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無関心 アーチュウ視点
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緑のふわふわな髪を束ね右側に垂らしている、長身のブリジット。魔法がてんで駄目のサーラとは大違いだ。
サーラの魔法は方向音痴でとんでも無い場所に向かっていく。まるでウケでも狙っているかのように。
サーラの魔法音痴ぶりはブリジットからもよく聞いている。なぜなら、ブリジットはサーラと同じ王立学園に通っているからだ。
元々はサーラの姉の許嫁だった。王室とギーズ家は昔より親密だった。ギーズ家はアーチュウにとって高祖父にあたる人物の二男が創設した家だ。ゆえに、王室とは縁もゆかりも深い。
だからなのか、ギーズ家の長女クロエと婚約が結ばれていた。
クロエに対してのイメージは良かった。クロエは幼い頃から魔法を使う事ができた。炎魔法が得意だった。幼少期より魔法が使えるのは優秀な証だった。将来は有能な魔法使いになれると期待がかかっていた。
しかし、クロエは9歳の時に流行り病で死去。アーチュウは非常に悲しんだ。そして、ギーズ家の次女であるサーラと婚約する事になったのだ。
魔法が得意だった姉のクロエ。そして、魔法がまるでダメ子のサーラ。似ても似つかなかった。
そして、ある日。王室主催の音楽会が開かれた。見た目が美しい色白のフルート奏者に出会ったのだ。それが今目の前にいるブリジットだ。
ブリジットは魔法が得意との専らの噂でクロエの面影を感じていた。
アーチュウはクロエが好きだった。できるならクロエと結婚したかった。しかし、クロエの死と共に許嫁を勝手に変えられるのだから、たまったものではない。
クロエと姉妹でありながら、全くタイプの異なる二人を比べては勝劣を見ていた。
確かに最初のうちはサーラを愛していた。
サーラは幼い頃だけは顔がクロエになんとなく似ていたからだ。
さらに、化学、物理学が得意という事で惚れたものだ。
しかし、歳を経るにつれ、クロエとはかけ離れた顔つきになっていった。
そして、ブリジットに心が移り始める。
ブリジットのフルートの音色は小鳥が囁くような音色。
美しい……。
魅惑の音色。
ブリジットが奏でれば、どんな曲でも世界に入れる。
さらに、ブリジットの父はエヴルー伯爵家当主でもあり、作曲家でもある。母親も母親でフルート奏者であった。
サーラの父は公爵家当主でもあり、医師でもある。母親は聖女でギーズ公爵の助手でもあった。
しかし、アーチュウにとっては医者の娘より作曲家の娘の方が格上だった。アーチュウは音楽鑑賞が好きだった。
アーチュウはブリジットに既に婚約者がいた事を知っていた。
しかし、ブリジットへの想いはつのるばかり。
そして自らも婚約者がいる身。しかし、アーチュウはいずれサーラとは婚約破棄を言い渡そうと決意していた。
サーラ。あんな女と結婚する気は毛頭も無い。
「ブリジット。きみは魔法もよくできるし、何よりフルートの演奏が上手い。俺の好みの女性だ」
「ありがとうございます、アーチュウ殿下」
「きみは確か婚約者がいたね?」
「いましが、あんなヤツもう飽き飽きです。最近は見るも無惨な豚!」
と言って鼻を上に持ち上げ、ブーブーと言い出した。
「あはは。きみが嫌になるのもわかるな。確かにレニエ家の人間はデブが多い」
レニエ家は肥満体型が多い。それはアーチュウ自身もよくわかっていた。
それに晩餐会があれば、レニエ家令息であり、ブリジットの婚約者でもあるアドンはいつも決まって沢山食べるのだ。
アドンが食べ物に目がない事は王侯貴族の間でも有名だった。
「あんなデブとは婚約破棄致しますわ。私はアーチュウ殿下、あなたしかいません」
そうだよな、とアーチュウは思った。
「ちょっと待って」
ブリジットは下がった眼鏡を持ち上げた。
「どうしたんだ、ブリジット」
「アーチュウ殿下もサーラと婚約していたでは無いですか」
アーチュウがサーラと婚約していた事は王侯貴族なら誰しもが知っている話だった。
「あー。きみと同じさ。あんな魔法音痴、もはや婚約者とは言えない」
「では、アーチュウ殿下もサーラと婚約破棄されるんですね?」
「勿論だ」
即答だった。
「あんな魔法音痴、どう好きになれと?」
「そうですよね。サーラは本当に魔法音痴ですわ」
魔法ができないのは致命的だ。かくいうアーチュウだが、アーチュウ自身も魔法は得意だった。
「魔法ができるこの俺と魔法のできないサーラ。合うわけが無いだろう?」
「では、婚約破棄するまで私は待ちますわ」
「サーラ。俺はサーラと結婚したい」
「でも、国王陛下はサーラとの婚約を破棄する事は知らないんですよね?」
「あー、それなら問題ない。婚約破棄の旨は話しておく。これは強制的に決められた結婚。俺の意志に反している。俺を尊重して欲しい、とね」
「他の王侯貴族への釈明は?」
「それも婚約撤回の事は言うさ。そしてブリジット。きみと婚約する事をね」
クロエが亡くなった事により、許嫁をサーラに変えられた。それはアーチュウの意志に反しているのは事実。
国王である兄は恋愛結婚。しかも、舞踏会で知り合った侯爵令嬢と結婚したのだ。
それに引き換えアーチュウは生まれながらにして婚約者が決められていた。あまりにも理不尽だ。
結婚の相手はアーチュウ自身も選ぶ権利があるのだ。
