手な暑さを我慢していた。

部屋はいつもガンガンに暖房をつけていた。

「暑い」に一言も言わなかった。

フィリッパが「暑い」と言って初めて暖房を弱くするなり、消すなりしていたのだ。

とにかく扱いの難しい女だった。

でも、体感気温が同じくらいなシモーネだから、暑さ、寒さは互いに共有でいた。


「それでは、出発するぞ!!」

コーエンが馬車を走らせた。


街中の道路は雪がきれいに取り除かれている。

しかし、精霊の森へ入れば、雪かきはされていない。

だから、精霊の森の前に来たら、歩かないといけないのだ。

今年の冬は本当に長い。

雪が降ることを除いては、夏だったら冬が良い。


東へ東へ……。

地平線が明るくなってきた。

ようやく、日の入りのようだ。

空には鉛色の空が広がっている。

「どんより、だな。まあ、でも雪や雨ではないから、決行だな」

「そうですわね」

馬車は引き返すことなく、精霊の森へと向かった。


周りには草原が広がっている。

しかし、草原には見えない。

雪で埋もれているからだ。

馬車は轍を走っている。

この轍は行商人たちが利用している。


夜が明けた。

空はどんより曇天。

それでも、雨や雪は降らなそうだ。

そういう予報になっている。


「ねえ、アントニオ様」

「どうしたんだ?」

「精霊たちは私達の結婚には賛成してくれるわよね?」

「勿論だ。結婚に反対しているのは女王陛下と俺の両親だけだ! 安心しろ。味方はいる。四面楚歌なんかになってはいない」

「本当ですこと?」

「ああ、俺を信じろ!! だって……精霊への誓いはこれが初めてなんだからな」


ガタリ!!

「おおおおおおおおおお」

突如、馬車が止まった。

「何があったんだ?」

「馬が倒れたんだ!」

「何!?」

馬が倒れた。

何があったのだろう?


アントニオは馬車から降りた。

馬が寝転がっている。

「どうしたんだ?」

「馬が調子悪いのかもなぁ」

「かと言って今日は中止するわけにはいかない……」

コーエンは馬を撫でた。

「バニー。今日はな、アントニオ様の大事な儀式がある日なんだ。だから、頼む!!」

馬の名前はバニーという。

アントニオがつけた名前だ。

コーエンがそう言うと、馬は立ち上がった。

「よし!! 行きますぞ!!」

「はい!」

そう言ってアントニオは馬車に乗り込んだ。

「では、改めて出発! 進行!!」

馬車は出発した。

しかし、何だか嫌な予感がした。


しばらく行くと、ついに精霊の森が見えて来た。

精霊の森には神父が待っている。

精霊たちのジャッジを聞くのは神父になる。


馬は森に到着した。

「お疲れ様でした、アントニオ様。到着しました。では、気をつけて」

「ありがとう!」

「ありがとうございますわ!!」

アントニオは馬車を降りた。

続いてシモーネも馬車を降りた。

「寒いな」

「そうね」

やはり、日差しが無い分、寒い。


森は鬱蒼と木が生い茂っている。

雪は高く降り積もっている。

アントニオは雪をかき分けながら、進んだ。


精霊の森は森ではあるものの、安全。

森というと、魔物が棲んでいるものだが、精霊の森は精霊たちによって結界が張られ、魔物が入れなくなっているからだ。

「ああっ」

「大丈夫か、シモーネ」

「ええ……」

シモーネが怪我をしていた。

どうやら、転んだようだ。

「足から血が出ているな」

「なんだか嫌な予感がするわ」

「う~ん」


馬が倒れたり、シモーネが転んだり……。

「試練だな!」

「そうかもしれないわね」

シモーネは足を引きずりながら歩いている。


しばらく歩くと、滝が現れた。

そこの前に、老人が立っている。

その老人こそが神父のルドルフだ。


二人はルドルフの元にたどり着いた。

「これは遠いところ、よくきましたね。ルドルフ様、シモーネ様」

「宜しくお願いします、神父様」

「宜しくお願いしますわ!!」

「ああ。じゃあ、精霊たちに誓いの言葉をたてるんじゃ」


ルドルフは祈りをこめた。

「我こそ、ルドルフ・オゴールはシモーネ・スターマーを心から愛します」

横でシモーネもお祈りをしている。


そこで……。

頭の上では黒い雲が立ち込めた。

そして、雷が鳴り出した。

雹まで降り出す始末。


でも待て!

雷が鳴ったあとに晴れて虹が出ることもあるではないか。

一抹の希望を忘れない。


しかし、一向に天気は回復しない。

嫌な予感は的中した。

「おおおお、これは」

「「まさか」」

「どうやら、精霊たちが怒っているようじゃ」

「何故だ?」

「アントニオ様。シモーネを本気で愛していますか?」

「勿論です」


これは二人の間に障害があっても、シモーネを守れるか試されているのかもしれない。

そう捉えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜

涙乃(るの)
恋愛
これは王命です……抱いてください 「アベル様……これは王命です。触れるのも嫌かもしれませんが、最後の願いなのです……私を、抱いてください」 呪いの力を宿した瞳を持って生まれたサラは、王家管轄の施設で閉じ込められるように暮らしていた。 その瞳を見たものは、命を落とす。サラの乳母も母も、命を落としていた。 希望のもてない人生を送っていたサラに、唯一普通に接してくれる騎士アベル。 アベルに恋したサラは、死ぬ前の最期の願いとして、アベルと一夜を共にしたいと陛下に願いでる。 自分勝手な願いに罪悪感を抱くサラ。 そんなサラのことを複雑な心境で見つめるアベル。 アベルはサラの願いを聞き届けるが、サラには死刑宣告が…… 切ない→ハッピーエンドです ※大人版はムーンライトノベルズ様にも投稿しています 後日談追加しました

婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた

ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。 マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。 義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。 二人の出会いが帝国の運命を変えていく。 ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。 2024/01/19 閑話リカルド少し加筆しました。

【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!

雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。 しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。 婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。 ーーーーーーーーー 2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました! なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい

花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。 ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。 あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…? ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの?? そして婚約破棄はどうなるの??? ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。

役立たずのお飾り令嬢だと婚約破棄されましたが、田舎で幼馴染領主様を支えて幸せに暮らします

水都 ミナト
恋愛
 伯爵令嬢であるクリスティーナは、婚約者であるフィリップに「役立たずなお飾り令嬢」と蔑まれ、婚約破棄されてしまう。  事業が波に乗り調子付いていたフィリップにうんざりしていたクリスティーヌは快く婚約解消を受け入れ、幼い頃に頻繁に遊びに行っていた田舎のリアス領を訪れることにする。  かつては緑溢れ、自然豊かなリアスの地は、土地が乾いてすっかり寂れた様子だった。  そこで再会したのは幼馴染のアルベルト。彼はリアスの領主となり、リアスのために奔走していた。  クリスティーナは、彼の力になるべくリアスの地に残ることにするのだが… ★全7話★ ※なろう様、カクヨム様でも公開中です。

処理中です...