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ストーカーそして破れた恋 ブリジット視点

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誰かにつけられている……。背後に人の気配を感じる。ふと後ろを向いたが誰もいない。しかし、明らかに誰かが背後にいるのがわかる。


私が行く先々にいつもハロックがいた。

学園の園内でハロックにつけられていた。

でも、この気配はハロックなのだろうか?

「ハロック?」

私は声を出してみました。

しかし、誰も何も返事をしない。

ハロックはとうとうリグレ邸までやってきたのだろうか?

足音がした。

ブリジットは背後を振り返る。

すると音はピタっと止まった。


白昼堂々とストーカー。

しかし、リグレ邸は人気の無い場所にある。

「ハロック? ハロックなの?」

しかし、返事が無い。


ブリジットは歩みを進める。

やはり、誰かにつけられている。

被害妄想ではない。


ブリジットは釈然としないまま、リグレ邸へ戻った。


そして、お風呂に入ったその時だった。



ガサッ!!

音が鳴った。

何!?

すると、影が見えた。

痩せた背の低い影。

やはり、ハロックだ。


「ハロック、そこにいるのね?」

すると

「ブリジット。愛している」 

深緑色の短い髪をセンターで分けて、糸のように細い目。顔の中央にある大きな鼻。

まさにハロックだった。

やはりつけられていたのだ。

ブリジットは裸を見られてしまったのだ。


「きゃー!!」

ブリジットは大声をあげて風呂場を出た。

そして、裸のまま逃げ出した。

ハロックは風呂場の壁をよじ登ろうとしている。

ブリジットは一目散に駆け出した。

「ブリジット、どうしたの?」

兄のヴィクトールだった。

「お兄様、助けて下さい。学園の同級生が押しかけてきたんです」

とうとうその場にハロックが現れた。

「何だお前は?」

ハロックがニヤリと笑った。

「妹を付け回すとはどういう事なんだ? 妹には既に婚約者がいるんだぞ」

しかし、ハロックは微動だにしない。

「僕が婚約者にしてやるよ。アドンと婚約する前からブリジットが好きだった。アドンと別れて俺の番が来たと思った。そうしたら、アーチュウ殿下と婚約したらしいじゃないか。こうなったら力付くだ。ブリジットはいただく!」

「何を言っている! アーチュウ殿下から略奪するなど言語道断だ」

ブリジットはひたすらヴィクトールの後ろに隠れている。

「さあ、ブリジット。僕のところに来てくれるね?」

「いや、いやよー」

ブリジットは力の限り叫んだ。

「嫌がっているじゃないか!」

すると、ハロックは電光石火の如くブリジットの身体を抱え込む。

そして、首元にナイフを突きつける。

「ほ~ら、ブリジット。僕から逃れられると思うのかい?」

「やめろ!」

今度はヴィクトールが叫ぶ。

「ハンス、来てくれー!」

ヴィクトールは執事のハンスを大声で呼ぶ。

「ブリジットが、ブリジットが大変な事になっている。ハンス、助けてくれ!」

「何よ。釜を燃やしたくせに。あなたなんか圏外なんだから」

すると、ハロックは再び首元にナイフを突きつけた。

「やめろ!」

「騒ぐな! んでないとブリジットの命は無いぞ!」

ヴィクトールは黙った。

ブリジットはハロックの腕に噛み付いた。

そして、逃げ出す事に成功した。

しかし、すぐにハロックに追いつかれる。

ハロックはナイフを振り回してきた。

そこへ執事のハンスがやってきた。

そして、ハロックからナイフを奪い取り、ねじ伏せた。

流石は護身術をやっていただけある。

初老ではあるものの、武術の面ではハロックに勝っていた。

そして、警護隊が3人やってきた。そして、ハロックを取り囲むようにして、地下牢に連行して行った。

「これで安心ですね、ブリジット様」

「ありがとう。ハンス」

このような場面ではハンスはありがたい存在なのだ。

「ブリジット様。裸のままではありませんか」

ブリジットは自分が裸だという事に気づいた。大きな乳房が丸見えだ。

それも、兄にまで裸を見られてしまった。

「服を着ないと」

ブリジットは部屋まで駆け出した。

やはり、ストーカーの正体はハロックだった。

ハロックは学園内だけの付き纏いかと思いきや、エスカレートして、とうとうリグレ家までやってきたのだ。
















◇◆◇◆










そこにはアーチュウがいた。

やはり、ブリジットにとってはアーチュウといる時が一番落ち着く。

「聞いてください。アーチュウ殿下」

「どうしたんだい?」

優しくなだめるようなアーチュウ。

「私、ストーカーに遭っているんです」

「何だと!?」

アーチュウの目の色が変わった。

ストーカーへの怒りが即、ツボにはまったようだ。

「学園の同級生なんです」

「ブリジット!!」

「何ですか!?」

「お前、まさか浮気していないよな?」

「していませんがどうしてですか?」 

アーチュウが訝しげにこちらを見てきた。

「いや。浮気でもしない限り、ストーカーなんかに狙われるわけがない。何かあったんだろう?」

「一方的よ」

ブリジットは切り返した。

「一方的!? いんや、黒だね」

「だから違うってば!」

誤解されている。

「嘘だ! 一方的なんて言って逃げるんだろ?」

「そのつもりは……」

「問答無用だ!」

アーチュウはブリジットを指差し、激しく怒鳴った。

「違いますよ! 信じて下さい」

「信じられないね。さあ、その婚約指輪を返してもらおうじゃないか」

ブリジットは指輪を強く握りしめた。

この指輪はサーラからアーチュウを奪い取った戦利品。そうそう手放す訳にはいかない。

「婚約破棄だ!」

まさか……まさか……。

「さあ、ブリジット。大人しく婚約破棄を受け入れるんだ」

ブリジットは首を左右に振った。

「アドンと婚約破棄をして俺のところに転がり込んできた。やっぱり浮気する奴は浮気するんだな」

「違いますって!」

「黙れ!」

信じてくれない。

――私は……浮気を疑われ、理不尽にも婚約破棄を言い渡された。

ブリジットは脱力し、床にへたりこんだ。
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