「俺だって好きな人と結婚したい」
「そうですよね。私もそう思いますわ」
ブリジットはやさしく手を握ってくれた。
サーラの魔法は方向音痴でとんでも無い場所に向かっていく。まるでウケでも狙っているかのように。
サーラの魔法音痴ぶりはブリジットからもよく聞いている。なぜなら、ブリジットはサーラと同じ王立学園に通っているからだ。
元々はサーラの姉の許嫁だった。王室とギーズ家は昔より親密だった。ギーズ家はアーチュウにとって高祖父にあたる人物の二男が創設した家だ。ゆえに、王室とは縁もゆかりも深い。
だからなのか、ギーズ家の長女クロエと婚約が結ばれていた。
クロエに対してのイメージは良かった。クロエは幼い頃から魔法を使う事ができた。炎魔法が得意だった。幼少期より魔法が使えるのは優秀な証だった。将来は有能な魔法使いになれると期待がかかっていた。
しかし、クロエは9歳の時に流行り病で死去。アーチュウは非常に悲しんだ。そして、ギーズ家の次女であるサーラと婚約する事になったのだ。
魔法が得意だった姉のクロエ。そして、魔法がまるでダメ子のサーラ。似ても似つかなかった。
そして、ある日。王室主催の音楽会が開かれた。見た目が美しい色白のフルート奏者に出会ったのだ。それが今目の前にいるブリジットだ。
ブリジットは魔法が得意との専らの噂でクロエの面影を感じていた。
アーチュウはクロエが好きだった。できるならクロエと結婚したかった。しかし、クロエの死と共に許嫁を勝手に変えられるのだから、たまったものではない。
クロエと姉妹でありながら、全くタイプの異なる二人を比べては勝劣を見ていた。
確かに最初のうちはサーラを愛していた。
サーラは幼い頃だけは顔がクロエになんとなく似ていたからだ。
さらに、化学、物理学が得意という事で惚れたものだ。
しかし、歳を経るにつれ、クロエとはかけ離れた顔つきになっていった。
そして、ブリジットに心が移り始める。
ブリジットのフルートの音色は小鳥が囁くような音色。
美しい……。
魅惑の音色。
ブリジットが奏でれば、どんな曲でも世界に入れる。
さらに、ブリジットの父はエヴルー伯爵家当主でもあり、作曲家でもある。母親も母親でフルート奏者であった。
サーラの父は公爵家当主でもあり、医師でもある。母親は聖女でギーズ公爵の助手でもあった。
しかし、アーチュウにとっては医者の娘より作曲家の娘の方が格上だった。アーチュウは音楽鑑賞が好きだった。
アーチュウはブリジットに既に婚約者がいた事を知っていた。
しかし、ブリジットへの想いはつのるばかり。
そして自らも婚約者がいる身。しかし、アーチュウはいずれサーラとは婚約破棄を言い渡そうと決意していた。
サーラ。あんな女と結婚する気は毛頭も無い。
「ブリジット。きみは魔法もよくできるし、何よりフルートの演奏が上手い。俺の好みの女性だ」
「ありがとうございます、アーチュウ殿下」
「きみは確か婚約者がいたね?」
「いましが、あんなヤツもう飽き飽きです。最近は見るも無惨な豚!」
と言って鼻を上に持ち上げ、ブーブーと言い出した。
「あはは。きみが嫌になるのもわかるな。確かにレニエ家の人間はデブが多い」
レニエ家は肥満体型が多い。それはアーチュウ自身もよくわかっていた。
それに晩餐会があれば、レニエ家令息であり、ブリジットの婚約者でもあるアドンはいつも決まって沢山食べるのだ。
アドンが食べ物に目がない事は王侯貴族の間でも有名だった。
「あんなデブとは婚約破棄致しますわ。私はアーチュウ殿下、あなたしかいません」
そうだよな、とアーチュウは思った。
「ちょっと待って」
ブリジットは下がった眼鏡を持ち上げた。
「どうしたんだ、ブリジット」
「アーチュウ殿下もサーラと婚約していたでは無いですか」
アーチュウがサーラと婚約していた事は王侯貴族なら誰しもが知っている話だった。
「あー。きみと同じさ。あんな魔法音痴、もはや婚約者とは言えない」
「では、アーチュウ殿下もサーラと婚約破棄されるんですね?」
「勿論だ」
即答だった。
「あんな魔法音痴、どう好きになれと?」
「そうですよね。サーラは本当に魔法音痴ですわ」
魔法ができないのは致命的だ。かくいうアーチュウだが、アーチュウ自身も魔法は得意だった。
「魔法ができるこの俺と魔法のできないサーラ。合うわけが無いだろう?」
「では、婚約破棄するまで私は待ちますわ」
「サーラ。俺はサーラと結婚したい」
「でも、国王陛下はサーラとの婚約を破棄する事は知らないんですよね?」
「あー、それなら問題ない。婚約破棄の旨は話しておく。これは強制的に決められた結婚。俺の意志に反している。俺を尊重して欲しい、とね」
「他の王侯貴族への釈明は?」
「それも婚約撤回の事は言うさ。そしてブリジット。きみと婚約する事をね」
クロエが亡くなった事により、許嫁をサーラに変えられた。それはアーチュウの意志に反しているのは事実。
国王である兄は恋愛結婚。しかも、舞踏会で知り合った侯爵令嬢と結婚したのだ。
それに引き換えアーチュウは生まれながらにして婚約者が決められていた。あまりにも理不尽だ。
結婚の相手はアーチュウ自身も選ぶ権利があるのだ。
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「そうですよね。私もそう思いますわ」
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